AORNジャーナル7月号(2016)

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*2013年1月号より、AORNジャーナルオリジナル版の様式が変更になり、月1回の更新となります。

直腸がんの腹腔鏡下手術と開腹手術の比較:3年間のフォローアップ結果のメタアナリシス

エビデンス評価スコア IA

(Zhao D, Li Y, Wang S, Huang Z.; Int J Colorectal Dis. 2016;31(4):805-811)

エディターズノート

 研究論文を読み、有効な研究の成果を業務に取り入れることは、科学的根拠に基づく周術期看護を確保する上できわめて重要です。AORN研究エビデンス評価ツール「AORN Research Evidence Appraisal Tool」は、周術期看護師が研究を評価するうえで有用なツールです。エビデンスのタイプの違いに応じて、次の3つの評価ツール「研究エビデンス評価ツール:研究」、「研究エビデンス評価ツール:要約」、「非研究エビデンス評価ツール」が用意されています。これらの評価ツールは、AORNのガイドラインが準拠するエビデンスを評価するために使用されます。また、単一の研究、複数の研究の要約、非研究エビデンスそれぞれのエビデンスのレベルとエビデンスの質を評価する際にも使用することができます。本評価ツールのセクションごとに、この研究に対して何故その評価スコアが付されたのか、またそのスコアが周術期看護業務にどのような意味をもつのかを明確に理解できるよう論じています。個々の研究の知見がある特定の状況において価値があり関連性があるかどうか判断する場合には、臨床による判断を行うべきです。この研究の知見を看護業務に取り入れようとする場合には、その原著論文をレビューして個々の看護の状況への適用可能性を判断することが推奨されます。

 世界中で最もよく見られる悪性腫瘍の1つは、結腸直腸がんである。西側先進国では、結腸直腸がんは、3番目に多くみられる悪性腫瘍である。中国では、5番目に多い悪性腫瘍である。技術の向上とともに、結腸直腸がんの治療に利用できる治療方法の数が劇的に増加した。

 近年、開腹手術と比べて、腹腔鏡下結腸切除術は出血量が少ない、腸蠕動が早期に回復する、入院期間が短いことを示す知識が蓄積されている。実際、1991年に腹腔鏡下結腸切除術が初めて報告されて以来、腹腔鏡下手術は短期的便益と、開腹手術と同等の長期的生存率が得られることから、次第に開腹手術に取って代わる存在となっている。しかし、直腸がんの腹腔鏡下切除後の長期生存率が開腹手術後の長期生存率に比べて高いかどうかを評価する証拠は乏しい。臨床試験のメタアナリシスは、両者が同等であることを示しているが、最近新たな臨床試験が発表され、最新の情報にもとづいてメタアナリシスの結果を見直す必要が生じている。

 この研究の狙いは、メタアナリシスを通じて直腸がん患者における腹腔鏡下手術と開腹手術の有効性を評価することにあった。この研究が複数の研究の要約であることから、この研究の評価には「AORN研究エビデンス評価ツール:要約」を用いた。

エビデンスレベル:要約

 「AORN研究エビデンス評価ツール:要約」を用いて、この研究は、エビデンスレベルについてはレベルIに分類された。研究者は、いくつかの研究を要約し、包括的な検索戦略と厳格な評価を使い、自分たちのレビューの一環として定性的研究から得られた概念を分析、統合している。含まれている研究はすべて無作為化比較試験(RCT)であった。

エビデンスの質:要約

 「AORN研究エビデンス評価ツール:要約」を用いて、この研究のエビデンスの質はAと分類された。この分類の根拠を以下のセクションで説明する。

AORN Research Evidence Appraisal Tool(AORN研究エビデンス評価ツール)

目的/背景

 この研究の目的は、明確に述べられている。すなわち、発表されているRCTから得られる3年間の生存率のメタアナリシスを行い、直腸がんに対する腹腔鏡下手術と開腹手術の有効性を評価することである。研究者によれば、いくつかのRCTを取り上げたメタアナリシスが、直腸がんに対する腹腔鏡下手術と開腹手術が有効性の点で同等であると報告しているという。しかし、研究者は最近、3年生存率に関するデータを含めた新たなRCTが発表されたことを指摘し、現在の知識に欠落している部分に対処するため、最新の情報にもとづいて分析を行う必要があると指摘している。

