AORNジャーナル2月号(2016)

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*2013年1月号より、AORNジャーナルオリジナル版の様式が変更になり、月1回の更新となります。

手術における患者の予想と患者報告アウトカム:システマティック・レビュー

エビデンス評価スコア IIIB

(Waljee J, McGlinn EP, Sears ED, Chung KC.; Surgery. 2014;155(5):799-808.)

エディターズノート

 研究論文を読み、有効な研究の成果を業務に取り入れることは、科学的根拠に基づく周術期看護を確保する上できわめて重要な点です。AORN研究エビデンス評価ツール「AORN Research Evidence Appraisal Tool」は、周術期看護師が研究を評価するのに有用なツールです。エビデンスのタイプの違いに応じて、次の3つの評価ツールが用意されています。すなわち「研究エビデンス評価ツール:研究」、「研究エビデンス評価ツール:要約」、「非研究エビデンス評価ツール」です。これらの評価ツールは、AORNのガイドラインが準拠するエビデンスを評価するために使用されます。これらの評価ツールは、単一の研究、複数の研究の要約、非研究エビデンスそれぞれのエビデンスのレベルとエビデンスの質を評価するのに使用することができます。本評価ツールのセクションごとに、この研究に対して何故その評価スコアが付されたのか、またそのスコアが周術期看護業務にどのような意味をもつのかを明確に理解できるよう論じています。個々の研究の知見がある特定の状況において価値があり関連性があるかどうか判断する場合には臨床的判断を使用すべきです。この研究の知見を看護業務に取り入れようとする場合には、その原著論文をレビューして個々の看護の状況への適用可能性を判断することが推奨されます。

 入院手術であれ、日帰り手術であれ、外科手術は今も、米国の医療支出において最も大きな割合を占めている。「患者保護並びに医療費負担適正化法」に基づく財源措置によって運営されている患者中心アウトカムに関する研究所は、患者報告アウトカム(patient-reported outcomes:PRO)を医療改革の重要な柱に位置付けている。患者が理解し将来を計画することを可能にする情報と医療を外科患者に提供することは、外科医療の従事者にとって積年の目標である。これらの課題は、少なくとも25年前から研究され、文献で報告されている。しかし、個人的な、定量化できない情報は入手するのが難しく、解釈はいっそう困難を伴うことが考えられる。たとえば、PROは治療の有効性と相関するか? 手術術式の違いによって、予想される患者アウトカムは影響を受けるか? インフォームドコンセントは、術前の理解をどのように反映し、したがってどのように術後の満足に影響を及ぼすか? 術前の情報提供に対する満足と、最終的なアウトカムのどちらが優先されるか? この2つの間に相関関係があり得るか? あるとすれば、それらはどのように相関するか?といった疑問が生じてくる。これまでのところ、これらのテーマについて、実施された無作為化比較試験(RCT)は知られておらず、患者の予想の影響と術後PROを評価した研究はほとんどない。この研究にあたって研究者らは、PROの理解が外科医療の質を向上させるかもしれないと述べている。そうしたことから研究者らは、術前の予想が満たされた患者と、アウトカムが予想と異なっていた患者を比較し、前者の患者においてアウトカムが改善すると仮定した。このシステマティック・レビューは、術後PROに影響を及ぼす可能性がある因子に関する情報を得るために行われた。

エビデンスレベル:要約

 これが複数の研究の要約であることから、この研究の評価には「AORN研究エビデンス評価ツール:要約」を用いた。研究者らは、包括的な検索戦略と厳格な評価を使って、システマティック・レビューを行い、そのレビューの一環として定性的研究を分析し、それらから得られた概念を総合した。彼らは、新しい統計量または効果量を生み出すために、複数の研究から得られた結果を組み合わせて分析することはしなかった。「AORN研究エビデンス評価ツール:要約」を用いてこの研究のエビデンスレベルをIIIと分類したのは、この研究が、複数の定性的研究を対象としているが、RCTは含んでおらず、また、研究者らがレビューした論文のデザインのタイプを明示していなかったからである。さらに、いくつかの論文については、確立された評価ツールが使用されていることを述べているが、研究者らは、それらについてさらに詳しく述べていなかった。

エビデンスの質:要約

 この研究が複数の研究の要約であることから、この研究の評価には「AORN研究エビデンス評価ツール:要約」を用いた。

AORN Research Evidence Appraisal Tool(AORN研究エビデンス評価ツール)

目的/背景

 この研究の目的は、明確に述べられている。すなわち、患者の予想と手術後PROの5項目(すなわち患者満足、生活の質、障害、気分障害、疼痛)との関係を記述した文献をレビューすることである。この問題が今日の外科領域で発生していることであるため、背景情報は幅広く存在していた。研究者らは、このテーマについてはほとんど経験情報が存在しないが、文献には多くの観察報告と症例研究が含まれていると述べている。このシステマティック・レビューによって、患者満足と術前の予想についてこれまで知られていなかったことが明らかになるのではないかとの期待が表明されていた。研究者らは、医療従事者がより高いレベルのケアを患者に提供するのに役立つ情報を見出したいという希望を表明していた。

