患者さんがよく抱く気になる質問にお答えします。
手術の直前に飲食することは避けてください。
また、ヘルニア手術を受けるにあたっては、患者さん自身の安全を守るため、以下のことに気をつけて下さい。
ヘルニア手術にはどんなものを使うのですか?
「人工補強材」というものが使われると聞いたのですが?
ヘルニア手術では、人工補強材を使用した手術も行われています。
人工補強材はやわらかいメッシュ状のシートで、体への安全性が確認されている素材で出来ています。ヘルニアの出口をふさぐ目的で使用されますが、術後のつっぱり感や痛みが少なく、ヘルニア再発が起こりにくいとも言われています。それでは、どのように人工補強材が使われるのか、実際の手術で見てみましょう。
(1)麻酔
原則として腰椎麻酔または硬膜外麻酔という半身麻酔下で行います。これらは全身麻酔と違って、手術部位の感覚をとるだけなので、患者さんの意識には影響を与えません。
(2)皮膚の切開
下腹部の皮膚を5~7cm程度切開します。
(3)ヘルニア嚢の処理
ヘルニア嚢を他組織と分けたあと少し切開し、小腸などの内容物をお腹の中に戻します。次に、ヘルニア嚢を根元でしばったあと切除し、端をお腹に戻します。
(4)周辺組織の補強
ヘルニアが再び出てこないように、弱くなった箇所に人工補強材をはめ込みます。人工補強材はヘルニアの出口をふさぐとともに、お腹の内側を平面で覆い、弱くなった組織を補強します。
人工補強材を体に入れても、違和感はないのですか?
シートの一部が時間とともに体内で吸収される半吸収性のメッシュもあり、吸収性素材を用いていないメッシュより、術後の異物感や疼痛の軽減が期待されます。
上図の矢印部分は、70%の吸収性素材と30%の非吸収性素材で編成されています。これにより手術中は患部へのメッシュの挿入操作がやりやすく、手術後は約70%の素材が術後約120日で体内に吸収されるので、術後の異物感や疼痛を軽減でき、自然なフィット感を期待できます。
ヘルニア手術をした後、スポーツをしてもかまいませんか?また、手術後に気をつけなければならないことがあれば教えてください
ヘルニア手術後は医師の指示があるまで、スポーツをしたり重いものを持つことは控えるようにしましょう。手術の後には、その他にもいくつか気をつけていただきたいことがあります。
手術後について
麻酔が覚めるに従って腰や足がだるくなってきます。また麻酔の影響で頭痛・吐き気などの症状が出る場合もあります。徐々に症状はなくなってきますが、心配な場合は医師に相談してください。また呼吸しにくい、尿が出ないなどの症状がある場合も医師に相談してください。
痛みがあるとき
痛み止めを使用します。それでも我慢ができない場合は医師に相談してください。
傷の処置
できるだけ清潔に保つようにしましょう。
再発・合併症について
手術をして合併症を起こしたり、組織の老化などによりヘルニアが再発することもあります。手術した所に異常を感じたり、腹痛や、お腹がはったり、発熱がある時はすぐに医師に申し出てください。
手術後の日常生活
退院後は便通を整えるようにしましょう。便が出ないときは便通をよくする薬を使用することもあります。離床や入浴は医師の指示に従ってください。ヘルニア手術の場合、退院後は通常の日常生活や仕事を行えるようになりますが、医師の指示があるまでスポーツや重たいものを持つのは避けましょう。
成人鼠径ヘルニアにはさまざまな手術があり、人工補強材を使用した手術も行われています。人工補強材を用いた手術は、術後の痛みが少ない、短時間で終わるなどとも言われています。
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