AORNジャーナル12月号(2016)

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*2013年1月号より、AORNジャーナルオリジナル版の様式が変更になり、月1回の更新となります。

手術における3D印刷:最新の外科領域における応用のレビュー I

エビデンス評価スコア VA

(Malik HH, Darwood ARJ, Shaunak S, Kulatilake P, El-Hilly AA, Mulki O, Baskaradas A. ; J Surg Res. 2015;199(2):512-522.)

エディターズノート

 研究論文を読み、有効な研究の成果を業務に取り入れることは、科学的根拠に基づく周術期看護を確保する上できわめて重要です。AORN研究エビデンス評価ツール「AORN Research Evidence Appraisal Tool」は、周術期看護師が研究を評価する上で有用なツールです。エビデンスのタイプの違いに応じて、次の3つの評価ツール「研究エビデンス評価ツール:研究」、「研究エビデンス評価ツール:要約」、「非研究エビデンス評価ツール」が用意されています。これらの評価ツールは、AORNのガイドラインが準拠するエビデンスを評価するために使用されます。また、単一の研究、複数の研究の要約、非研究エビデンスそれぞれのエビデンスのレベルとエビデンスの質を評価するのに使用することができます。本評価ツールのセクションごとに、この研究に対して何故その評価スコアが付されたのか、またそのスコアが周術期看護業務にどのような意味をもつのかを明確に理解できるよう論じています。個々の研究の知見がある特定の状況において価値があり関連性があるかどうか判断する場合には、臨床による判断を行うべきです。この研究の知見を看護業務に取り入れようとする場合には、その原著論文をレビューして個々の看護の状況への適用可能性を判断することが推奨されます。

 外科に関係する医療従事者の間では、手術、その他の侵襲的手技、また職員向けのトレーニングに3次元印刷(three-dimensional printing; 3D印刷と略) が有用であるとの認識、そしてその応用が急速に拡大している。3D印刷は、解剖学的画像およびその他の画像を立体の物体に変換するプロセスである。著者は、既存の文献を博捜することによって、3D印刷の実務の現状を調べた。これは文献レビューであるので、エビデンス評価にはAORN非研究エビデンス評価ツールを使用した。

エビデンスレベル

 この研究は、ある特定のテーマに関する既発表の文献についての要約であり、そのエビデンスの強さと質のシステマティックな評価は行っていない(すなわち文献レビューである)ことから、「AORN非研究エビデンス評価ツール」を用いて「レベルV」とした。

エビデンスの質

 「AORN非研究エビデンス評価ツール」を用いて、この研究は、文献レビューのエビデンスの質「A」に分類した。この分類の根拠は、以下のセクションで説明する。

AORN Research Evidence Appraisal Tool(AORN研究エビデンス評価ツール)

文献レビュー

 この文献レビューの目的は明確に述べられている。その狙いは、現代の外科実務における3D印刷の最新の応用状況をレビューすることにあった。著者は、このテーマの導入として、過去30年間で手術に大きな進歩があったと指摘している。手術は、観血手術から低侵襲手術、さらにロボット手術へと進歩してきた。画期的な発見と研究によって手術は絶えず進歩し、新しい刺激的な領域となってきた。その影響は、外科医だけでなく、周術期看護師、患者、医療機関にも及んでいる。手術が変化する方法の1つは、3D印刷を手技に組み入れる方法である。

 3D印刷が従来使用されていたのは、医療以外の領域、航空学、自動車工学、製品設計などの産業であった。パーツは、試作品としても、実際の部品としても製造されている。これらのパーツは、身の回り品(例えば玩具、装飾品)から大規模な製品にまで及ぶ。3D印刷は、プラスチックや金属のような材料を使用することもできれば、生分解可能材料または細胞の足場材も使用することができる。著者は、誰がこれらの手技を将来使用し、どうすれば、先見性のある臨床医が将来3D印刷について精通するようになるかを決定したいと考えた。現在、3D印刷は依然として複雑で高価である。効果的な実施には多くのトレーニングと技術的知識が必要になる。

 著者は、この文献レビューで62件の論文を挙げている。いずれもこのテーマについての知識を獲得することに関連した論文であり、それらの論文のうち45件はこの文献レビューの公表の5年前以内に発表されている。

 分析の準備として、著者はMEDLINE、Embase、PsycINFOの各データベースを使って電子検索を行った。彼らはOvidSPインターフェースを使用して、PubMed検索エンジンに関連したキーワードを入力した。検索はすべて、著者のうち2人によってそれぞれ独立して実施された。

 使用されたMeSH(メッシュ)用語は、手術のタイプと専門分野(例えば股関節手術、心臓手術、形成手術)に関係していた。1回目の検索後、著者は3D印刷に関連した文言を自由に使用した。2人の独立した著者のあいだに、論文に関して意見の相違がある場合はさらにチェックを行い、2人の意見を一致させた。著者は、付録に検索のアルゴリズム全体を挙げている。

