AORNジャーナル1月号(2017)

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*2013年1月号より、AORNジャーナルオリジナル版の様式が変更になり、月1回の更新となります。

帝王切開時の予防的抗菌薬へのアジスロマイシンの追加

エビデンス評価スコア IA

(Tita ATN, Szychowski JM, Boggess K, et al.;N Engl J Med. 2016;375:1231-1241.)

エディターズノート

 研究論文を読み、有効な研究の成果を業務に取り入れることは、科学的根拠に基づく周術期看護を確保する上できわめて重要です。AORN研究エビデンス評価ツール「AORN Research Evidence Appraisal Tool」は、周術期看護師が研究を評価する上で有用なツールです。エビデンスのタイプの違いに応じて、次の3つの評価ツール「研究エビデンス評価ツール:研究」、「研究エビデンス評価ツール:要約」、「非研究エビデンス評価ツール」が用意されています。これらの評価ツールは、AORNのガイドラインが準拠するエビデンスを評価するために使用されます。また、単一の研究、複数の研究の要約、非研究エビデンスそれぞれのエビデンスのレベルとエビデンスの質の評価にも使用することができます。本評価ツールのセクションごとに、この研究に対して何故その評価スコアが付されたのか、またそのスコアが周術期看護業務にどのような意味をもつのかを明確に理解できるよう論じています。個々の研究の知見がある特定の状況において価値があり関連性があるかどうか判断する場合には、臨床による判断を行うべきです。この研究の知見を看護業務に取り入れようとする場合には、その原著論文をレビューして個々の看護の状況への適用可能性を判断することが推奨されます。

 妊娠に伴う感染症は、米国だけでなく世界全体で、母体死亡、長期の入院、医療費上昇の主な原因となっている。帝王切開分娩は、妊娠に伴う最も一般的な大がかりな外科手技である。子宮内膜炎と切開感染症を含めた、帝王切開分娩後の手術部位感染症の発生率は、経膣分娩後の手術部位感染症発生率の5倍〜10倍である。これらの術後感染症は、緊急帝王切開分娩(すなわち、分娩時、破水後、または母体または胎児の非常事態への対応として行われる予定外の帝王切開分娩)を経験した女性の12%において発生している。また、すべての帝王切開分娩のうち緊急帝王切開が占める割合は60%〜70%と非常に高い。抗生物質の予防的投与、一般的には皮膚切開前のセファロスポリンの投与が定型的に行われているが、帝王切開分娩後の感染、特に緊急切開を受ける女性における感染は、依然として重大な懸念事項となっている。

 抗菌スペクトルの拡大を目的としたアジスロマイシンベースの予防的投与(標準的なセファロスポリンの予防投与に加えてアジスロマイシンを単回投与する)が、標準的な予防投与に比べて帝王切開分娩後の感染リスクを低減することが、いくつかの研究から示唆されている。このような予防投与の有効性は、帝王切開分娩後の感染症においてよく関連しているウレアプラズマ菌種がカバーされている結果であると考えられている。

 この二重盲検、実用的無作為化比較試験は、皮膚切開前の標準的な予防的抗菌薬投与へのアジスロマイシンの追加が他の母体および周産期の有害アウトカムのリスクを高めることなく帝王切開分娩後の感染症発生率を低減するかどうかを判断するためにデザインされた。これが単一の研究の報告であることから、この研究の評価には「AORN研究エビデンス評価ツール」の「エビデンスレベル:研究」を用いた。

エビデンスレベル:研究

 この研究は、無作為化比較試験であることから、「AORN研究エビデンス評価ツール:研究」を用いて「レベルI」とした。この分類の根拠を以下のセクションで説明する。

介入/操作

 この研究の著者は、介入を実施した。米国の14の施設で妊娠24週以降の単胎妊娠の女性で、分娩時、または破水後に帝王切開分娩を行った対象を2つの投与群のいずれか1つに無作為に割付けられた。

