AORNジャーナル2月号(2017)

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*2013年1月号より、AORNジャーナルオリジナル版の様式が変更になり、月1回の更新となります。

病院手術室看護師の作業姿勢と予測因子

エビデンス評価スコア IIIA

(Abdollahzade F, Mohammadi F, Dianat I, Asghari E, Asghari-Jafarabadi M, Sokhanvar Z.;Health Promot Perspect. 2016;6(1):17-22.)

エディターズノート

 研究論文を読み、有効な研究の成果を業務に取り入れることは、科学的根拠に基づく周術期看護を確保する上できわめて重要です。AORN研究エビデンス評価ツール「AORN Research Evidence Appraisal Tool」は、周術期看護師が研究を評価する上で有用なツールです。エビデンスのタイプの違いに応じて、次の3つの評価ツール「研究エビデンス評価ツール:研究」、「研究エビデンス評価ツール:要約」、「非研究エビデンス評価ツール」が用意されています。これらの評価ツールは、AORNのガイドラインが準拠するエビデンスを評価するために使用されます。また、単一の研究、複数の研究の要約、非研究エビデンスそれぞれのエビデンスのレベルとエビデンスの質を評価するのに使用することができます。本評価ツールのセクションごとに、この研究に対して何故その評価スコアが付されたのか、またそのスコアが周術期看護業務にどのような意味をもつのかを明確に理解できるよう論じています。個々の研究の知見がある特定の状況において価値があり関連性があるかどうか判断する場合には、臨床による判断を行うべきです。この研究の知見を看護業務に取り入れようとする場合には、その原著論文をレビューして個々の看護の状況への適用可能性を判断することが推奨されます。

 不適切な姿勢は、疼痛、可動性の低下、筋骨格障害などさまざまな身体的問題につながる。最もよく影響を受ける体の部位は、首、背中、肩、膝である。人間工学は、筋肉、神経、血管、靭帯、腱に影響を及ぼす行動に関する研究である。作業姿勢、特に、従業員が長期間にわたりデスクの前に座り、多くの場合反復動作に従事すると思われる事業所での作業姿勢についてこれまで多くの研究が行われている。適切なデスク、椅子その他の人間工学的設備が、これらの業務によって生じる可能性のある姿勢の問題の解決に役立つ。筋骨格障害と疼痛は、作業、生産性、職務の満足に影響を及ぼすことから、さまざまな職業での作業者の姿勢について多くの研究が行われている。

 米国労働安全衛生局は、事業所、施設および個人の正しい人間工学慣行に関するガイドラインを公表している。他の多くの職業も研究されているが、周術期看護師の作業姿勢についての文献はわずかである。この研究の著者は、周術期看護師集団を調査するために、この記述的、分析的、断面研究を計画した。これが単一の研究の報告であることから、この研究の評価には「AORN研究エビデンス評価ツール」の「エビデンスレベル:研究」を用いた。

エビデンスレベル

 この研究は、「AORN研究エビデンス評価ツール:研究」を用いてエビデンスレベルを「レベルIII」とした。これはこの研究が非実験的(すなわち記述的)研究であったからである。この分類の根拠を以下のセクションで説明する。

介入/操作

 この研究では介入も操作もなかった。

対照/比較群

 この研究では対照群も比較群もなかった。

無作為割付

 この研究の著者は、実験的研究の場合のような無作為化は行わなかった。この研究では、クラスターサンプリング法が使用されている。各データ収集病院がそれぞれ別個のクラスターと考えられ、研究者は、それぞれのクラスターの各看護師の個人番号を記録した。次に、研究に参加しなかった一人の人が無作為に数を選んだ。選ばれた数を、看護師リストと照合し、最終的な試験参加者を決定した。

エビデンスの質

 「AORN研究エビデンス評価ツール:研究」を用いて、この研究をエビデンスの質「A」とした。この分類の根拠は、以下のセクションで説明する。

AORN Research Evidence Appraisal Tool(AORN研究エビデンス評価ツール)

目的/背景

 研究者は、この研究の目的を明確に述べている。すなわち、周術期看護師の作業姿勢とこの集団の人口統計および業務の詳細との関係を評価することである。研究者は、周術期看護師の作業姿勢についての文献が欠落しており、したがってそれがこの研究が必要とされる理由であるとしている。

 姿勢の分析は、業務活動の評価方法である。周術期看護師の人間工学に関するこの種の研究は、健康、福祉、患者の転帰にも影響を及ぼす。得られた知見から、周術期看護師の身体的作業条件が把握され、さらに注意を必要とする分野が明らかになることも期待される。

 著者は、2015年1月から5ヵ月間にわたって、この研究を行った。著者は、タブリーズ医科大学から承認され、資金提供を得た。著者は、この研究に参加したタブリーズ教育病院の周術期看護師にも謝意を述べている。

