AORNジャーナル6月号(2016)

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*2013年1月号より、AORNジャーナルオリジナル版の様式が変更になり、月1回の更新となります。

革新的手術におけるインフォームド・コンセント:患者と外科医を対象とした実態調査

エビデンス評価スコア IIIA

(Lee Char SJ, Hills NK, Lo B, Kirkwood KS.; Surgery. 2013; 153(4):473-480.)

エディターズノート

 研究論文を読み、有効な研究の成果を業務に取り入れることは、科学的根拠に基づく周術期看護を確保する上できわめて重要です。AORN研究エビデンス評価ツール「AORN Research Evidence Appraisal Tool」は、周術期看護師が研究を評価する上で有用なツールです。エビデンスのタイプの違いに応じて、次の3つの評価ツール「研究エビデンス評価ツール:研究」、「研究エビデンス評価ツール:要約」、「非研究エビデンス評価ツール」が用意されています。これらの評価ツールは、AORNのガイドラインが準拠するエビデンスを評価するために使用されます。また、単一の研究、複数の研究の要約、非研究エビデンスそれぞれのエビデンスのレベルとエビデンスの質を評価するのに使用することができます。本評価ツールのセクションごとに、この研究に対して何故その評価スコアが付されたのか、またそのスコアが周術期看護業務にどのような意味をもつのかを明確に理解できるよう論じています。個々の研究の知見がある特定の状況において価値があり関連性があるかどうか判断する場合には、臨床による判断を行うべきです。この研究の知見を看護業務に取り入れようとする場合には、その原著論文をレビューして個々の看護の状況への適用可能性を判断することが推奨されます。

 手術のインフォームド・コンセント・プロセスは、手術に関する情報を患者に提供するために数十年前から使用されてきた。インフォームド・コンセントは、臨床試験の参加者を危害から保護するためにも使用される。研究への同意は厳格に規制されているが、新しい手技および革新的手技に対する外科的同意には法的な規定はない。新しい技術を臨床診療に導入するための一般的ガイドラインは存在するが、革新的手技または新しい手術手技のどの側面について、を外科手術の前に患者と話し合うべきか明確になっていない。外科手術に対するインフォームド・コンセントを得るという状況で、正確に言ってどのような情報を提供すべきかについても明確ではない。この研究において、Lee et alは、革新的外科手技のインフォームド・コンセントについて話し合う際に、術前に外科患者と外科医がそれぞれどのような情報を伝えることが不可欠であると考えるかを把握したいと考えた。データ収集後、研究者は、患者群と外科医群が望む情報が対応し、類似しているかどうか確認するため、両群の反応を比較した。

 調査研究では、記述的情報を収集し、また、特定のテーマに関する情報が収集される。これが単一の実態調査研究の報告であることから、この研究の評価には「AORN研究エビデンス評価ツール」の「エビデンスレベル:研究」を用いた。

エビデンスレベル

 この研究は、実態調査であることから、「AORN研究エビデンス評価ツール:研究」を用いて「レベルIII」とした。この分類の根拠は以下のセクションで説明する。

介入/操作

 この研究では介入/操作は使用されなかった。

対照/比較群

 この研究では対照群はなかった。

無作為割付け

 この研究では無作為割付けは使用されなかった。

エビデンスの質:研究

 「AORN研究エビデンス評価ツール:研究」を用いて、この研究は、エビデンスの質「A」に分類した。この分類の根拠は、以下のセクションで説明する。

AORN Research Evidence Appraisal Tool(AORN研究エビデンス評価ツール)

目的/背景

 研究者は、この研究の目的および調査質問項目を明確に述べている。研究者は、調査質問項目について既知の事柄と未知の事柄を特定し、この研究が未解明の課題にどのように取り組むかを明らかにしている。研究者は、患者群と外科医群の別個のグループを、それぞれが革新的外科手技のインフォームド・コンセント・プロセス時に話し合ううえで何が不可欠な事柄であると考えるかを決定するために実態調査を行い、患者の反応と外科医の反応を比較した。研究者は、得られた知見をもとに、革新的外科手技を行う前に開示すべき情報について具体的な指針を外科医に提供することができるかどうかを評価したいと考えた。