対照/比較群

 患者は、セファゾリンによる標準的な予防的抗菌薬投与に加えてアジスロマイシン500mg添加生理食塩水250mLか同様の外観の医薬品(生理食塩水プラセボ)のいずれかを投与される群に割付けられた。

無作為割付け

 この研究の著者は、参加者を2つの介入群いずれかに無作為に割付けた。著者は割付にコンピュータを用い、またデータコーディネーティングセンターが作成し、施設に応じて層別化されたブロックランダム化計画を使用した。

エビデンスの質

 「AORN研究エビデンス評価ツール:研究」を用いて、この研究は、エビデンスの質「A」に分類した。この分類の根拠は、以下のセクションで説明する。

AORN Research Evidence Appraisal Tool(AORN研究エビデンス評価ツール)

目的/背景

 この研究の目的は明確に述べられており、著者は、リサーチクエスチョンについて何が既知であり、何が未知であるかを述べている。著者の目的は、皮膚切開前の標準的な予防的抗菌薬投与レジメンへのアジスロマイシンの添加が、母体への他の有害アウトカムおよび周産期の有害アウトカムのリスクを高めることなく帝王切開分娩後の感染発生率を低減するかどうかを評価することにあった。この研究は、各病院の施設内倫理委員会の承認を得、独立したデータ安全モニタリング委員会がこの試験を監督した。

 文献レビューは適切であると思われる。参考文献に挙げられている30件の文献のうち、27件(90%)が、5年以上前に公表されたものであることが目を引いた。引用された文献の発表年は古いが、引用されたこれらの文献は、リサーチクエスチョンとの関連性を有するものであった。

無作為割付

 患者は介入群か対照群のいずれかに無作為に割付けられた。被験医薬品を調合した治験薬剤師だけが無作為化アルゴリズムにアクセスでき、無作為化アルゴリズムは、専用の、パスワードで保護されたウェブサイトで維持された。

対照群

 対照群は明確に識別された。介入群は、標準的な予防的抗菌薬投与に加えてアジスロマイシン500mgが静脈内投与され、対照群は、標準的な予防的抗菌薬投与に加えてプラセボの生理食塩水が静脈内投与された。両群は平等に扱われなかった(すなわち介入を除いて)、あるいは、状況の違いによって帝王切開分娩の手技に有意な差が生じたことを示す形跡はなかった。

介入

 介入はリサーチクエスチョンに対応しており、再現を可能にするだけの詳細な説明が報告されている。

サンプルサイズ

 合計4,057人の妊婦がスクリーニング検査を受け、同意を与えた。これらのうち2,044人が分娩時点で除外された。患者除外基準は明確に述べられており、以下の基準から構成されていた。

  • 同意を表明することができない
  • アジスロマイシンに対するアレルギーを有することが既知である
  • 帝王切開分娩後の経膣分娩
  • 無作為化の7日以内にアジスロマイシンを使用した
  • 分娩後の抗菌薬投与を必要とする絨毛羊膜炎またはその他の感染症(ただし、B群連鎖球菌に対する抗生物質の投与を受けている患者は適格である)
  • 胎児死亡、または重大な先天性異常の存在が確認された場合

 研究者は以下の患者も除外した

  • 肝実質の疾患(肝硬変またはアミノトランスフェラーゼ濃度が正常範囲上限の少なくとも3倍)が発生している患者
  • 血清クレアチニン濃度が2.0mg/dL(177μmol/L)超の患者、または血液透析が必要な患者
  • 計画していた無作為化時に下痢が見られた患者
  • 心筋症または肺水腫
  • 構造的心疾患がある妊婦
  • 不整脈
  • QT間隔の延長作用を有することが知られている医薬品の使用
  • 電解質異常(例えば低カリウム血症、低カルシウム血症または低マグネシウム血症)。