 著者はこの論文で15件の参考文献を引用しており、そのうち4件が過去5年以内に公表されている。レビューされている論文は、この研究に関連性を有している。論文のいくつかは、米国外で実施された研究についての報告であった。看護雑誌または看護関連雑誌の文献はなかった。

無作為割付

 この研究には該当しない。

対照群

 この研究には該当しない。

介入

 この研究には該当しない。

サンプルサイズ

 イランのタブリーズ医科大学教育病院の合計147人の周術期看護師がこの研究に参加した。参加者は2つの総合病院と5つの専門病院(整形外科、皮膚熱傷科、心臓科、婦人科、小児科)のいずれかに所属していた。著者は、確率比例サンプリング法に基づいて、各病院の参加者の数を決定した。著者は、30人の参加者を対象とした予備的研究で看護師の作業姿勢に関する基本的な情報を得た(r=0.318)。著者は、95%信頼レベル、80%検出力および両側検定のためにG*Powerソフトウェアを使用し、最小サンプルサイズを72人の参加者と決定した。さらに研究者は2倍にすることによって、サンプルサイズを計算し、必要な総サンプルサイズを得た(参加者144人)。参加者の年齢は24歳から52歳にわたった(平均34.6歳、標準偏差[SD]6.6歳)。看護師としての経験年数は、延べ2年から28年であり(平均11.2年、SD6.5年)、大部分は女性(80.3%)で、既婚(76.2%)であり、交替制勤務(85.7%)に従事し、定期的な毎日の運動を実施していなかった(85.7%)。

 被験者全員について必要な情報を把握していた。この研究の対象となる看護師の組み入れ基準は、以下の通りであった。

  • 筋骨格の負傷または疾患(手術、脊柱後弯症、脊柱側弯症など)の既往がなく全身状態が良好
  • 看護で準学士以上の学位を有している
  • 少なくとも1年間の手術室での経験

データ収集

 著者は、アンケートと、参加者が作業しているところを直接観察することによってデータを集めた。アンケートは、年齢、性別、既婚か未婚か、学位、毎日の運動習慣などの参加者の人口統計学的な詳細を記録した。アンケートは、職歴、手術室のタイプ、従事している勤務体制、別の仕事または責任を兼務しているかどうか、職務満足、仕事の結果感じるプレッシャーなどに関する項目もカバーしている。

 研究者は、看護師のワークステーションでの作業姿勢を評価するため、迅速全身評価(the rapid entire body assessment:REBA)法を使用した。研究者は、このツールを信頼できる妥当性が確認された観察手法であるとみなし、予備的研究で最初に使用した。REBA法は、さまざまな静的運動、動的運動、急速な変化をともなう運動、不安定な位置に基づく体の部位(首−体幹−脚、上腕−前腕−手首)の姿勢に対して特定の得点を与える手法である。REBAスコアは1点から15点で、点数が高いほど、より姿勢に問題があることを表す。

  • アクションレベル0(スコア1):無視できるリスクで、現在の位置を変更する必要はない。
  • アクションレベル1(スコア2〜3):低いリスクで位置の変更が必要かもしれない。
  • アクションレベル2(スコア4〜7):位置の変更を必要とする中等度のリスク。
  • アクションレベル3(スコア8〜10):位置の変更を必要とする高いリスク。
  • アクションレベル4(スコア11〜15):位置の変更をただちに必要とする非常に高いリスク。

 研究者は、引き抜くあるいは引っ張る動作、セットを移動する、テーブルを準備するという3つの主要な作業時における周術期看護師の作業姿勢を観察した。2人の調査者が、作業姿勢を観察し記録を作成した。調査者は、作業者ごとに別個の評価シートを使ってREBAスコアを記録した。調査者は、κ(カッパ)係数を使ってREBAスコアの評価者間信頼性を評価し、結果は優れた評価者間信頼性を示した。信頼性評価は、引き抜くなどの動作が87.1%、セットを移動する動作が89.1%、テーブルを準備する動作が89.8%であった。

 著者はSPSS 16.0ソフトウェアを使ってデータを分析し、コルモゴロフ・スミルノフ検定を使ってデータの正規性を証明した。記述的統計は、平均、SD、頻度、パーセンテージとして提示された。作業姿勢(REBAスコア)と定量的連続変数(年齢、職歴、シフト数など)、二項変数(性別、毎日の運動の有無、他の仕事の有無など)、マルチカテゴリー変数(学歴レベル、BMIなど)は、t検定、ピアソン相関係数検定、分散分析検定を使ってそれぞれ評価された。P < .1の変数は、主効果モデルで線形回帰分析に組み入れられた。定性的な変数はすべて、マーカー変数として組み入れられた。P < .05が統計学的に有意であると判断された。

