AORNジャーナル3月号(2016)

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*2013年1月号より、AORNジャーナルオリジナル版の様式が変更になり、月1回の更新となります。

開放骨折創傷の初期管理における創洗浄の臨床試験

エビデンス評価スコア IA

(Bhandari M, Jeray KJ, Petrisor BA, et al.; N Engl J Med. 2015;373(27):2629-2641)

エディターズノート

 研究論文を読み、有効な研究の成果を業務に取り入れることは、科学的根拠に基づく周術期看護を確保する上できわめて重要です。AORN研究エビデンス評価ツール「AORN Research Evidence Appraisal Tool」は、周術期看護師が研究を評価する上で有用なツールです。エビデンスのタイプの違いに応じて、次の3つの評価ツール「研究エビデンス評価ツール:研究」、「研究エビデンス評価ツール:要約」、「非研究エビデンス評価ツール」が用意されています。これらの評価ツールは、AORNのガイドラインが準拠するエビデンスを評価するために使用されます。また、単一の研究、複数の研究の要約、非研究エビデンスそれぞれのエビデンスのレベルとエビデンスの質を評価するのに使用することができます。本評価ツールのセクションごとに、この研究に対して何故その評価スコアが付されたのか、またそのスコアが周術期看護業務にどのような意味をもつのかを明確に理解できるよう論じています。個々の研究の知見がある特定の状況において価値があり関連性があるかどうか判断する場合には、臨床による判断を行うべきです。この研究の知見を看護業務に取り入れようとする場合には、その原著論文をレビューして個々の看護の状況への適用可能性を判断することが推奨されます。

 感染の発症を防止し、創傷と骨の治癒を促進するには、開放骨折の初期管理に創洗浄とデブリードマンを実施しなければならないと一般的に知られている。臨床医は、壊死組織片を除去し、開放創を大量の洗浄液で洗浄することによって目に見えるすべての壊死組織片および壊死組織を除去することによって処置目的を達成することができる。しかし、粒子状物質と壊死組織片を除去するうえで最も効果的な洗浄圧と洗浄溶液のタイプの選択については意見が分かれている。

 粒子状物質とバクテリアを除去するには低圧よりも高圧のほうが有効かもしれないが、骨も損傷する可能性があることを示唆する研究がある一方で、低圧が骨の損傷と回復の遅延を防止する可能性があるが、異物とバクテリアの除去には有効でない可能性があるとする研究もある。同様に、石鹸のような界面活性剤の使用には、強力な生物学的根拠が存在する。しかし、石鹸には無極性分子と極性分子の両方が含まれているため、乳化剤として作用し、ある液体または粒子状物質を別の不混和性液体の中に分散させる。また、消毒剤および抗生物質を添加した他の洗浄液と比較して、石鹸は安価で、毒性が少なく、抗生物質耐性をもたらさないと考えられている。

 Fluid Lavage of Open Wound(FLOW)と命名されたこの臨床試験は、洗浄圧と開放骨折の創傷に使用すべき洗浄溶液のタイプに関する問題に取り組むようにデザインされている。これが単一の研究の報告であることから、この研究の評価には「AORN研究エビデンス評価ツール」の「エビデンスレベル:研究」を用いた。

エビデンスレベル

 この研究は、「AORN研究エビデンス評価ツール:研究」を用いて「レベルI」とした。この分類の根拠を以下のセクションで説明する。

介入/操作

 研究者は、介入を行った(すなわち、ある治療について試験しようとしている)。骨折創傷で臨床試験施設を訪れた患者は、6つの治療群のいずれか1つに無作為に割付けられた。患者は、6つの介入のうちいずれか1つで、創傷デブリードマンと洗浄を受けた。

対照/比較群

 この研究では対照群はなかった。すべての患者が6つの介入のうちいずれか1つによって治療された。

無作為割付け

 研究者は、参加者を6つの介入群のいずれかに無作為に割付けた。研究者は、試験群の割付けを盲検化するため、コンピューター・システムによる一元的無作為割付手法を使用した。

エビデンスの質

 「AORN研究エビデンス評価ツール」を用いて、この研究を、エビデンスの質「A」に分類した。この分類の根拠は、以下のセクションで説明する。

AORN Research Evidence Appraisal Tool(AORN研究エビデンス評価ツール)

目的/背景

 この研究の目的と研究内容は明確に述べられており、研究者は、何が既知であり、何が未知であるか、この研究が欠落をどのように埋めるものになるかについて具体的に述べている。研究者は、指標手術において異なる洗浄圧を使用し、生理食塩水かカスチール石鹸水のいずれかを洗浄に使用し、それらの使用が指標手術後12ヵ月以内の再手術の複合的理由に及ぼす影響を調べた。この研究は2009年6月から2013年9月にかけて、米国、カナダ、オーストラリア、ノルウェー、インドの41か所の施設で実施された。この研究は、マクマスター大学、グリーンヴィルヘルス・システム、各参加施設の倫理委員会に承認されている。
文献レビューは広範囲にわたっている。しかし、列挙されている40件の参考文献のうち、過去5年以内に発表されたものは10件(25%)しかなかった。引用された文献は、発表年は古いものの、研究内容に対応したものであった。

