2011年3月11日に発生した東日本大震災の被災地で、今なお学校に行けない子どもたちがいることを知っていますか。津波などのPTSDで家から出ることができないのです。NPO法人マザーリンク・ジャパンは被災地で不登校の子どもたちと親の支援を続けてきました。
被災地の現状や企業の社会貢献のあり方について、マザーリンク・ジャパンの寝占理絵代表と、ジョンソン・エンド・ジョンソンの製薬部門であるヤンセンファーマに所属し、JCI(Japan Community Impact)というJ&Jの社会貢献委員会のマネジャーを務めていた伊藤佐和が被災地への継続的支援について対談しました。
ジョンソン・エンド・ジョンソンは今回、gooddoという社会貢献プラットフォームを通して、この記事を最後まで読んでくださった方一人につき20円、合計で100万円をマザーリンク・ジャパンへ寄付するキャンペーンを行います。「被災地の今」を知り、支援の輪を広げませんか?(文中敬称略)
※クリック募金は終了しました。現在は行っておりません。
1. NPO法人東京マザーリンクの取り組み
・自身もシングルマザー 震災直後に宮城へ
・小1で被災 家から出られない… 5年間不登校に
・岩手にフリースクールをつくりたい
2.ジョンソン・エンド・ジョンソンの社会貢献活動
●自身もシングルマザー 震災直後に宮城へ
――寝占代表は、震災直後から被災地に入り、ひとり親世帯や里親家庭の支援を続けています。マザーリンク・ジャパンの設立のきっかけや取り組みを教えてください。
寝占 「私は東京でウェブの制作会社を経営していました。私自身シングルマザーで、仕事をしながら娘を育ててきました。
震災の数日前に娘が20歳の誕生日を迎え、子育てが終わったとほっとした矢先に、東日本大震災が発生したのです。
これまで子育てする中で、近所の方など周りにすごく助けられた。だから『今度は私が手を差し伸べる番だ』と考え、被災地に向かいました。岩手県陸前高田市、大船渡市、宮城県気仙沼市の仮設住宅で計約7800世帯を対象にひとり親家庭と里親家庭の調査を行い、食糧を配ったり、個別の相談を受けたりといった支援を行いました」
伊藤 「『何かしたい』と思うことと、行動に移すことは別のステージですよね。私も寝占さんとお話をさせていただく中で、ゼロからイチを生み出す寝占さんの行動力に共感し、当時JCIマネジャーとして是非サポートしたいと思っていました。不登校の子どもの支援は何がきっかけだったのでしょうか」
●小1で被災 家から出られない… 5年間不登校に
寝占「毎月、100世帯ほどの仮設住宅のひとり親家庭を回る中、学校へ行っていない子が多いなという印象はありました。2015年に仮設住宅に住む方から『ひとり親家庭でお子さんがいるから行ってあげてほしい』と教えていただき、訪ねると小学1年生で被災して以来、5年間登校できていないというお子さんがいたのです。
本来、学校に行っていれば同じ年頃の子どもの中で成長している期間、学校に行きたいのに行かれない子どもがいることを知り、いたたまれない気持ちでした。同時に震災によるPTSDで学校へ行けなくなった子どもが数多くいることを知りました。学校にスクールカウンセラーはいるのですが、支援の手が足りていなかった」
伊藤 「東京と被災地を往復して支援を続けてきたのですか」
寝占 「最初は東京と宮城を往復していましたが、仮設住宅に入れていただいたことで、長く支援を続けることができました。6年半暮らしましたが、東京との往復生活が続いていたらもたなかったでしょう」
これまで子育てする中で、近所の方など周りにすごく助けられた。だから『今度は私が手を差し伸べる番だ』と考え、被災地に向かいました。
●母親を通じて自己肯定感を育てる
――どのように不登校の子を支援しているのでしょうか。
寝占 「私たちのメソッドは、直接子どもに働きかけるのではなく、母親の心のケアを通し、支援するのが特徴です。不登校に悩む子は愛着障害の問題を抱えている子も少なくありません。お母さんもまた同じ問題に悩んでいるケースが多い。
『学校に行きなさい』、『学校に行かなくてもいい』ということは言いません。お母さんの抱える悩みに耳を傾け、ケアをしながらアドバイスします。面談後、1カ月間ほぼ毎日、メールのやり取りを通して子どもへの接し方をアドバイスします。お母さんがアドバイス通りに子どもに実践して、3週間ほどたつと自ら学校へ行くお子さんが多いです。」
