AORNジャーナル4月号(2016)

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*2013年1月号より、AORNジャーナルオリジナル版の様式が変更になり、月1回の更新となります。

手術室看護教育における学部看護学生向けインタープロフェッショナルシミュレーション教育プログラムの実施および評価:無作為化比較試験

エビデンス評価スコア IA

(Wang R, Shi N, Bai J, Zheng Y, Zhau Y ; BMC Med Educ. 2015;15:115. Published online July 9, 2015)

エディターズノート

 研究論文を読み、有効な研究の成果を業務に取り入れることは、科学的根拠に基づく周術期看護を確保する上できわめて重要です。AORN研究エビデンス評価ツール「AORN Research Evidence Appraisal Tool」は、周術期看護師が研究を評価する上で有用なツールです。エビデンスのタイプの違いに応じて、次の3つの評価ツール「研究エビデンス評価ツール:研究」、「研究エビデンス評価ツール:要約」、「非研究エビデンス評価ツール」が用意されています。これらの評価ツールは、AORNのガイドラインが準拠するエビデンスを評価するために使用されます。また、単一の研究、複数の研究の要約、非研究エビデンスそれぞれのエビデンスのレベルとエビデンスの質を評価するのに使用することができます。本評価ツールのセクションごとに、この研究に対して何故その評価スコアが付されたのか、またそのスコアが周術期看護業務にどのような意味をもつのかを明確に理解できるよう論じています。個々の研究の知見がある特定の状況において価値があり関連性があるかどうか判断する場合には、臨床による判断を行うべきです。この研究の知見を看護業務に取り入れようとする場合には、その原著論文をレビューして個々の看護の状況への適用可能性を判断することが推奨されます。

 手術室では、チームワークは最適な患者転帰を確保するうえで不可欠である。何十年にもわたって、教育者は、手術室でのより良いコミュニケーションとチームワーク、特に外科医と看護師の間のコミュニケーションとチームワークの改善を奨励し、促進するための教育を提供する方法を検討してきた。それでも、実社会では、教育と実践の垣根が取り払われない状態が続いている。多くの方法が報告され、多くの研究によって、将来の実践と専門職種間の協力において教育が重要な役割を果たすことが示されているにもかかわらず、実際の場面では数十年前と変わらないことがしばしばである。ネガティブなコミュニケーションと不十分な、時として安全でない患者ケアに対する対策となりうる方法を検討するために、長年にわたって多くの試みが行われてきた。教育は、新たに医療専門職に就く人々の初期教育キャリアにおいて鍵となる役割を演ずることが明確になっている。

 この無作為化比較試験(RCT)は、手術室におけるより良い理解と医療専門職者間の協力を築く1つの教育方法を研究し、看護学生に対する職種共同シミュレーション教育( interprofessional simulation-based education :IPSE)プログラムを調査するように計画された。この研究の著者は、特にこの種の教育がインタープロフェッショナル教育に対する学生の態度と周術期看護についての知識に好ましい影響を与えることができたかどうかについて評価したいと考えていた。この研究は、看護学生だけでなく医学生も対象としているが、この論文の重点は、看護学生の態度と受け止め方についての知見に置かれている。これが単一の研究の報告であることから、この研究の評価には「AORN研究エビデンス評価ツール」の「エビデンスレベル:研究」を用いた。

エビデンスレベル

 この研究は、「AORN研究エビデンス評価ツール:研究」を用いて「レベルI」とした。この分類の根拠を以下のセクションで説明する。

介入/操作

 この研究の著者は、この研究で介入を実施し、参加者のおよそ半分について介入を試験した。

対照/比較群

 研究者は、対照群の学生に対し、実験的介入と異なる比較介入を実施した。対照群の学生は標準的な教育を受けたのに対し、介入群の学生はIPSEプログラムに参加した。

無作為割付け

 参加者は、対照群か介入群のいずれかに無作為に割付けられた。

エビデンスの質

 「AORN研究エビデンス評価ツール:研究」を用いて、この研究は、エビデンスの質「A」に分類した。この分類の根拠は、以下のセクションで説明する。

AORN Research Evidence Appraisal Tool(AORN研究エビデンス評価ツール)

目的/背景

 この研究の目的は明確に述べられており、リサーチクエスチョンは明快であった。この研究は、周術期看護における学生のコミュニケーション、チームワークおよび臨床知識に対するIPSEプログラムの影響を評価するために行われたRCTである。