 まず、著者は488件の論文を特定した。著者は重複した論文を除去して、リストを234件に絞り込み、除外基準と包含基準を適用し、最終的に得られたフルテキストの論文総数は93件であった。表と図には、論文の選別プロセスに関してより詳しい情報が提示されている。

 論文の知見の要約に示された著者の結論にはバイアスはないと思われる。著者は、3D印刷が最もよく使用されるカテゴリーとして、解剖的モデル、外科器具、移植片および人工装具、の3つのカテゴリーを挙げている。3D印刷を取り入れるごく初期段階の専門分野もあれば、3D印刷を開拓し、活発に応用が行われている専門分野もある。顎顔面外科、心臓胸部外科、整形外科といった専門分野は、3D印刷の革新と使用において他に抜きん出ているようである。

解剖的モデル

 解剖的モデルが、手術前の計画立案と教育・トレーニングに使用されていることが指摘されている。著者は、デリケートな血管、神経、構造などがどこに位置しているかを外科医が3次元で見ることができることから、事前の計画立案(例えば、神経外科における立案)が有用であると判断した。こうした位置を知ることで、手術時間を短縮し、患者の損傷も低減できると思われる。3D印刷を用いた手術計画は、患者ごとにそれぞれ異なり、その計画が、パフォーマンスの正確さを高める。同じメリットが、顎顔面外科、整形外科、心臓胸部外科の手術前計画でも見られた。手術前に作成されたモデルは手術中に参照するため、滅菌して手術室に持ち込むこともできる。

 解剖的モデルは、教育・トレーニングだけでなくシミュレーションにも役立つ。著者は、外科医に乳様突起切除のトレーニングを行うために新しいシミュレーションを用いた興味深い報告を紹介している。作成されたモデルは導電性材料を使って作成されている。トレーニングを受けている外科医が手術シミュレーションの間、神経に損傷を与えた場合、警報が鳴る仕組みになっている。

器具

 著者は、3D印刷が手術時に使用される機器、ガイド、テンプレートなどの作成にも用いることができることも指摘している。ほとんどの文献が骨切りと下顎再建における使用を反映していたが、3Dプリンターで作成されたガイド器具は、脊髄ネジと再建された膝関節の正確な位置、または、予め定められたポイントで穴をあけるための正確な位置を決定するために使用されていた。このように、著者は3D印刷が、手術時間の短縮と手術結果の向上を可能にするという印象を抱いている。

 具体的な3Dプリンターで作成された器具と移植片についての研究が現在行われている。この文献レビューは、3Dプリンターで作成された患者別の器具が、シミュレーションに基づくロボット支援手術と同等に有効であることを示している。これは将来さまざまな用途に応用される可能性がある。ロボット手術は多額の設備投資が必要となるため、3D印刷技術と手技が完成された後は、ロボット手術よりも頻繁に使用されることも考えられる。

移植片および人工装具

 著者の知見によると、頭蓋手術では、CAD(computer-aided design コンピュータによる設計支援)システムを使って作成したプレートが患者にぴったりと合い、視覚的にもそのほうが好ましいという。バーチャルな鼻や耳を、接着する前に試すことで、より正常なフィッティングが可能になると期待される。胸部手術では、気管支軟化症の小児のために生分解可能な気道副木が開発されている。これによる合併症はなく、3年以内に、副木は完全に吸収された。プリント足場材も開発が進められている。患者の細胞が足場材に浸潤し、その細胞が、さらに移植片に使用することができる。器官や組織の3D印刷はまだ開発途上であるが、著者の知見によれば、フィールドは急速に拡大しつつある。

 3D印刷は、品目や意図されている用途に応じて、さまざまな材料を使って行われている。著者は、ポリカーボネート・テンプレート、チタン・メッシュとナノサイズのヒドロキシアパタイト/ポリアミドなど、3D印刷で使用される材料を数多く挙げている。プリントされた足場材については、海綿由来ポリマー、バイオシリカ、ポリリン酸塩などが使用されている。リン酸テトラカルシウム、硫酸カルシウム、β型リン酸三カルシウムなど、移植片のための新しい複合材料の開発も現在進められている。器官については、methacrylated hyaluronic acidとメタクリル酸ゼラチンを使っているヒドロゲル材の研究が行われている。