無作為割付

 患者は、1:1:1:1:1:1に無作為化され、各治療群に割付けられた。治療群の割付けが知られないようにするために、無作為化は、コンピューター・システムによる一元的無作為割付手法を用いて行われた。患者、評価項目評価者、データ・アナリストは、群の割付けを知ることはなかった。

対照群

 この研究には対照群はなかった。

介入

 介入は研究内容に対応していた。患者は、研究本部とGustilo-Anderson骨折分類法にしたがって層化された(Grade IまたはIIもしくはIIIかのいずれか)。この分類法は、開放創傷を分類する基準として最近広く使用されるようになった比較的単純なシステムである。参加者は、次の6つの治療群のいずれか1つに無作為に割付けられた。

  • 石鹸と非常に低い洗浄圧
  • 石鹸と低洗浄圧
  • 石鹸と高洗浄圧
  • 生理食塩水と非常に低い洗浄圧
  • 生理食塩水と低洗浄圧
  • 生理食塩水と高洗浄圧

 主要評価項目は再手術とした。再手術とは、最初の手術から12ヵ月以内に行われた手術で、手術部位または隣接する部位における感染症を治療する、創傷治癒の問題を管理する、骨治癒を促進する、のいずれかの目的のための手術と定義された。副次的評価項目は、指標手術から12ヵ月以内の感染、創傷治癒の問題および骨治癒の問題の手術によらない管理とされた。各治療群に対する介入は、再現が可能な程度に詳細に説明されていた。

サンプルサイズ

 臨床試験の参加者は、外科的介入を必要とする四肢(例えば腕、手首、脚、足首、足、鎖骨、肩甲骨)の開放骨折を起こした18歳以上の成人患者2,551人であった。骨盤環と中軸骨格の骨折の患者、手とつま先の骨折の患者は除外された。2,447人の患者からなるサンプルサイズは、研究デザインにとって十分であった。研究者は、各洗浄溶液群それぞれ1,140人、洗浄圧群それぞれ760人からなる合計の2,280人の患者からなるサンプルサイズにより、治療群間の差を特定する80%検出力をこの研究において確保することができると評価した。試験参加者は全員、この研究の内容について説明を受けた。無作為化を行った2,551人の患者のうち104人は不適格と判断された。47人は外科的治療を受けなかった。48人は骨折タイプが除外対象のタイプであった。1人は骨髄炎の病歴があり、2人は過去の骨折によりインプラントが患肢に挿入されており、2人は免疫抑制療法を使用していた。また、4人は研究参加年齢範囲内になかった。

データ収集

 研究者は、データ収集方法を明確に解説している。開放骨折の最初の管理は、非常に低い圧力(1〜2psi[重量ポンド毎平方インチ])、低圧(5〜10psi)、高圧(>20psi)のいずれかによる洗浄であった。外科医は、無菌手技を用いて単独で通常の食塩水のカスチール石鹸0.45%の生理食塩水溶液か生理食塩水単独のいずれかの洗浄液を調製した。溶液の最小量は、開放骨折創傷の重症度に応じて標準化された。すなわち、Gustilo-Anderson分類で Grade Iに対しては3L、Grade IIまたはIIIに対しては6Lとされた。患者は、手術後第1週、2週、6週、3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月、12ヵ月にフォローアップ評価のために来院した。それぞれの転帰の精度は、次のセクションで述べるように、統計的有意の有無を示す信頼区間で裏づけられた。

結果/結論

 3つの表と2つの図が添付されている。表と図の内容は、本文の記述と一致していた。

 研究の結果は明確に説明されている。この臨床試験に登録された2,551人の患者のうち合計2,447人の患者が適格と判断され最終的に組み込まれた。用いられた溶液と圧力の間には有意な相互作用は見られなかった(P=.31)。洗浄圧のタイプによる主要評価項目の経験率に有意差はなかった。高圧群826人の患者のうち109人(13.2%)は主要評価項目イベントを経験し、低圧群809人の患者では103人(12.7%)、超低圧群812人の患者では111人(13.7%)が主要評価項目イベントを経験した(スリーウェイ比較についてP=.80)。ハザード比は次のとおりである。

  • 低圧群対高圧群では0.92(95%信頼区間[CI]、0.70〜1.20、P=.53)
  • 高圧群対低圧群では1.02(95%CI、0.78〜1.33、P=.89)
  • 低圧群対超低圧群では0.93(95%CI、0.71〜1.23、P=.62)

 使用した洗浄溶液タイプによって主要評価項目の経験率には有意差が見られた。石鹸群の患者1,229人のうち主要評価項目イベントを経験したのは182人(14.8%)であり、それに対し生理食塩水群1,218人の患者のうち主要評価項目イベントを経験したのは141人(11.6%)であった。石鹸群のハザード比は1.32であった(95%CI、1.06〜1.66、P=.01)。