 カリフォルニア大学サンフランシスコ(UCSF)研究倫理委員会は、外科医対象の研究に審査免除の地位を与え、患者を対象とする研究を承認した。両研究について同意書は免除された。実態調査票の必要な記入事項への記入をもって同意と解釈した。

 この論文は、参考文献として35件の論文を列挙している。参考文献の多くは研究の目的を反映しており、調査ツールの開発で使用された論文などのその他の論文は、背景にあるトピックを明確に裏付けるものであった。

無作為割付

 無作為割付は行われなかった。

対照群

 この記述的調査研究では対照群はなかった。

介入

 これが記述的実態調査であったため、正式な介入はなかった。

サンプルサイズ

 この研究のサンプルは、十分に記述された便宜的サンプルであった。85人の主治医である外科医と383人の成人の術後患者が実態調査票に必要な記入事項にすべて記入した。検出力分析は行われなかったが、サンプルサイズはこの研究のタイプに十分であると考えられる。2つの外科医グループ、UCSF外科臨床教職員と前年に少なくとも1回の手術手技においてUCSF一般外科レジデントの支援を受けたサンフランシスコUCSF付属病院(すなわちカリフォルニア太平洋医療センター、カイザーパーマネンテ、退役軍人メディカルセンター)所属の外科医が適格とされた。2010年1月から3月にかけて113件の実態調査票のうち記入事項がすべて記入された実態調査票は85件であった(回答率75%)。参加した85人の外科医のうち12人がこの研究に参加した患者を担当した。実態調査票の仮説シナリオでは部分的肝切除術を採用したが、研究者は研究への参加を肝臓外科医に限定しなかった。そのため、十分な数の外科医に対して実態調査を実施することができた。

 英語で読み書きができ、同意する能力があり、最初の術後受診をUCSF付属の3つの手術クリニック、一般外科診療科、結腸直腸手術クリニックまたは乳がんクリニックのいずれかで行った成人患者が対象として適格な患者とされた。2009年10月から2010年2月にかけて、541人の適格な患者のうち383人が、実態調査票の記入事項をすべて記入した(回答率71%)。順次、適格な患者に対し、実態調査票に必要事項をすべて記入し、受診終了後に返却するように依頼した。

データ収集

 外科医と患者は、実態調査ツールを通じて人口統計学的データを提供した。研究者は、外科医の各専門部門会議と症例検討会で実態調査票用紙を配布した。用紙が配布された時点で不在であった外科医は、実態調査票にオンラインで記入するよう電子メールによる依頼が送られた。実態調査票に必要事項を記入した参加者は、5ドルのギフトカードを受け取った。実態調査票はすべて匿名であった。

 使用された実態調査票は、予備調査で信頼性と有効性の点から検証された。この実態調査票は、予備調査で得られた知見にしたがってこの研究調査のために修正された。この質問調査では、1の「完全に重要でない」から6の「非常に重要で、患者はこの情報がなければ決定することができないと思われる」の6ポイントからなるリッカート尺度が使用された。参加者は、想定された部分的肝切除術に対して提供された3つの手技(すなわち、標準的な開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット手術)について、術前に16タイプの情報を議論する重要度をそれぞれ評価した。質問調査に添えられている説明では、腹腔鏡手術は、「胆嚢と虫垂を摘出するために一般的に使用されているが、部分的肝切除術の場合、このアプローチはかなり新しい」と説明されている。ロボット手術は「この2、3年間でわずかな数の患者に使用され、腹腔鏡手技よりもさらに新しい手技」であると説明されている。

 データを分析するために研究者は、次の解析方法を使用した。すなわち、リッカート・スコアには、ランダムなデータ欠損に対応できるSkillings-Mack検定、グループ間の割合の比較にはピアソンのカイ二乗検定(有意差P < .05)、従属名目データの分析が可能な反復測定ロジスティック回帰モデル、である。参加者によっては、回答が、他の参加者の回答よりも類似する場合が考えられるため、研究者は、統計的手法を使って従属観察を行った。さらに研究者は、ノンパラメトリック検定(フリードマン検定)も使用した。この手法では、3つの外科手技すべてについて必ずしも回答が得られなかった変数について3つのレベル以上の比較が可能である。