 合計1,623人の患者が経膣分娩を経験した。28人に絨毛羊膜炎の発生が見られた。14人が最初に同意を与えた後、参加を辞退した。379人が他の理由で参加を辞退した。合計2,013人の妊婦が無作為化を受けた。1,019人がアジスロマイシン投与群に割付けられ、994人がプラセボ群に割付けられた。患者2,013人というサンプルサイズは、研究デザインに適切であった。著者は、検出力分析を行い、サンプルサイズが2,000人あれば、この研究が、両側検定αレベル0.05で主要アウトカムの33%の減少、新生児の複合アウトカムの30%の減少を検出できる80%の検出力が確保できることを確認した。試験参加者全員についての説明が提示されていた。

データ収集

 著者は、データ収集方法を解説している。執刀の1時間前、基本的に、帝王切開分娩を行うことが決定された後、通し番号の次の順番を付与された治験医薬品バッグを治験スタッフが入手した。治験医薬品は、アジスロマイシンについての米国食品医薬品局が作成したガイドラインに従って、1時間にわたって静脈内投与された。各医療機関の帝王切開手技とケアは、当該医療従事者の通常の手技に従って実施された。有資格研究スタッフが、治験データと他のアウトカムを抽出した。トレーニングを受けた有資格研究スタッフは、治療の割付けに対して盲検化された。研究スタッフは、分娩した病院、分娩後の診療所、救急室、入院科から医療記録を得てレビューすることによって、母体および乳児のアウトカムを確認した。分娩から6週間後に来院する予定を組むか、電話で連絡するかのいずれかによって、母体および乳児の死亡および有害事象が確認された。アウトカムを確認するために、各医療機関に医療記録の提供を求めた。

 分析はすべて、intention-to-treat原則に従って行われた。著者は、カテゴリー変数の分析には、カイ二乗検定またはFisherの正確検定を使用し、連続変数にはStudentのt検定を使用した。各アウトカムに対して相対危険度と95%信頼区間(CI)が計算された。二次分析で著者は、一次アウトカムに対してロジスティック回帰モデルを使用し、無作為化時にバランスがとれていなかった特性について調整を行った。著者は、なんらかの一次アウトカム事象を防止し、95%CIを達成するために治療を受ける必要がある患者数を計算した。著者は、O'Brien-Fleming法を使って、一次アウトカムについて、計画していた中間分析を行った。最終的な分析結果は、P=.048を有意水準として評価された。二次的アウトカムはすべて、P=.05を有意水準として評価された。

結果/結論

 研究には4つの表と1つの図が含まれ、それらは本文と一致していた。表にはそれぞれ、以下の情報が提示されている。

  • ベースラインにおける患者の特性
  • 帝王切開手技の特性
  • 一次複合アウトカムとそれらの構成要素
  • 新生児と母体の二次アウトカム

 図は、患者の登録からアウトカムまでのフローチャートである。

 一次アウトカムは、子宮内膜炎、切開部感染症、またはその他の手術から最大で6週後に発生した腹部骨盤膿瘍、母体の敗血症、骨盤内敗血症性血栓性静脈炎、肺炎、髄膜炎などの感染症の複合とされた。さらに、二次的新生児エンドポイントは、以下の状態の複合とされた。

  • 死亡
  • 敗血症または、以下のその他の合併症が疑われる、またはそれらであることが確認された場合
    • 呼吸窮迫症候群
    • 壊死性腸炎
    • 脳室周囲白質軟化症
    • Grade III以上の脳室内出血

 以下の症状が母体の二次症状とされた

  • 分娩後熱
  • 分娩後の再入院または予定外の来院
  • 分娩後の抗生物質の使用

 この研究のアウトカムは明確に記述されている。アジスロマイシンの投与を受けた62人の女性(6.1%)において一次複合アウトカムが見られ、プラセボを投与された女性では、119人(12.0%)に一次複合アウトカムが見られた(相対危険度[RR]=0.51、95%CI=0.38〜0.68、P < .001)。アジスロマイシンの使用は、子宮内膜炎の有意に低い発生率に関連していた(3.8%対6.1%、RR=0.62、95%CI=0.42〜0.92、P=.02)。同じく、切開部感染症の有意に低い発生率(2.4%対6.6%、RR=0.35、95%CI=0.22〜0.56、P < .001)、ならびに母体の重大な有害事象の有意に低い発生率(1.5%対2.9%、P=.03)に関連していた。新生児死亡および重篤な新生児合併症を含めた二次新生児複合アウトカムの群間の有意差は見られなかった(14.3%対13.6%、P=.63)。