結果/結論

 著者は、本文を反映した3つの表を提示し、その本文を補う詳細な情報を伝えている。最初の表はさまざまな作業についてのREBAスコアに基づく人間工学リスクレベルを提示し、2つ目の表は研究変数と研究参加者の作業姿勢の関係を示し、3つ目の表は作業姿勢の予測因子の線形回帰推定値を記述している。

 研究の結果は、明確に記述されている。研究者は、以下の結果を報告している。

  • この研究において評価されているすべての作業(引き抜くあるいは引っ張る動作、セットを移動する、テーブルを準備する)のREBAスコア全体の平均は7.7であり、このことは、周術期看護師が全体としてリスクが高いことを示している。
  • 性別と作業姿勢の間には有意な関係が見られた(REBA法によって評価:P < .01)。女性は、男性よりも不自然な作業姿勢の傾向がみられた。毎日運動した看護師は、他の参加者よりも人間工学的に優れた姿勢を示した(P < .05)。
  • 心臓外科手術室で働く看護師のREBAスコアは、他の参加者に比べて高かった。
  • 年齢と作業姿勢の間には正の関係が見られ(P < .01)、職歴と作業姿勢の間にも同じ正の関係が見られた(P < .01)。
  • 勤務シフト数と作業姿勢の間には負の関係が見られた(P < .001)。

 研究者の結論は、研究の結果と一致していた。研究者は、引き抜きあるいは引っ張る動作時の看護師の作業姿勢には大きなリスク、または非常に大きなリスクが存在すると報告している(62.6%)。セットの移動(55.9%)とテーブル準備(48.3%)時の作業姿勢スコアは、それよりわずかに低かった。

限界/今後の研究

 研究者は、研究が手術室だけに限定されている点を指摘している。研究の結果に基づいて、今後は他の潜在的変数と環境因子を評価する研究と、状況を改善するための方法を比較するより高いレベルの研究を実施すべきである。

バイアス

 研究者は、クラスタリング分析と統計分析を通してバイアスを最小限にした。研究において明白なバイアスは認められなかった。介入はなかった。

妥当性

 妥当性に対する脅威は、妥当性が確認されたREBAツールを使用し、評価者間の信頼性を評価することによってコントロールされた。

一般化可能性

 この研究の結果は、他のどの集団にも一般化することはできない。

評価結果

 「AORN研究エビデンス評価ツール:研究」を用いて、この研究のスコアはIIIAとした。

  • この研究のエビデンスレベルのスコアはIIIとした。これは、この研究が盲検無作為化も、介入も対照もない記述的観察研究であったからである。
  • この研究のエビデンスの質のスコアはAとした。これは、この研究が、研究デザインにとって十分なサンプルサイズを有し、合理的な程度に一貫性のある重要な結果を提示しているからである。
  • III Aというスコアは、周術期状況に対する方針と手順を策定する際、一次エビデンス源も使用されている場合に限り、周術期看護師がこのエビデンスを二次エビデンス源として考慮することが適切であることを示している。

周術期に対する示唆

 研究者によると、周術期看護師のREBAスコアが比較的高いことは、作業条件に問題があることを物語っており、仕事中看護師が維持する姿勢が持続可能でなく、さらなる調査を必要としていることを示唆している。

 研究者の知見は、女性看護師が、男性看護師に比べて、特に心臓外科手術室において、引き抜きあるいは引っ張る動作、セット移動、テーブル準備中に不自然な姿勢を取る傾向がある、あるいは取る必要性が高いことを示している。この研究グループは、得られた知見は、看護実務の正しい人間工学的手法に関する介入および教育プログラムと並んでマネージャーと管理者の教育が必要であることを物語っていると示唆している。変数のなかでも、年齢、性別、手術室のタイプは、作業姿勢の予測因子であった。したがって、筋骨格の症状を低減するための予防措置を実施すれば、周術期看護師の健康を増進することも可能かもしれない。周術期看護師の作業条件の改善と健康の向上につながる可能性のあるこのテーマについてさらに研究を進めていける余地は大きいと思われる。

 編集者注:SPSS16.0は、SPSS社(イリノイ州シカゴ)の登録商標である。

本論文の評価は、ナース・コラボレーションズ(テキサス州ベルネ)コンサルタント兼オーナーであるNancy Girard(PhD、RN、FAAN)が行った。Dr Girardからは、本論文発表で利益相反の可能性が生じると認識される恐れのある関係は表明されていない。

監修(注釈): 社団法人日本看護協会 洪 愛子
訳: ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
メディカル カンパニー
プロフェッショナルエデュケーション

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