 研究者は、6つの幅広いカテゴリーの情報の相対的重要度を検証し、情報の重要度が3つの外科的手技間で変動するかどうかを評価した。研究者は、情報のタイプごとに、その情報を「極めて重要」と評価した参加者の割合を、参加者総数に対する割合として計算した(患者の場合N=383、外科医の場合N=85)。研究者は、これらの割合を、従属名目データの分析が行える反復測定ロジスティック回帰モデルを使って、標準的手技の場合とロボット手技の場合とで比較した。研究者が統計学的有意性を示す測定(例えば信頼区間)によってアウトカムごとの精度を裏づけたかどうかは不明である。

結果/結論

 この論文には4つの表が含まれた。これらの表は、この論文の本文と一致しており、論文に示されている情報に深みを与えている。研究者の結論は、結果と一致していた。次の4つのカテゴリーについてデータの分析結果が報告されている。

  • 人口統計学
    患者はほとんどが白人で、大学教育を受けており、研究参加者は、男性よりも女性の方が多かった。ほとんどの患者は、患者と外科医の両方が参加する意思決定の共有モデルを好ましいと考えている。多くの患者は、過去に何度か外科手術を受けたが、革新的手技を経験した者はほとんどいなかった。革新的手技は、「新しい手技または機器を使用し、手術を通常行われる方法とは異なるものにする手技」と定義された。外科医は主に中年の白人であった。研修期間後の診療実務期間中央値は12年であった。外科医の区分の中で最も大きな外科医グループは、一般外科医と血管外科医であった。参加者のおよそ半分は、主として、医科大学付属病院か三次医療機関で診療を行っていた。
  • 患者が外科手術を選択する前に何を知りたいか
    研究者は、患者にとって最も重要な種類の情報は、外科医がその手術を行うのが初めてかどうかであると報告している(6ポイントのリッカート尺度で3つの外科手技の平均スコアは、5.81である)。およそ80%の患者は、この情報がなければ外科手技について判断を下すことができないと回答している。他方、この情報を重要であると考えた外科医の割合は、60%であった。研究者は、患者は、革新性に関係なくリスクと便益について話し合うことを重視していると報告している(平均スコア=5.75)。70%以上の参加者が、革新的手技であるかどうかにかかわりなく、既知のリスク、既知の便益、未知のリスクが存在している可能性という3つのテーマを、外科手技を受けるべきかどうかを判断するうえで不可欠であると考えた。患者が最も重要度が低いと回答した情報カテゴリーは、外科医に利害関係が存している可能性であった(平均スコア=4.50)。外科医が患者の手術について論文を発表することを計画しているかどうかが不可欠であると考えた患者は24%しかいなかった。
  • 革新的手術を受けることを検討している患者にとって重要な情報のタイプ
    70%以上の患者が、以下の情報なしでロボット外科手術を受けるべきかどうかを決定することはできないと回答した。すなわち、手術の概略の説明、既知のリスクと便益、未知のリスクと便益が存在する可能性、外科医がその手術手技を行うのが初めてかどうか、その手技のための外科医の特別なトレーニング、である。患者はほとんどすべてのテーマについて、標準的外科手術の前よりも、革新的腹腔鏡またはロボット外科手術の前のほうが、話し合うことが重要であると判断しているが、ほとんどのテーマで絶対差は小さかった。
  • どの程度、患者の意見と外科医の意見は対応しているか
    ほとんどすべての種類の情報について話し合わないかぎり外科手術について決定を下すことができないと報告した割合は、外科医の割合よりも、患者の割合の方が大きい。これらの差は総じて小さかったが、ロボット手術を検討する際には、手技の技術的詳細、他の外科医の数と治療成績、外科医自身の経験と治療成績、外科医の特別なトレーニングなどのタイプの情報を不可欠であると評価した患者と外科医の割合の差は20%以上あった。患者と外科医いずれも、およそ3分の2以上が、患者が以下の情報がなければ革新的なロボット外科手術を受けるべきかどうか判断を下すことができないだろうと認めている。そのような情報とは、手術手技が標準的な手技ではなく新しい手技であるという明快な表明、既知のリスク、未知のリスクと便益が将来明らかになる可能性、その手技が外科医にとって初めて行なう手技であるかどうかである。