 著者は、現在得られている情報を解説している。手術室でのチームワークが不十分である主な要因は、医療専門職間の「サイロメンタリティー(互いに垣根を作り自分の専門分野に閉じこもる傾向)」である。インタープロフェッショナル教育は、看護学生と医学生が、共同チームの一員としてケアを提供できるように意識づける重要な方法である。さらに、実社会での協力に基づくシミュレーションは、異なる専門分野に属するチーム・メンバー間での批判的思考と意思決定を促す。

 この研究は、天津医科大学(中国)の研究倫理委員会の承認を得ている。また、動物の取り扱いは、動物福祉の観点から、天津医科大学の動物委員会の承認を得ている。

 この論文は参考文献として33本の論文を挙げており、それらの論文は、研究の目的を反映しており、このテーマについての過去の知識に関係するものであった。論文はすべて、この研究におけるリサーチクエスチョンに関係しているように見受けられる。

無作為割付

 看護学生は、IPSE(介入)群か従来の教育コース(対照)群のいずれかに無作為割付けされた。サンプリングバイアスを防止するために、乱数表が使われた。解釈と測定におけるバイアスを防止するために、研究は盲検化された。参加者が、自身がどの群に割付けられたかを知っていたことから、この研究は無作為割付けと統計分析によって調整された。

対照群

 対照群は、介入群と一貫性があり、サンプル集団を代表するものであった。対照群と介入群の構成員間の特徴はすべてほぼ同じであり、介入を除いて全員が等しく扱われた。この調査は、1つの実施場所で完了された。

 参加した55人の看護学生は全員、手術室看護教育モジュールを完了したばかりであった。対照群(n=27)は、従来の看護教育トレーニングを受け、手術室看護技術は模擬手術室で経験豊かなインストラクターの監督下で実施された。同一の大学に属する合計46人の4年生の医学生も参加した。彼らは必修医学課程である基本的外科手技(Basic Surgical Techniques: BST)課程を受講しており、看護学生はこの研究のためにこの課程の受講を認められた。

介入

 看護介入群(n=28)は、1グループあたり1〜2人の看護学生と3〜4人の医学生で構成された。論文は、医学生は彼らの学校教育の一環としてこの研究に組み入れられたのであり、看護研究の一部として組み入れられたのではないことを示唆している。介入群の参加者は、シミュレーション・シナリオを用い、麻酔をかけた動物に対しチームとして外科手技を行った。介入は明確に研究目的を反映していた。虫垂切除、脾臓摘出、小腸切除とそれに伴う吻合という3つの外科シミュレーション・シナリオが使用された。

 臨床活動の前に、介入群であるIPSE群は、トレーニングの目標および目的、シミュレーションの実施ルールおよび設備からなる教育を受けた。対照群は、ルーチンの教育を受けた。各シミュレーション・シナリオの時間は3時間ずつであり、2週間にわたって模擬手術室で週に1回実施された。すべての看護学生は、3つのシナリオのうち2つに、外回り看護師か器械出し看護師のいずれかとして参加した。医学生は、外科医役を演じた。

 器械出し看護師役の看護学生は、外科手術時、手術に必要とされる器具および滅菌済み材料を準備し、無菌環境を維持し、外科医を補助した。外回り看護師役の看護学生は、手術室で看護ケアを管理し、他の医療従事者と連携して外科チームの必要に対応した。手術中、学生は相互に協力し、能力を探り、互いに学び合い、必要に応じて互いに助けあった。指導者がその場に立ち会い、基本レベルで学生を援助し、技能習得を通じた進歩を促した。

サンプルサイズ

 天津医科大学(天津、中国)に属する55人の3年生の看護学生が、この研究に登録され、IPSE群(n=28)か従来の学習課程群(n=27)のいずれかに無作為割付けられた。いずれの群の看護学生も女性で構成され、年齢は20歳から22歳であり(平均年齢は21歳)、以前にIPSEプログラムを受けた経験がなかった。BST課程の段階にある同じ大学に所属する合計46人の4年生の医学生も研究に参加した。参加者の組み入れは、研究グループによって定義され、すべての研究参加者がこの学習課程を修了し、したがって、全員がその行動をよく把握された。除外された者はいなかった。サンプルサイズが十分かどうかを決定するための検出力分析は行なわれなかったが、参加者の総数は、文献の他のIPSE経験でのサンプルサイズの範囲内に該当した。

