心房細動とは、心房といわれる心臓の上の部屋が小刻みに震え、十分に機能しなくなる不整脈の1つです。心房細動の症状として、どきどきする動悸がしたり、めまいや脱力感、胸の不快感を感じたり、呼吸しにくい感じがしたりすることもありますが、自覚症状のない方もたくさんいらっしゃいます。加齢にともなって起こりやすくなるといわれていますが、働き盛りの若年の方にも起こり得る不整脈です。
心臓には、右心房・右心室・左心房・左心室とよばれる4つの部屋があり、それぞれがポンプの働きをしています。心臓が正常に動いている場合、右心房にある洞結節(どうけっせつ)から心臓を動かすための命令(電気信号)が規則正しく出され、房室結節(ぼうしつけっせつ)を通して心臓全体に伝わり、心臓がポンプの役目を果たします。心房細動は、異常な電気が洞結節以外から発生して心房全体が無秩序に興奮する状態です。信号が左心房の一部などから発生したり、心房の中で回り続けたりしています。心室の動きも不規則となり、拍動が通常より増加し、1分間に100回~150回程度となります。心房細動が起こると、ポンプの力が低下し、血液が心房の中でよどんでしまいます。そのため、血のかたまり(血栓)ができやすくなります。この血栓が脳に運ばれると、脳梗塞を引き起こします。
1. 心原性脳梗塞(しんげんせいのうこうそく)
脳梗塞は、脳の血管が狭くなったり、つまったりして、脳に酸素や栄養が送られなくなるため脳の細胞が損傷してしまう病気です。特に、心房細動では、大きな血栓が脳まで運ばれて心原性脳塞栓症を引き起こすことがあります。心房細動が引き起こす心原性脳塞栓症では、他の脳梗塞よりも広い範囲の脳がダメージを受けるため、特に予防が肝心です。
2. 心不全
心不全になると、疲れやすくなる、動くとすぐに息が切れる、足のむくみなどの症状が出て、放っておくと少しずつ悪化し、日常生活に支障が出てきます。だからこそ、早めに見つけて、しっかり治療や予防をしていくことがとても大切です。
心房細動の治療には、心房細動を起こしやすい病気や原因の改善、心房細動自体を抑える薬の投与や、根治を目指すカテーテルによるアブレーション治療、また脳梗塞の原因となる血栓を予防するために血液をさらさらにする薬剤の投与などがあります。
心房細動を起こしやすい病気やリスク因子:
高血圧、糖尿病、心筋梗塞、僧帽弁疾患(そうぼうべんしっかん)、甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)、慢性腎臓病(まんせいじんぞうびょう)、加齢、メタボリック症候群、飲酒など
心房細動は適切に治療を行えば、症状を抑えるだけでなく、根治の可能性があります。適切な検査を受け、早期に治療することで、生活の質(QOL)の向上を目指しましょう。
心房細動の治療法には、大きく分けて「薬による治療」「カテーテルアブレーション治療」の2つのアプローチがあります。それぞれの目的や治療法について解説いたします。
心房細動があると、心房内でよどんだ血液が原因でできた血栓が脳に運ばれ、心原性脳塞栓症を引き起こす危険性があります。この血栓ができないように薬(抗凝固薬(こうぎょうこやく))を内服する必要があります。
以下の病気やリスクに当てはまる項目が多い方は血栓ができやすいといわれています。1つでも当てはまるものがあれば抗凝固薬が推奨されます。症状などを医師に相談しながら、適切な治療を受けましょう。
心房細動における心原性脳塞栓症リスク項目
*その他のリスク:心筋症、65歳から74歳、血管疾患 など
*抗凝固薬にはダビガトラン リバーロキサバン 、アピキサバン、エドキサバン、ワルファリンがあります。(2024年12月現在)
カテーテルアブレーションとは?
カテーテルアブレーション治療は、薬による心房細動の治療を行っていても、再発を繰り返してしまう患者さんや、症状が強い方が適応になります。
*心房細動が数年間以上続いている方や左心房が大きくなっている方、80歳以上の高齢の方は適応にならないことがあります。
カテーテルアブレーションについて
カテーテルアブレーションのなかでも心筋焼灼術(しんきんしょうしゃくじゅつ)は、異常な興奮の原因となる電気信号がでる部分の心臓の筋肉(心筋)に、電極カテーテルを使い熱で心筋組組織を変性させ(焼灼)、無秩序な電気信号を抑える治療です。
PFA(パルスフィールドアブレーション)について
PFA(パルスフィールドアブレーション)とは、従来、高周波によって心臓の組織を焼灼(しょうしゃく 熱で組織を変性させる)することで行っていたカテーテルアブレーション(経皮的カテーテル心筋焼灼術)を、短時間の周期(パルス)で電圧をかけることで組織選択的に行う新しい手法です。いくつか治療があるなかでも、熱的影響に依存しないPFAを用いているのが特徴であり、ターゲットとする心筋細胞のみを組織選択的にアブレーションすること、また、熱に依存しない技術により、心臓周辺臓器への損傷を抑え、合併症低減をサポートすることが期待されています。
心房細動の治療には様々な選択肢があり、患者さんの症状や状態によって異なります。医師と相談しながら適切な治療を受けましょう。
カテーテルアブレーション治療の後、退院してからも定期的な外来受診が必要となります。血栓ができることを抑えるため、しばらくの間は抗凝固薬(こうぎょうこやく)や必要なお薬が処方されます。自己判断で中断せず、医師と相談しながら薬の内服を忘れないよう注意することが肝心です。
*なかには処方の必要がなくなる方もいらっしゃいます。
退院後も再発予防のため、普段の生活を改善し、健康な生活を心がけることが大切です。
高血圧などの生活習慣病がある方は、食事、運動、喫煙などの生活習慣を見直しましょう。例えば、肥満がある方は、ウォーキングなどの運動を生活に取り入れたり、食生活の改善を行う、アルコールは心房細動が再発しやすくなるためしばらくは控える、など様々な生活習慣の改善があります。