検索

 このメタアナリシスの手法は再現性を有している。著者は、直腸がんの腹腔鏡下手術を直腸がんの開腹手術と比較した関連するRCTを求めて、PubMed、EMBASE、Cochrane Libraryを検索した。検索は、2015年4月以前に発表された文献を対象とし、文献の古さについての制限は設けられていなかった。使用された検索語は、直腸がん(Medical Subject Heading)、結腸直腸新生物、結腸直腸がん、結腸直腸腫瘍、結腸直腸腺がん、直腸新生物、直腸腫瘍、直腸腺がん、腹腔鏡検査(Medical Subject Heading)、開腹手術、観血手術、従来の手術、開腹【使用された検索語の原文:rectum cancer (Medical Subject Heading) ,colorectal neoplasms, colorectal cancer, colorectal tumor, colorectal adenocarcinoma, rectum neoplasm, rectum tumor, rectum adenocarcinoma, laparoscopy (Medical Subject Heading), open surgery,open abdominal surgery, conventional surgery, and laparotomy】であった。このコンピュータ検索は、その検索で収集された研究の参考文献の手作業による検索で補完された。

 試験の包含基準は、腹腔鏡下手術による直腸がんの治療と開腹手術による直腸がんの治療の比較が行われていること、前向き無作為化比較臨床試験であること、患者集団が18歳以上であること、3年全生存率と無病生存率についての詳細の説明があることとされた。適切なデータがない研究、報告されている結果からデータが抽出できなかった研究、再発直腸がんまたは転移性がんを扱った研究は除外された。ケース・シリーズ、症例報告、レビュー、レター、コメントも除外された。可能なかぎり、既発表の文献と未発表の文献両方が特定、検索された。

 RCTにおけるバイアスのリスクは、Cochraneの推奨する方法に従って、割付の順序(random sequence generation)、割付の隠蔽(allocation concealment)、参加者と研究者の盲検化(blinding of participants and personnel)、転帰評価の盲検化(blinding of outcome assessment)を考慮して評価された。さらに、出版バイアスは、ファンネル・プロットとEggerらの回帰法によって評価された。

エビデンスのレビュー

 文献レビューは十分であった。列挙された29件の参照文献のうち13件(44.8%)は過去5年以内に発表されたものであった。その他の参考文献の発表年は5年よりも前であるが、参考文献はリサーチクエスチョンに合致していた。

 著者は、5つの図と1つの表を発表している。すべての図と表の情報は本文と一致していた。最初の図は、このメタアナリシスに含まれる直腸がん研究の総数とそれらの研究がこのメタアナリシスに関連性を有しているかをどのように評価したかを説明している。関連性がある可能性のある研究はすべて、2人のレビュアーによって、独立してその抄録または全文が精査された。2人のレビュアーのあいだに意見の相違があった場合は、議論によって解決され、コンセンサスが得られた。内訳は以下の通りである。

  • 全部で802件の記録が確認された。
  • 重複している記録を除外した後115件の記録が残った。
  • 80件の記録が除外された(63件は関連性がなかった。7件はケース・シリーズか症例報告であった。10件はレビュー/レター/コメントであった。
  • 35件の全文が入手できた論文が詳細にレビューされた。
  • 17の研究が、RCTでなかったことから除外された。
  • 10件の研究が、結果が不十分なために除外された。

 評価後、8件の研究が残り、それらについてメタアナリシスが行われた。これらの研究に包含された直腸がん患者は合計3,145人であった。このメタアナリシスの表には、メタアナリシスを含めた研究の特徴がまとめられている。2番目の図は、対象となったRCTの質のアセスメントが提示されている。対象となった研究の詳細が提示され、エビデンスの強さ(エビデンスのレベルと質)に対する評価方法は厳格であった。