データ収集

 データ収集プロセスはよく記述されている。いくつかの評価ツールとデータ収集ツールが、この研究に使用された。

  • 臨床に関連したシナリオは、天津医科大学看護学部と医学部の教職員のIPSEチームによって作成、レビューされた。このチームが、シミュレーション・シナリオに、両方の専門性にまたがる重要な側面と問題を取り入れられることを確保した。
  • 多職種間チームに対する態度と、インタープロフェッショナル教育を受けられる状態にあるかどうかを測定する方法として、インタープロフェッショナル学習レディネス・スケール(The Readiness for Interprofessional Learning Scale: RIPLS)が使用された。この研究のクロンバックのα信頼性係数は0.90である。著者は、自分たちの研究にとってこの値は有意であると判断した。このアンケートは、この課程での活動の前後に記入された。このアンケートは、合同学習に関する学生の考えの強さを測定する19の質問から構成されている。文化的同等性を確保するため、著者は5人の専門家委員会に、中国語版の内容の妥当性の確認を依頼している。RIPLSChineseの内容妥当性インデックスは、0.91で優秀であった。著者によれば、彼らの研究におけるクロンバックのα信頼性係数は以下の通りであった。すなわち、RIPLSが0.92、チームワークと協力が0.86、専門職者としてのアイデンティティが0.80、役割と責任が0.71であった。
  • テーマの内容分析も使用された。自由回答に対してはワープロ・ツールとグラウンデッド・セオリーの原則が使用された。最初の行ごとの分析後に、焦点を当てたコーディングを繰り返し、絶えず比較を行い、データから浮かび上がるテーマとサブテーマを導き出した。データは、信頼性を確保するため、この研究の著者2人がそれぞれ独立してレビューし、コーディングした。研究グループは、不一致点を議論で解決し、不明な点についてはコンセンサスを図った。
  • 手術室看護における看護学生の知識を測るために、感染の防止、患者の安全、品質保証、看護師としての責任という20の質問項目が使用された。この研究チームは、文献レビューと研究チーム自身による専門家としての意見に基づいて、このツールを作成した。臨床シナリオを完了した後、看護学生は、匿名で質問項目に回答した。この研究の一次調査担当者は、設問が言語学的に明快であるか、この調査に対する回答の選択肢の正確さを試験した。次に5人の専門家は、質問の内容妥当性を確認し、内容妥当性インデックスは0.88であった。この質問調査の信頼性は良好であり、クロンバックのα信頼性係数は0.86であった。この質問調査が取りうるスコアの範囲は0から100である。スコアが高いほど、手術室看護の知識レベルが高いことを示す。

 統計分析はすべてこの研究にとって適切なものであった。IPSEプログラム前後での看護学生の態度についての個々の質問に対する回答の違いの分析には、ウィルコクソンの符号順位検定が使用された。それぞれの課程後、IPSE群と従来課程群の間で周術期看護についての看護学生の知識の差が独立サンプルt検定法を使って分析された。P値が.05未満である場合は、統計学的に有意であると見なされた。統計分析は、SPSS Statistics for Windows Version 17.0 (SPSS, Chicago, IL)を使って行われた。自由回答形式の設問に対する参加者の回答は、質的な方法を使って分析された。

結果/結論

 研究には2つの表が含まれ、それらは本文と一致していた。研究のアウトカムは明確に述べられている。著者の主要な結論は、模擬手術室環境で実施された専門職種合同トレーニングは、手術室看護のチーム実践対応に対する参加者の態度と知識に良好な影響を及ぼすように思われると結論づけている。具体的な知見は以下のとおりである。

  • インタープロフェッショナル学習に対するレディネス:看護IPSE群では、介入後質問調査において質問3(P=.046)、7(P=.040)、13(P=.023)、14(P=.013)に有意差が見られた。これは、IPSEコース後に回答がより積極的になり、チームワークと協力、専門職としてのアイデンティティに対する態度に改善がみられることを反映している。
  • 自由回答式の質問に対する回答で、IPSE経験の4つのテーマが確認された。すなわち、医学生とのコミュニケーション、役割の認識、より良い学習方法、将来のIPSEである。
    • 医学生とのコミュニケーション:看護学生は、チーム・メンバー間のコミュニケーションの重要性を強調した。例えば、著者は、ある学生が「私は今回のことで、看護学生と医学生がコミュニケーションを取り合う上で同じ問題を抱えていることが分かった」と述べている。
    • 役割認識:著者は、IPSEワークショップが、学生が職種間の境界と役割について考えるきっかけを与えたと報告している。
    • より良い学習方法:学生は、自由回答式の質問に対して、IPSEは学習方法としてより良い方法であり、協働する能力を高めるうえで役立つと回答した。
    • 将来のIPSE:将来のIPSEのテーマは支持され、学生たちは、IPSEを通じてより多くのことを学んだと述べている。
  • 手術室看護知識アンケート:知識スコア合計で、IPSE群の看護学生のスコア(平均83.50、標準偏差[SD]8.45)は、従来のコース群の学生(平均77.00、SD7.33)に比べ有意に高かった(P<.05)。

