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膝の痛みは、どのように治す?
~Case3.変形性膝関節症

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変形性膝関節症は、加齢などが原因で膝関節の軟骨が弾力性を失い、使いすぎによるすり減りや関節の変形が起こる疾患です。進行すると強い痛みなどの自覚症状が出て、QOL(生活の質)が低下するだけでなく、治療の選択肢も限られていきます。そのため、骨質が良い早期の段階で治療を開始することが重要です。ここでは、以下の情報をご覧いただけます。

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1.膝の痛みセルフチェック

変形性膝関節症は、加齢による関節軟骨の質の変化、関節の変形、肥満、膝の外傷、遺伝的な素因などが原因で発症します。初期の段階では、痛みなどの自覚症状はありませんが、進行すると歩行が困難になり、日常生活にも大きな影響が及びます。自身の膝の状態が気になる方は、是非チェックしてみましょう。

膝関節の状態チェック

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出典:日本運動器科学会・日本臨床整形外科学会 疾患特異的・患者立脚型 変形性膝関節症患者機能評価尺度;JKOM(Japan Knee Osteoarthritis Measure)[Ⅱ 膝の痛みやこわばり]より引用

各設問の回答(2)〜(5)に当てはまるものがある方は、変形性膝関節症など膝の疾患がある可能性があります。また、この数日間にこわばりや痛みがなかった場合でも、膝のことで気になることがある場合は、整形外科を受診して膝の状態を詳しく調べてみましょう。

2.変形性膝関節症と関節リウマチの違い

加齢に伴い、膝関節に痛みが起こる代表的なものが変形性膝関節症です。膝関節は、大腿脛骨関節と膝蓋大腿関節が隣り合って存在しています。大腿脛骨関節は、膝の屈伸やひねりに関わる関節で、半月板と呼ばれる特別な軟骨があります。一方の膝蓋大腿関節は、膝を伸ばす際に使う大腿四頭筋と呼ばれる太ももの筋肉の力をスムーズに伝える滑車のような役目をしています。

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関節面はやわらかく、なめらかな軟骨で覆われていますが、年齢とともに軟骨は硬くなり、表面も凹凸になっていきます。膝を動かすことで軟骨がすり減り、骨が関節内にむき出しになることもあり、さらにむき出しになった骨自体が削れてしまうことがあります。このような変化を変形性膝関節症といいます。

変形性膝関節症による変化には、次のような特徴があります。

  1. 膝関節の内側が狭くなって凸凹ができる
  2. 軟骨の下の骨が硬くなる
  3. 骨のとげができる
  4. O脚になることが多い
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◎変形性膝関節症の症状

変形性膝関節症の主な症状は、膝の痛みと水がたまることです。初期は立ち上がりや歩きはじめに膝が痛む程度ですが、進行すると正座や階段ののぼりおりに膝が痛み、末期になると膝をまっすぐ伸ばすことができなくなり歩行が困難となります。

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関節リウマチとの違い

変形性膝関節症と同じように関節が変形する病気に関節リウマチがあります。関節リウマチは、関節内の滑膜と呼ばれる組織が炎症を起こして関節が破壊されてしまう病気です。滑膜は、膝関節をスムーズに動かす潤滑油の役目する関節液を分泌している組織で、関節液には軟骨に栄養を与える役割もあります。滑膜の炎症から始まり、軟骨、骨へと影響が及ぶのが関節リウマチの特徴です。

膝関節に症状が出ると腫れやこわばりが出るほか、痛みが出たり水がたまったりします。また、関節リウマチは全身性の病気のため、微熱や貧血症状、身体のだるさなど、関節以外の症状が出ることがあります。

変形性膝関節症は加齢とともにリスクが上昇するのに対し、関節リウマチは若い人でも発症します。

3.治療の第一選択となる保存療法

変形性膝関節症の治療には大きく分けて保存療法と手術があります。治療は病気の進行度によって選びますが、標準的な治療として、身体への負担が少ない保存療法が第一選択となります。保存療法で改善が望めない場合には手術を検討します。また、新しい選択肢として、PRP療法という選択肢もあります。

運動療法

膝の痛みから歩くことを避けがちになる患者さんもいますが、①定期的な有酸素運動、②筋力強化訓練、関節可動域訓練を継続的に行うことが痛みの軽減や日常生活動作の改善につながることがわかっています。