検索

 このレビューの方法は再現可能である。研究者の2人が、Ovid MEDLINEデータベースのみを使って2012年11月1日以前に発表された英語の論文を検索した。研究者らは、レビューしたすべての論文について、標準化された要約フォームを使用した。ただし、そのフォームがどのようなものであったかについての記述はなかった。考慮された項目は、被験者の人数、外科手技、患者の予想を評価する方法、評価方法、客観的アウトカム及びPROの結果、方法論上の懸念、質の評価であった。検索は、検索語にMeSH用語の「患者」と「予想」、またこれらの用語のすべてのバリエーションを使用して実行された。この研究のレビュー担当者は、サイテーションインデックスの付いた論文、付いていない論文の両方を使用し、それぞれの論文をレビューし、この研究に組み入れる適格を有しているかどうか、そして研究としての質を決定した。一次データが提示されている論文がレビューに組み込まれ、外科的手技に関する患者の予想が評価され、PROが評価され、患者の予想とPROの関係が個別に検証された。英語以外の言語で発表された論文と一次データを含んでいない研究(例えば論説、解説、レビュー論文)は、除外された。

 組み込み因子と除外因子を決定した後、論文は3段階のスクリーニングに付せられた。すなわち、論文の表題のレビュー、要約の確認、本文のスクリーニングである。表題と要約のスクリーニングから組み込み因子を満たすかどうかの判断がつかなかった場合、その論文は組み入れられた。スクリーニング後、論文は、その論文の著者がアウトカムをどのように評価しているかに基づいて2つのサブグループ、すなわち、PROを報告している論文グループと客観的アウトカムを報告している論文グループに分けられた。そしてサブグループごとに、患者の予想とアウトカムの関係が検証された。

エビデンスのレビュー

 最初の文献検索で1,708本の文献が選ばれた。スクリーニング後、60本の文献がレビュー対象に残った。外科専門分野は13分野にわたり、そのうち整形外科の論文が最も多かった(論文数28本)。神経外科の論文が6本、心臓学の論文が5本であった。このシステマティック・レビューで取り上げられた論文が報告している患者数は全部で13,806人に達し、1件の研究の平均患者数は234人であった。24件の研究において、予想の達成がPROの改善と関連していた。

 研究者らは、レビューした論文のデザインのタイプを挙げていないものの、選んだ研究について以下の詳細を報告している。

  • 13件の研究で、疼痛、障害、社会心理的アウトカムを尋ねる一般的な健康状態質問票である「ショートフォーム36(SF-36)」質問票が使用されていた。
  • 2件の研究で、移動の程度、身の回りの管理、日常的活動、痛み、不安/ふさぎ込みの5項目を評価する標準化されたツールであるEQ5D質問票が使用されていた。
  • 腰椎手術を受けた57人の患者を対象としたある研究で、5つ分野の視覚的アナログ尺度に基づく評価から構成されるSEIQoL(Schedule for the Evaluation of Individual Quality of Life:個人の生活の質評価法)が使用されていた。
  • 前立腺切除術を受けた398人の患者を対象にした研究で、生活の質の評価方法として、ノッティンガム健康プロフィール(NHP)が使用されていた。NHPは、就眠困難、活力レベル、感情反応、疼痛、身体動作に関する問題、社会とのかかわりという6つの領域にわたる38項目の質問から構成されている。
  • 肝臓移植手術を受けた患者を対象としたある研究で、身体的因子、心理社会的因子、自立生活に関する136項目からなる「疾患の影響プロフィール」が使用されていた。
  • 2つの研究で、心臓移植と股関節全置換術を受けた患者の生活の質を評価するために独自の調査票が使用されていた。

 エビデンスの強さについて厳格な評価が実施された。選ばれた研究はすべて、米国予防医学専門委員会のコホート研究を評価するための改良版基準群を使って評価された。最初の検索は、2人の研究者によって実施された。少なくとも1人の研究者が、記述された基準に基づいて、選ばれた研究ごとに質を評価し、意見の一致が見られない場合はすべて、研究者間のコンセンサスによって解決された。PROは、患者満足、生活の質、障害、気分障害、疼痛の5つの小グループに分類された。研究は1つずつ分析され、患者の予想とPROの関係と、研究の質が決定された。研究の質のレビュー後、8件の研究の質が「優れている」と評価され、41件の研究の質が「普通」、11件の質が「劣っている」と評価された。

 参考文献は、最新のものではなかった。このシステマティック・レビューは100件の文献を列挙しており、そのうちの22件は15年前から39年前のものであった。これらの論文の多くは、現在使用されていないプロセスと外科的手技を反映しており、そのため、患者満足とPROについての知見は疑わしい。とはいえ、研究者らが調べた範囲では、RCTはなく、新しい定性的研究もほとんどなかったため、このテーマで発見された論文はすべて評価された。得られた文献はこの研究の問いに関連したものであった。