 著者の結論は、研究の結果と一致していた。著者は、緊急帝王切開分娩を経験した女性において、プラセボに比べ、抗菌スペクトルの拡大を目的とした標準的な予防的抗菌薬投与へのアジスロマイシンの追加が、術後感染症のリスク低減にとって有効であると報告している。

制約/今後の研究

 著者は、この研究の制約について考察している。著者は、計画的帝王切開分娩を経験した女性と、分娩時の絨毛羊膜炎に発生した女性を除外したことで、この研究の結論の幅広い一般化可能性が制限されると指摘している。著者は、アジスロマイシンが帝王切開分娩後感染率を低減する機序が依然不明であるとコメントしており、今後研究すべき課題であることを示唆している。

バイアス

 この研究は、潜在的なバイアスに対する予防措置を講じている。有資格の研究スタッフのみが治験データその他の結果を抽出した。トレーニングを受けた有資格の研究スタッフは、投与割付けを知らず、各分娩病院からの医療記録は、研究のアウトカムを検証するためにレビューされた。著者は、研究の助成金と製品の提供を受けたことを明らかにしている。介入の効果が、過大または過小評価されたことを示す形跡はなかった。

妥当性

 治験、アジスロマイシンの投与のための米国食品医薬品局ガイドラインの使用と米国疾病予防管理センター全米医療安全ネットワークの指針に沿った感染の基準の使用を監督するために独立したデータ安全モニタリング委員会を使用したことに示されるように、研究の結果は健全な方法によって得られた。

一般化可能性

 著者は、この研究の結果が、標準的な予防的抗菌薬投与に比べて、広域スペクトル抗菌薬の予防的投与によって帝王切開分娩後感染症のリスクが低くなることを過去の研究の結論と一致していると報告している。しかし、研究者は、この治験の結果を移転し適用できるのは、緊急帝王切開分娩を経験した女性だけであると述べている。上記のように、計画的帝王切開分娩を経験した女性と分娩時に絨毛羊膜炎に発生した女性の除外が、研究の結論の広い一般化に対する制約となっている。

評価結果

 「AORN研究エビデンス評価ツール:研究」を用いて、この研究のスコアはI Aとした。

  • この研究のエビデンスレベルのスコアはI とした。これは、この研究が無作為化比較試験であったためである。
  • この研究のエビデンスの質のスコアはAとした。これは、この研究が、潜在的なバイアスに対する予防措置を講じており、研究デザインにとって十分なサンプルサイズを有し、合理的な程度に一貫性のある結果を提示し、かなり決定的な結論を導いているためである。

 I Aというスコアは、この研究が、公表されている最も優れた研究エビデンスであり、周術期看護師が自身の業務指針としてこのエビデンスを考慮することが適切であることを示している。

周術期に対する示唆

 この研究の結論は、感染のリスクが高い女性の帝王切開分娩に抗菌スペクトルの拡大を目的としたアジスロマイシンベースの予防的投与によって新生児への有害アウトカムのリスクを高めることなく母体の術後感染率と医療資源の使用を低減することができることを示している。この予防法が自身の施設で承認された場合、周術期看護師とマネージャーは、帝王切開分娩の執刀が行われる前に、標準的な予防投与とアジスロマイシンの静脈内投与が適時に円滑に行える用意ができていなければならない。

 本論文の評価は、SUNY医療関連職カレッジ(ニューヨーク州ブルックリン)ニューヨークメソジスト病院感染予防部長兼臨床准教授であるGeorge Allen(PhD、MS、BSN、RN、CNOR、CIC、FAPIC)が行った。Dr. Allen からは、本論文発表で利益相反の可能性が生じると認識される恐れのある関係は表明されていない。

監修(注釈): 社団法人日本看護協会 洪 愛子
訳: ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
メディカル カンパニー
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