伊藤 「お母さんを通じて自己肯定感を育てていらっしゃるのですね」
寝占 「はい、不登校は家族で解決することもできます。親を対象にしたセミナーを開くと同時に、支援者の養成講座も行っています」
●従業員のビジネススキルを提供 NPOの運営サポート
――伊藤さんは、ジョンソン・エンド・ジョンソンで長く社会貢献活動をリードしてきました。
伊藤 「ジョンソン・エンド・ジョンソンが企業理念として掲げる『我が信条(Our Credo)』の中には地域社会に対する責任が明記されていて、社会貢献への思いが込められています。
役員秘書として入社した当時からボランティアに参加してきましたが、ある時『社会貢献活動を支える仕組み』を整えることも大事だと気付いたのです。そこで2009年末からJCI(Japan Community Impact)という社会貢献部門に有志従業員として参加し、2014年からマネジャーに就き仕組み作りを行いました」
寝占 「東日本大震災をきっかけに企業の支援が広がりましたが、それ以前から取り組まれていたのですね」
伊藤 「はい、震災の時もすぐに現地入りすることは難しい状況でしたが、できることをやろうと社内で呼び掛けるとたくさんの手が上がり従業員の思いを感じました。JCIは当時、有志リーダーが10人ほどでしたが2015年にはリーダー、メンバー含め約100人に増え、年間で100近いボランティアプログラムを行っていました。」
役員秘書として入社した当時からボランティアに参加してきましたが、ある時『社会貢献活動を支える仕組み』を整えることも大事だと気付いたのです。
――寝占さんは、マザーリンク・ジャパンの運営についてどのような点が課題だと感じていますか。
寝占 「今、岩手県で不登校を経験した子どもを支援するサポート校をつくる取り組みを進めています。多くの支援をいただき、音楽室は完成しました。ただ、本校舎の工事などは進んでおらず道半ばです。クラウドファンディングで資金を募っていますが、やはり大変です。完成には時間がかかりますが、必ず形にします」
伊藤 「2019年から従業員のビジネススキルを活用し、NPOの組織基盤を支援する取り組みを始めました。例えば組織成長に伴う運営体制について、プレゼンテーションのストーリーの組み立てやスライドの作り方といったナレッジの共有です。こうした取り組みも活用していただければと思っています」
寝占 「大賛成です。NPOの活動を続けていくために企業の方に団体運営自体にかかわってもらうのは人手やスキルが潤沢ではない私たちにとっては大変ありがたいです。より多くの企業に私たちの活動を知ってもらうことは重要ですので、私たちもスクールの運営理念を明確にし、活動を理解してもらえる取り組みを続けます」
ジョンソン・エンド・ジョンソン X gooddoについて
ジョンソン・エンド・ジョンソンは社会貢献として、非営利団体(NPO等)への支援を行っています。特に、身体やこころ、社会の健康をテーマとし、長期的な視点で社会課題の解決に取り組む非営利団体を支援しています。
その一環として2021年は、社会貢献プラットフォームであるgooddoとパートナーを組み、下記の3団体を支援します。「クリック募金」と呼ばれる仕組みを通して、支援対象団体の記事を最後まで読んでくださった方一人につき20円、合計で100万円を支援します。
オペレーション・スマイル
途上国の「口唇列・口蓋裂」の子供たちの修復支援を行う非政府組織。口唇裂・口蓋裂は、上口唇(うわくちびる)の皮膚や筋肉、口蓋、上あごに裂(裂け目)が生じた先天性の疾患。
NPO法人 東京メンタルヘルス・スクエア
心の悩みを抱える人に対して、低価格のカウンセリング(オンライン・対面・電話)や、無料の電話やSNSを通して相談を実施するNPO法人。
NPO法人マザーリンク・ジャパン
2011年の東日本大震災を機に、被災地の子どもや子育て中の家族の支援をスタート。現在は首都圏と東北の2拠点で子どもの貧困対策、引きこもりや不登校などに焦点をあてて活動を行うNPO法人。
※記事の内容は掲載当時のものです
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