データ収集

 このメタアナリシスでは、すべての臨床試験について対数ハザード比(HR)とHRの分散が、簡便な評価尺度として使用された。すべての試験について、固定影響モデルまたはランダム影響モデルを使って生存率の95%信頼区間(CI)のHRが導き出され、計算された。統計分析は、ソフトウェア・プログラムを用いて、2人の統計学者によって相互に独立して行われた。臨床試験のうちの1つがデュークス病期分類を報告していたことから、デュークス分類のA、B、C1とC2の両方は、病期別の最終分析への組み入れのためそれぞれ病期I、II、IIIとみなされた。

結果/結論

 研究の結果は明確に説明されている。8件の臨床試験において3年全生存率データが報告されている(3番目の図に示されている)。これらの臨床試験の間には異質性は見られなかった(P=.06)。腹腔鏡下手術群と開腹手術群間の有意差はなかった(HR=0.83、95%CI=0.68-1.01、P=.06)。3年無病生存率のデータが、7つの臨床試験(4番目の図に示される)で報告されている。それらの臨床試験の間に異質性はなかった(P=.16)。腹腔鏡下手術群と開腹手術群のあいだには有意差はなかった(HR=0.89、95%CI=0.75-1.05、P=.16)。病期I、II、IIIにおける3年の無病生存率データは、3つの臨床試験(5番目の図に示される)で報告されている。病期I(P=.23)、病期II(P=.50)、病期III(P=.50)の中で有意な異質性は見られなかった。

 研究者の結論は、研究の結果と一致していた。研究者は、3年生存率について2つの手技間に有意差がなく、腹腔鏡下手術と開腹手術がいずれも、結腸切除の安全かつ有効な方法であると報告した。

制約/将来研究

 研究者は、このメタアナリシスについて検討すべき制約について考察している。まず、術前化学療法 (neoadjuvant chemotherapy)と手術後の化学療法は重要な要素であり、腹腔鏡下手術と開腹手術に対するさまざまな化学療法戦略が長期的転帰に予測できない影響を及ぼすことが考えられることから、それが結果に影響を及ぼす可能性がある点である。第2に研究者は、情報が欠けているため、腫瘍の部位の違いと3年間無病生存率の関係を検出することができなかったと指摘している。特定の部位が手術アプローチに影響を及ぼし、それが臨床試験の間に臨床的異質性をもたらす可能性が考えられる。さらに、外科医の間で技能にばらつきがあった。これも、結果になんらかの影響を及ぼす可能性がある。

評価結果

 「AORN研究エビデンス評価ツール」の「要約」を用いて、この研究は、エビデンスの質をIAとした。

  • この研究のエビデンスレベルのスコアはIとした。これは、この研究がメタアナリシスによるシステマティック・レビューであったからである。
  • この研究のエビエンスの質のスコアはAとした。これは、目的が明確に述べられており、検索戦略に再現性があり、バイアスが生じないようにするための予防措置が講じられており、試験デザインにとって十分なサンプル・サイズを有しており、合理的な程度に一貫した結果を提示し、かなり確定的な結論を導くに至っているからである。
  • I Aというスコアは、ここの研究が、現在得られる最善の研究エビデンスであり、周術期看護師がこのエビデンスを自身の看護実践の指針とみなすことが適切であることを示している。

周術期に対する示唆

 この研究の結果は、腹腔鏡下結腸切除と開腹結腸切除の間に3年生存率の有意差がなく、いずれも安全かつ有効な外科オプションであることを示している。周術期看護師は、開腹結腸切除法と腹腔鏡下結腸切除法が等しく安全であるが、いずれもそれぞれ異なる固有のリスクを伴う独特の外科手技であることを理解すべきである。したがって、患者の権利を守る立場にあるものとして、看護師は患者が手術台で適切な位置に体位を保持固定されることを確保し、外科医がどちらの術式を使用しても、すべての機器が適切に動作することを確保すべきである。

 本論文の評価は、SUNY医療関連職カレッジ(ニューヨーク州ブルックリン)ニューヨークメソジスト病院感染予防部長兼臨床准教授であるGeorge Allen(PhD、MS、BSN、RN、CNOR、CIC)が行った。Dr. Allen からは、本論文発表で利益相反の可能性が生じると認識される恐れのある関係は表明されていない。

監修(注釈): 社団法人日本看護協会 洪 愛子
訳: ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
メディカル カンパニー
コミュニケーション & パブリックアフェアーズ

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