【太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)の筋力強化訓練】

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太ももの前の筋肉を鍛えたり、ストレッチで関節が動く範囲(可動域)を広げる運動を継続的に行いましょう。有酸素運動には、ウォーキングや自転車、水中運動、負荷の少ないエアロビクスなどがあげられます。また、高齢者の変形性膝関節症の悪化を防ぐためには、週3日以上の有酸素運動が望ましいとされています。

装具療法

歩行時の膝の痛みの軽減するのに役立つのが杖などの装具です。片側の膝が痛むときには反対側の手で杖を、両側の膝が痛むときには車輪付きの歩行器などを使用するなど、患者さんの状態に合わせて選びます。歩行時に足裏にかかる負担をやわらげるために足底板や膝関節装具をつくることもあります。

熱療法

変形性膝関節症の患者さんに対し、痛みの緩和を目的に、温熱パックを使った温熱療法や皮膚の表面から痛みを感じない程度の電流を流して刺激を与える経皮的電気刺激療法(TENS)などを行うことがあります。

薬物療法

薬物療法には大きくわけて内服薬、外用薬、注射薬があります。これらを組み合わせて痛みを抑え、炎症を鎮めることで症状を緩和します。

内服薬痛みや炎症を抑える作用のある非ステロイド性消炎鎮痛薬、解熱鎮痛薬など。これらの薬を使っても痛みが緩和されない場合には、オピオイドや麻薬系鎮痛薬などの強い鎮痛効果のある薬が使われることもある
外用薬非ステロイド性消炎鎮痛薬などの貼り薬や塗り薬(皮膚から痛みや炎症を抑える成分が吸収される)
注射薬炎症を抑える作用があるステロイドやヒアルロン酸の関節内注射

4.保存療法で改善が望めない場合の治療法

保存療法で改善が望めない場合や痛みが強く日常生活に支障をきたしている場合には、一般的には手術による治療を検討します。手術には、関節鏡視下手術、高位脛骨骨切り術(HTO)、人工関節置換術があります。

また、外科的手術による治療以外にもPRP療法という選択肢もあります。

PRP療法

自分の血液から専用の装置を使って分離した多血小板血漿(PRP)を注射する細胞療法のひとつです。PRPには血小板由来の成長因子などが含まれており、組織を修復したり、痛みを緩和したりする作用があると言われています。現在は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」により、基準を満たし、届出を行った医療機関において自由診療のもと行われています。

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PRP療法の詳細はこちら

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関節鏡視下手術

主に痛みを取り除くことを目的とした手術で、変形性膝関節症の初期症状の緩和に有効とされています。膝に小さな穴を開けて関節内に入れたカメラから患部の状態を確認しながら、傷ついた半月板や炎症を起こしている組織、骨のとげ(骨棘)などを取り除きます。


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高位脛骨骨切り術(HTO)

膝周囲骨切り術にはいくつかの方法がありますが、もっとも一般的なものが高位脛骨骨切り術(HTO)です。

脛の骨の一部を切ることで骨軸(角度)を調整し、痛みを引き起こしている原因を取り除きます。軟骨がある程度残っている初期から中期序盤の選択肢となる手術とされています。


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人工関節置換術

変形性膝関節症が進行し、中期から末期に至った場合の選択肢となるのが人工関節置換術です。痛みやこわばりの原因となっている軟骨や骨の表面を削り、人工膝関節に入れ替える最終的な治療法です。

人工関節置換術の詳細はこちら


変形性膝関節症は、早期から治療を開始することが重要です。痛みを放置せず、整形外科を受診しましょう。

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膝の痛みに関するその他の疾患

膝の痛みは、どのように治す?〜Case1.前十字靭帯損傷

膝関節は大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)、膝蓋骨(膝のお皿)の3つの骨で構成されています。大腿骨と脛骨がグラグラしないように前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靱帯、外側側副靭帯の4つの靭帯でつながっています。

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膝の痛みは、どのように治す?〜Case2.半月板損傷

半月板損傷は、膝関節内にある半月板に亀裂が生じたり、欠けたりした状態です。若年者から高齢者まで発症し、慢性化すると変形性膝関節症を引き起こす可能性もあるため、適切な診断と治療が重要です。

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