制約/今後の研究

 研究者は、この実態調査研究のいくつかの制約を挙げている。

  • 研究デザイン上、患者と彼らの個々の外科医の直接の比較ができなかった。
  • 研究は、部分的肝切除術についてのインフォームド・コンセントに限定された仮定ケースであった。
  • 研究は、利害関係が存在する可能性に関して患者がみなす重要度を過小評価した可能性がある。
  • 研究は、患者が望む「極めて重要な」情報をすべて提供することが革新的外科手術を受けるかどうかの患者の決定に実際に影響を及ぼすかどうかを直接検証するものでなかった。

 著者は、これらのテーマを今後の研究で検証することを提案している。

バイアス

 研究者は、この研究におけるデザイン、データ収集方法と統計方法に関連したバイアスを取り除こうと試みている。

妥当性

 ツールを開発する際、研究者はUCSFで5人の外科医と40人の術後外来患者を対象に予備調査を行うことによって有効性と信頼性を検討した。外科医と術後外来患者は、調査票に記入し、次に、明快さ、時間効率性、不利益性、構成概念妥当性などの点について感想を尋ねた。初期のバージョンの患者用調査票は、非重要度のレベルをいくつか細かく設定するなど、数値範囲を幅広く取ることによってリッカート尺度をテストした。

一般化可能性

 最後に著者は、自分たちの結果が他の患者集団、診療状況、地域に一般化できない可能性があると指摘している。

評価結果

 「AORN研究エビデンス評価ツール:研究」を用いて、この研究のスコアはIIIAとした。

  • この研究のエビデンスレベルのスコアはIIIとした。これは、この研究が、介入または操作のない研究調査であったからである。
  • この研究のエビデンスの質のスコアはAとした。これは、この研究が実態調査ではあるが、収集した情報は、新たな外科手技に関して完全かつ十分な情報を提供するという患者と外科医双方の目的と希望に適うものであるからである。
  • III Aというスコアは、一次的エビデンス源も使用することを条件として、周術期看護師が革新的手技のインフォームド・コンセント・プロセスを設計する際の二次的エビデンス源とみなすことが適切であることを示している。

周術期に対する示唆

 この実態調査研究の結果は、外科手術についてのインフォームド・コンセントの重要性、特に革新的手術または機器を使用する場合の重要性を改めて示している。この実態調査の知見は、同意書の改訂または新しい同意書の作成において有用であると思われる。

 術前の教育と情報提供において、研究者は、患者が彼らの外科医の経験と治療成績に関する情報を得たいという希望を表明しているが、外科医は、この2つの要素の重要度は低いと考えていると報告している。新しい手術手技の開発は、たとえそれらのリスクが予見しがたいものであるとしても、患者のリスクを高める可能性があることを改めて想起することが有用である。著者は、腹腔鏡胆嚢切除術が広く適応されているが、この手術は胆管損傷のリスクを高めるものであると指摘している。

 どのような場合も、患者が完全な理解に到達するのを支援するのに十分な情報を共有することが外科におけるインフォームド・コンセントの話し合いの目的であり、これは革新的手術を受けるべきかどうか決める際には、患者にとってさらに重要と思われる。この種の同意の法的性格はこれまで考慮されてこなかったが、将来はそれが考慮されるようになる可能性もある。

 本論文の評価は、ナース・コラボレーションズ(テキサス州ベルネ)コンサルタント兼オーナーであるNancy Girard(PhD、 RN、FAAN)が行った。Dr Girardからは、本論文発表で利益相反の可能性が生じると認識される恐れのある関係は表明されていない。

監修(注釈): 社団法人日本看護協会 洪 愛子
訳: ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
メディカル カンパニー
コミュニケーション & パブリックアフェアーズ

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