 研究者の結論は、研究の結果と一致していた。研究者は、最初の手術後12ヵ月以内に感染、創傷治癒問題または骨治癒問題の治療のためにさまざまな形態の再手術を受けるという複合的主要評価項目について、この主要評価項目に対する洗浄圧の有意な影響は見られなかったと報告している。石鹸による開放創傷骨折の洗浄に関連した12ヵ月以内の再手術率は、生理食塩水による洗浄に比べて有意に高かった。2つの洗浄溶液間、または、3つの洗浄圧間には、副次的評価項目(すなわち、(指標手術から12ヵ月以内の)感染、創傷治癒の問題および骨治癒の問題の手術によらない管理)の率の有意差はなかった。

制約/今後の研究

研究者は、研究の制約について考察している。指標手術時における外科医の初期洗浄プロトコルの遵守率は高かったが、二次的な手術時の洗浄またはデブリードマンを必要とした615人の患者に割付けられた本来の洗浄圧と溶液の遵守率は、洗浄圧については75.9%、洗浄溶液については79.3%に低下した。研究者は、この遵守レベルは相対的に高く、介入が交差することにより隠される傾向がある石鹸の有害な影響を見つけることができたと指摘している。さらに研究者は、高圧と低圧、高圧と超低圧、低圧と超低圧をそれぞれ対比して、洗浄圧が治療に及ぼす影響を評価したことについて、推定値は、差が1.0に近いものの、大きな差が存在する可能性は排除しているが、わずかな、とはいえ重要な差が存在する可能性は排除できないと述べている。研究者は、開放骨折患者のケアへの示唆について考察しているが、今後の研究にとっての示唆については考察していない。

バイアス

 この研究は、潜在的バイアスに対する予防措置を組み入れていた。治療群の割付けを知らない委員から構成される本部評価委員会が、すべての主要評価項目と重要な副次的評価項目を評価し、盲検化された状態で、治験への適格性を評価した。介入の影響に対する研究者による評価は、過大でも過小でもなかった。資金の開示については、研究者はいかなる寄付者または資金提供者も、研究のデザインまたは実施、データの収集または分析、原稿の作成に対して影響を及ぼさなかったと述べている。しかし、石鹸が抗生物質を含んだ生理食塩水と比較されたという点にはバイアスが存在した。

妥当性

 この研究の結果は、十分なサンプルサイズ、適切な研究デザイン、注目すべき変数の選択と適切な活用、因果関係について適切な推論を行う能力など、堅実な方法によって得られている。

一般化可能性

 この研究の結果は、他の状況または集団に転用可能または適用可能である。これは、2×3 要因デザインを使用し、高圧、低圧、超低圧の洗浄圧、石鹸水と生理食塩水を比較することによって開放骨折患者の再手術率に対する洗浄圧および洗浄溶液の影響を評価した国際的無作為化盲検試験であった。

評価結果

 「AORN研究エビデンス評価ツール:研究」を用いて、この研究のスコアはIAとした。

  • この研究のエビデンスレベルのスコアはIとした。これは、この研究が、無作為化対照比較試験であったためである。
  • この研究のエビデンスの質のスコアはAとした。これは、この研究がバイアスの可能性を排除する予防措置を講じ、研究デザインにとって十分なサンプルサイズを有し、合理的な程度に一貫性のある結果を提示し、結果としてかなり確定的な結論が導き出されているためである。
  • IAというスコアは、この研究が、現在得られる最善の研究エビデンスであり、周術期看護師がこのエビデンスを自身の看護実践の指針とみなすことが適切であることを示している。

周術期に対する示唆

 この研究の結果から、洗浄圧にかかわらず、再手術率が同程度であることが示された。また、この結果から、低圧が開放創傷の許容可能な低コストな洗浄方法であることが確立された。さらに、研究者は石鹸による開放創傷骨折の洗浄が、生理食塩水による洗浄に比べ、有意に高い12ヵ月以内の再手術率と関連していることを報告している。周術期看護師は、この研究の結果が、それまでの研究の結果に疑問を投げかけるものであることを理解すべきである。これまでの多くの実験的エビデンスは、高圧洗浄(一般的には>20psi)が好ましいという見解を支持し、いくつもの看護ガイドラインは汚染物質の効果的除去方法として高圧洗浄を推奨してきた。しかし、この研究の結果は、開放骨折後の創傷洗浄管理のプロトコルに影響を及ぼすものであり、したがって、その示唆は、世界中の患者のケアに及ぶ。洗浄液における石鹸の使用は今後急激に減少すると思われる。また、開放骨折患者のケアにおけるパルス洗浄システムの使用に有益性はないと思われることから、将来的には有害転帰が減少し、費用が軽減される可能性もある。

 本論文の評価は、SUNY医療関連職カレッジ(ニューヨーク州ブルックリン)ニューヨークメソジスト病院感染予防部長兼臨床准教授であるGeorge Allen(PhD、MS、BSN、RN、CNOR、CIC)が行った。Dr. Allen からは、本論文発表で利益相反の可能性が生じると認識される恐れのある関係は表明されていない。

監修(注釈): 社団法人日本看護協会 洪 愛子
訳: ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
メディカル カンパニー
コミュニケーション & パブリックアフェアーズ

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