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婦人科の病気:子宮内膜症

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子宮内膜に似た組織が増殖してつらい月経痛や不妊症の原因に

子宮内膜症は、20~30代の女性に多い病気※1で、月経がある人の約10%※1にみられるといわれています。その原因は明らかになっていません。

 

子宮内膜症ってどんな病気?

子宮内膜症は、子宮内膜に類似した組織が子宮内腔以外で増殖する病気です。月経は25~38日周期で起こり※2、女性ホルモンの働きで子宮内膜は厚くなりますが、このとき、 子宮内膜に似た組織も増殖してしまい、月経時に子宮内腔以外で出血し、炎症が起こります。これが痛みや周辺組織との癒着を引き起こすといわれています。

子宮内膜症が卵巣にできた場合、卵巣の中に血液が溜まっていき、袋状ののう胞ができます。溜まった血液がチョコレートのように見えることから、チョコレート嚢胞(のうほう)と呼ばれます。

 

【子宮内膜症ができやすい場所】

 

骨盤子宮内膜症

子宮は骨盤内にあり、その表面は腹膜でおおわれています。骨盤子宮内膜症は、子宮漿膜などの骨盤内の腹膜や直腸と子宮のすき間(ダグラス窩)、卵管、卵巣などにできやすいことがわかっています。

 

稀少部位子宮内膜症

子宮内膜症は、さまざまな場所にできるのも特徴のひとつです。子宮内膜症が発生しやすいのは、卵巣、子宮支帯、ダグラス窩、腹膜などの骨盤内が多く、これ以外の場所に発生した子宮内膜症を稀少部位子宮内膜症といいます。発生する場所としては、腸管、腟、尿管、膀胱、鼠径部、臍部、胸腔などがあります。

 

子宮内膜症の症状

主な症状は月経痛ですが、痛みの強さと病気の重さは必ずしも一致しません。子宮内膜症が広がっていても痛みがない場合や、小さい範囲にとどまっていても痛みが強い場合があります。このほか、組織の癒着に伴う症状がみられることもあります。

 

月経痛

月経時には、剥がれ落ちた子宮内膜を血液とともに体外に排出するため、子宮筋が収縮します。このとき、プロスタグランジンという筋肉の収縮作用を持つ物質が分泌されます。子宮内膜症があると、その部分からもプロスタグランジンが分泌され、子宮筋が過度に収縮して強い痛みとなります。

【子宮内膜と月経による痛みの原因】

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骨盤痛(下腹部痛、腰痛、性交痛、排便痛)

骨盤内の臓器に癒着が生じると、月経時以外でも下腹部や腰が慢性的に痛んだり、性交時や排便時にも痛みを感じたりすることがあります。

 

不妊症

子宮内膜症により、癒着が原因で卵管の通りが悪くなったり、受精や着床に悪影響を及ぼしたりなど、さまざまな要因で妊娠しにくくなると考えられています。

 

子宮内膜症の治療法

子宮内膜症の症状を軽減するための治療法には、薬物療法と手術療法があります。薬物療法では根治が難しく、手術療法でも妊孕性を温存すると再発しやすい病気ですので、治療が必要と判断された場合は、医師と一緒に症状の重度、妊娠・出産の希望、年齢を考慮しながら、治療方針を決めましょう。

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薬物療法

対症療法とホルモン療法があります。ホルモン療法は排卵を抑制して症状を緩和しますが、排卵を抑制することになるため、すぐに妊娠を希望する人には選択しません。
すぐに妊娠を希望する場合は、痛みがなければ妊娠を図ります。自然妊娠に至らなければ、一般不妊治療、体外受精などの生殖補助医療を行います。一方、痛みが強く対症療法のみでは日常生活に支障がある場合や、一般不妊治療により妊娠に至らず生殖補助医療を希望しない場合は、骨盤内環境を改善するために手術を選択することが多くなります。現在、不妊治療は条件つきで保険診療となっています。

対症療法:月経痛を軽くする鎮痛剤を使って症状をやわらげます。イブプロフェン、アセトアミノフェン、ロキソプロフェンなど市販の鎮痛薬で疼痛が改善しなければ、より強い鎮痛剤や鎮痛を補助する薬剤を使用します。

ホルモン療法:排卵を抑制するさまざまな薬剤を使用することで、月経痛の改善を図ります 。手術前に一時的に行うこともあります。妊孕性温存手術の後は、妊娠を希望するまで、再発予防にホルモン療法を継続するのが一般的です。

 

手術療法

妊孕性温存手術(子宮内膜症病巣除去術):妊孕性(にんようせい、妊娠するための力)を維持しなければならない場合、子宮内膜症病巣のみを取り除き、子宮および卵巣を温存します。卵巣チョコレート嚢胞の場合、大きさや症状などにより手術適応かどうかを判断します。「開腹手術」と「腹腔鏡手術」があります。

 

【腹腔鏡手術】

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根治手術:子宮内膜症を根治するために子宮と両側子宮附属器(卵巣・卵管)を全て摘出する手術です。術後に妊娠を望まない場合、加齢により卵巣機能が低下している場合、根治を目的に行われます。病状によっては、子宮や片方の卵巣は温存することもあります。

 

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※1 日本産科婦人科学会:子宮内膜症
https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=9

※2 日本産婦人科医会:女性の健康Q&A
https://www.jaog.or.jp/qa/youth/qashishunki5/

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