データ収集

 統計分析方法は、記述されていなかったが、個々の研究からデータを検索する方法は記述されていた。すべての候補論文が評価され、予想とPROの関係が決定された。候補論文は、予想の達成(例えば術前の予想と術後のPROの合致)についての記述か予想の経験的評価とPROの経験的評価のいずれか、またはその両方を含んでいなければならなかった。この論文は、何人の研究者がデータの要約を行ったかについて述べていない。しかし、研究者のうち2人が文献検索を行ったこと、この研究の記述に、データの要約について「われわれは」という記載があることから、研究チームの少なくとも2人のメンバーがデータの要約を行ったと想定される。

結果/結論

 選ばれた論文を個々にレビューし分析した結果、研究者らの知見は入り混じったものになった。要約された知見がこの論文の表と図に示されている。個々の結果は次の通りである。

  • 28件(47%)の研究において、肯定的な予想とPROの改善の間に相関がみられた。
  • 9件(15%)の研究において、PROが不良であった。
  • 18件の研究が、予想の達成と患者満足の向上との間に相関関係が見られると報告している。
  • 術前に肯定的な予想を有していた患者は、術前に否定的な予想を抱いていた患者に比べて、訴える疼痛レベルが低く(研究8件)、障害レベルも低かった(研究15件)。
  • 10件の研究(患者数2,624人)が、術前の肯定的な予想とより優れた術後の生活の質の間に相関関係が見られたと報告している。
  • 4件の研究(患者数1,395人)が、患者の術前の予想の達成と、術後の生活の質の向上の間に関連が見られたと報告している。
  • 6件の研究(患者数809人)が、股関節全置換術、膝関節全置換術および前立腺切除を受けた患者において、術前の予想と生活の質の間に相関関係が見られなかったと報告している。

 このリストは、研究者らが得た所見の要約から成っており、これは、文献レビューとしては許容できる。しかし、この論文の評者としては、あまりに多くの知見、方法、分析が入り混じっているため、エビデンスの強さについて語ることは不可能である。

 研究者らは、患者の予想を評価する方法として許容される方法を1つ挙げることはでなきないと結論づけ、患者の予想と手術後のPROの間には一貫性のある相関は見られないと結論づけている。有力な結論は存在せず、検出力と統計分析は議論されていない。研究の対象とした現象の強さを、この論文において比較できる要約統計量として定量化することはできない。研究者らは、統計分析を提示していないため、この論文で述べられていることを定量化することはできない。障害、気分障害、疼痛のサブカテゴリについての知見に考察は加えられているが、この場合もやはり、知見は確定的なものではない。研究者らは、使用されたツールが多岐にわたり、ほとんど一貫性がなく、患者満足とPROの間の相関関係には確定的なエビデンスはないとの知見を示している。

制約/将来研究

 いくつかの制約が指摘されている。1つは、レビューした論文間で研究方法に違いがあったことである。これらの違いが、研究者らによる評価、定量化、一貫性のある知見の報告に影響を及ぼした。もう1つの制約は、研究者らが1つのデータベースしか使用せず、また使用した検索語が限られていたことであった。検索が英語の論文だけに限られていたため、他の言語で発表された論文のなかに重要な知見が存在している可能性がある。もう1つ制約因子となった可能性があるものとして挙げられているのは、大半の論文が観察だけに終始していたことである。

 この研究の研究者らは、予想とそれらがPROに及ぼす影響を評価する研究がさらに実施されるべきであると述べている。そのような研究が行われて初めて、外科医は、PROを手術の質の尺度に統合するために必要な情報を得ることができる。

評価結果

 「AORN研究エビデンス評価ツール:要約」を用いて、この研究は、エビデンスの質をIII Bとした。

  • この研究のエビデンスレベルのスコアはIIIとした。これは、このレビューに含めた研究がいずれも非実験的研究であったからである。
  • この研究のエビエンスの質のスコアはBとした。これは、評価項目の大半がBコラムに該当し、エビエンスの質が総じて良好であることを示しているからである。
  • III Bというスコアは、周術期看護師が周術期プロセスについて方針と手順をデザインする際に、このエビデンスを他の一次情報源を補完するエビデンスの二次情報源とみなすことが適切である可能性を示している。

周術期に対する示唆

 文献のこのシステマティック・レビューは、研究者と外科医にとって重要な事実を指摘している。すなわち、患者が受ける治療の多くは、定量化できず、したがって、相関関係を示す程度まで評価することは難しいということである。さらに、周術期看護師は誰もが、術前の情報が患者にとって極めて重要であるということを理解しているが、患者と家族にとってどのような情報がどれくらい重要であるかを決定することは常に難しい問題である。2人として同じ患者は存在しない。患者満足とPROについて準実験的研究を行うには本格的な計画が必要となる。しかし、周術期看護師は創造的であり、PROを研究し続けるべきである。

 本論文の評価は、ナース・コラボレーションズ(テキサス州ベルネ)のコンサルタント兼オーナーであるNancy Girard(PhD、RN、FAAN)が行った。Dr. Girardからは、本論文発表で利益相反の可能性が生じると認識される恐れのある関係は表明されていない。

監修(注釈): 社団法人日本看護協会 洪 愛子
訳: ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
メディカル カンパニー
コミュニケーション & パブリックアフェアーズ

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