制約/今後の研究

研究グループは、2、3の制約を挙げている。研究者は、観察が介入の直後に行われたので、介入群、対照群が満足できるレベルのパフォーマンスを示すことができたことはおそらく意外なことではないと考えた。IPSEプログラムの継続が、資格取得後の態度に深い変化をもたらすのではないかという仮説を確認するには、将来の長期にわたる研究が必要である。指摘されているもう一つの制約は、異なる専門分野の学生の小さなグループの実習時間を合わせるのが容易でなく、IPSEプログラムを実施するうえで実務上の制約が生じるという点である。この研究の著者は、看護学生(そして医学生)間の短期的便益が卒業後の職場での改善につながるかどうかを確認するには、より長期的なフォローアップが有用であろうと提案している。

バイアス

 サンプリングバイアスは、介入群と対照群への無作為割付けを用いることによって防止された。明白なバイアス、隠れたバイアスは、この論文では確認されなかった。介入の影響はデータに由来した。研究者は、研究資金の提供者を明らかにしている。

妥当性

 臨床研究を行うことはどうしても困難が伴うため、この研究は可能なかぎり有効である。この研究の著者は、方法、評価ツール、データ収集の有効性を検証している。

一般化可能性

 この研究の著者が指摘しているように、サンプルサイズが小さいことが知見の一般化可能性の制約となっている。

評価結果

 「AORN研究エビデンス評価ツール:研究」を用いて、この研究のスコアはIAとした。

  • この研究のエビデンスレベルのスコアはIとした。これは、この研究が、無作為化比較試験であったためである。
  • この研究のエビデンスの質のスコアはAとした。これは、この研究が、無作為化、対照および介入について明確に記述しており、サンプルサイズが文献中の他の同じような研究と比較して十分であると思われ、さらに、結論が結果に基づいているからである。
  • IAというスコアは、この研究が、現在得られる最善の研究エビデンスであり、周術期看護師がこのエビデンスを自身の看護実践の指針とみなすことが適切であることを示している。

周術期に対する示唆

 手術室教育におけるコミュニケーションとチームワークは、周術期看護師にとって不可欠な臨床知識と技術の一部である。手術室で見られるネガティブな文化に対処する1つのアプローチは、ポジティブな実践経験をする機会を増やし、チーム単位で学生の能力を効果的に高めるインタープロフェッショナル教育をモデル化することである。

 この研究のような、動物手術によるシミュレーション・シナリオを使った看護学生と医学生のIPSEの教育経験は、自分たちの専門分野に閉じこもりがちな教育の現状、そして、経済的な観点や動物福祉の観点から見ても、他の多くの教育施設で再現することは不可能だろう。しかし、医学シミュレーション教育と看護シミュレーション教育がすでに行われている多くの施設で、改良を加えたIPSEを実践することはできる。卒業し実社会で実務を開始する前に、協力、コミュニケーション、他の専門職への敬意を学ぶ機会を提供しなければならない。協力、コミュニケーション、他の専門職への敬意は、外科患者が受けることができる最も高い医療の質を体現するものであり、こうした特徴を長期にわたり保持し続けるには、適切なIPSEをどの時点で実施するかが決定的に重要である。IPSEは、すでに働いている医療従事者を対象にした生涯教育の一環ではなく、学校教育の中で最も効果が期待できる。

 本論文の評価は、ナース・コラボレーションズ(テキサス州ベルネ)コンサルタント兼オーナーであるNancy Girard(PhD、 RN、FAAN)が行った。Dr Girardからは、本論文発表で利益相反の可能性が生じると認識される恐れのある関係は表明されていない。

監修(注釈): 社団法人日本看護協会 洪 愛子
訳: ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
メディカル カンパニー
コミュニケーション & パブリックアフェアーズ

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