卵巣にできた腫瘍のうち、良性であたかも風船に水が溜まったような腫瘍を卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)と言います。卵巣腫瘍の80%~90%は卵巣のう腫であると考えられていますが、良性と悪性の鑑別が難しいこともあるため、きちんとした検査を受ける必要があります。
卵巣はホルモンを分泌し、毎月排卵するため、細胞分裂が盛んに行われています。そのため、卵巣は腫瘍が多発しやすい場所の一つとされています。
卵巣は約2~3cm程度※1で、子宮の左右にひとつずつあり、卵子が発育する場所です。脳と連携してホルモン分泌を調整する器官でもあります。
卵巣のう腫は、腫瘍のなかに何が溜まっているかによって、4つに分類されます。
【卵巣のう腫の種類】
卵巣のう腫は小さいものの場合、症状はほとんどありません。ただし、のう腫が大きくなると、何らかのきっかけで卵巣の根元がねじれてしまう茎捻転を起こすことがあります。茎捻転を起こすと激しい痛みが起こります。
卵巣のう腫が見つかっても、悪性の疑いがなく、小さいもので、症状が無い場合は治療をしないこともあります。その場合、腫瘍の大きさを定期的に経過観察します。一般に5-6㎝以上の場合は手術を勧められることが多い傾向があります。
定期観察には、超音波検査が用いられます。MRI検査が行われることもあります。画像検査では良性か悪性かどうかを100%診断することはできません。そのため、診断を確定する必要がある場合は、手術により組織を採取し、病理組織検査を行います。
腟の中やおなかのうえから超音波検査のためのプローブ(探触子)を当てて卵巣の状態を見ることで、のう腫の大きさや状態を確認することができます。
CTやMRIなどの画像検査を行うことで、卵巣腫瘍の状態をより詳しく調べることができます。良性腫瘍なのか、悪性腫瘍なのかの予測や、のう腫の種類などを診断する際に行われます。悪性の可能性があるかどうかを調べるために、さらに腫瘍マーカーなどを行います。
確定診断や治療が必要と判断された場合は、手術療法を行います。医師と一緒に年齢、妊娠希望の有無、症状、腫瘍の大きさや種類を考慮しながら、治療方針を決めましょう。
手術の方法には、開腹手術と腹腔鏡手術があります。
腹腔鏡手術は腹部に小さな穴を数ヶ所開け、ひとつの穴からは腹腔鏡(内視鏡の一種)を挿入し、中の様子をモニター画面に大きく映し出しながら、別の穴から挿入した器具で腫瘍のみもしくは付属器(卵巣と卵管)を取り除きます。腹腔鏡手術は、患者さんの身体への負担も軽いため、早期退院が可能です。
腹部を8〜10cm切開して腫瘍のみもしくは付属器(卵巣および卵管)を取り除きます。
現在では多くの卵巣のう腫の手術は腹腔鏡手術によって行われていますが、のう腫が大きい場合などはおなかを開いて取り除く開腹手術が行われることもあります。
※1 日本産科婦人科学会:卵巣腫瘍
https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=12
※2 日本婦人科腫瘍学会:卵巣腫瘍
https://jsgo.or.jp/public/ransou.html