3D印刷の限界

 3D印刷の現時点での限界としては、コストおよびこのテクノロジーに必要な時間が挙げられる。主なコストは、ハードウェアとソフトウェアの開発に費やされる時間であり、プリント材料のコストがそれに続く。この論文によれば、3D印刷・ソフトウェアの初期開発に要する費用は13,000ドルから場合によっては40,000ドルにまで及ぶ場合があるという。一部のユーザーは、無料のオープンアクセスのソフトウェアを使って、施設内で対象物をプリンターによって作成することを提案している。一例として3Dプリンターで作成された手術用レトラクターが挙げられている。施設内でのプリンターでレトラクターを作成した場合と、ステンレス鋼レトラクターを購入した場合とでコストを比較した。ユーザーは、1週間にわたって3Dプリンターを使えば、プリンター自体の支払費用が十分節約できると推定している。腎臓手術の場合、他の3Dプリンターで作成したモデルが、バーチャルリアリティーシミュレーターと同程度に正確で、しかも安価であることが指摘されている。

 技術と知識が進歩すれば、それに応じて、コストの制約は克服される可能性がある。現時点では、時間も制約要因となっている。アイテムによっては、プリントするのに、最長24時間がかかる場合がある。プリント時間も、将来改善されるかもしれない。

 3D印刷・プロセスの大きな制約要因は規制当局の承認である。米国食品医薬品局は、現在、3D印刷例を、個々のメリットに基づいて評価している。米国食品医薬品局の医療機器・放射線保健センターは、2013年9月、今後数年間でガイダンスを発表することを計画していると発表した。それを行うための計画が2014年5月に発表された。米国食品医薬品局は、使用する材料の洗浄、再利用、物理化学的特性、必要とされる機械とソフトウェアの点から見たプリントプロセスに重点を置く予定である。

評価結果

 「AORN非研究エビデンス評価ツール」を用いて、この研究のスコアはVAとした。

  • この研究のエビデンスレベルのスコアはVとした。これは、この論文が文献レビューであったからである。
  • この研究のエビデンスの質はAとした。これは、この論文が、よく調査され徹底したものであったからである。
  • VAというスコアは、この論文が研究ではないが、内容が現在の周術期看護に当てはまり、周術期看護の将来にも影響を及ぼすことを示している。

周術期の含意

 この魅力的な論文は、3D印刷が進化した場合の手術の将来像を描き出している。この論文は研究には当たらない文献レビューであるが、著者は適切な文献を見つけ出し、レビューする際にさまざまな配慮と検討を行ったことを示している。著者が行った要約と分析から、今日、この技術の現時点での到達点を知ることができるとともに、将来にとっての含意(例えば移植される臓器全体をプリントするなど)も読み取ることができる。革新的な考えを持つ人々や研究者はこの方向に向かって道を切り開こうとしており、外科領域はゆっくりと、3D印刷が手術室にもたらす変化に対応しようとしている。

 3D印刷が、術前、術中、術後を通じて、医療全体に広がるにつれて、周術期看護師に影響を及ぼす分野が多数出現する。将来の検討には、外科チーム全体に対するトレーニングと教育がどのように変わるかを含めるべきである。術前の計画には、引き続き患者の手術の準備を行う看護師を組み入れるべきである。管理者は、誰が何を行うかを検討する必要がある。たとえば、3D印刷・モデルを使って指示が出される場合、看護師と外科医のどちらがモデルを入手し、使用する役割を担うか?術前の患者教育は、看護師か、医師、アドバンスト・ナース・プラクティショナー、麻酔医のうち誰が行うか?などである。

 今後以下のような問いについて検討を行う必要がある。

  • 移植片と人工装具をどのように滅菌、準備し、手術の現場に提出するか?
  • 移植片と人工装具をどのように記録し、どのような記録が必要となるか?
  • 手術が3D印刷で作成したアイテムを使用する場合、看護師はどのようにして患者の安全を確保するか?
  • 術前のインフォームドコンセントは変化するか?
  • 術後ケアはどのように変化するか?

 これらの問いは、このテクノロジーが手術室に持ち込まれる時点で検討することが必要になる。

 3D印刷は、低侵襲手術と同程度に手術を変える可能性を秘めている。非常に興味深い時代の到来であり、われわれは、3D印刷が周術期プロセスにもたらす恒久的変化の一端に触れ始めたに過ぎない。

 編集者注:Embaseは、エルゼビア社(アムステルダム、オランダ)の登録商標である。MEDLINEとPubMedは、米国医学図書館(ベセズダ、メリーランド州)の登録商標である。Ovidは、オービット・テクノロジー社(ニューヨーク、ニューヨーク州)の登録商標である。PsycINFOは、アメリカ心理学会(ワシントン、DC)の登録商標である。

 本論文の評価は、ナース・コラボレーションズ(テキサス州ベルネ)コンサルタント兼オーナーであるNancy Girard(PhD、 RN、FAAN)が行った。Dr Girardからは、本論文発表で利益相反の可能性が生じると認識される恐れのある関係は表明されていない。

監修(注釈): 社団法人日本看護協会 洪 愛子
訳: ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
メディカル カンパニー
プロフェッショナルエデュケーション

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