子宮筋腫は、子宮にできる良性の腫瘍で、とくに珍しい病気ではありません。原因ははっきりしていませんが、女性ホルモンの影響で腫瘍が発育すると考えられています。筋腫の大きさや個数は人それぞれです。
子宮は、子宮内膜、子宮筋層、漿膜という3つの層でできています。このうち、子宮筋層の組織がこぶのように変化したものが子宮筋腫です。子宮のどこに筋腫ができるかによって、いくつかの種類に分けられます。
子宮筋腫の主な症状は、月経痛や過多月経です。筋腫が大きくなると、便秘、頻尿などの症状がでることがあります。一方で、自覚症状がなく健康診断で貧血が指摘されて、それをきっかけに見つかることもあります。
月経は、女性ホルモンの影響で周期的に厚くなる子宮内膜が、妊娠しないと剥がれ落ちて体外に排出されるものです。しかし、子宮筋腫によって子宮内膜が引き伸ばされると月経量が多くなり、体外に排出するために過度の収縮が起こります。これが痛みの原因となります。
月経量には個人差がありますが、出血量が増える、月経期間が8日以上になるなどの変化がみられた場合は過多月経の可能性があります。特に粘膜下子宮筋腫では月経時に剥がれ落ちる子宮内膜の面積が広くなり、過多月経になります。月経時以外の出血(不正出血)が起こることもあります。
子宮筋腫があることで過多月経になると、毎月の月経によって鉄欠乏性貧血を起こしやすくなります。
筋腫が大きくなると直腸や膀胱が圧迫され、便秘や頻尿になることがあります。また、骨盤が圧迫されて腰痛が出る人もいます。
子宮筋腫があっても小さくて無症状であれば、特に治療は必要ありません。定期的に検査を受けて筋腫が大きくなっていないかを継続的に確認しましょう。治療が必要な場合には患者さんの症状や子宮筋腫の状態、年齢や妊娠・出産を希望するかどうかなどによって治療法を選択します。治療法には大きくわけて薬物療法と手術療法があります。
腟の中やおなかの上から超音波プローブ(探触子)をお腹から当てて子宮内の状態を調べます。腟内に細長いプローブを入れる経腟法は、小さな筋腫や粘膜下子宮筋腫の診断に適しています。筋腫が直径10cm以上の大きなものの場合は、おなかの上から行う経腹法で行うことがあります。
MRI検査は、強力な磁石と電波で磁場を発生させたトンネル状の装置を使い、身体の内部の断面をみる画像検査です。大きな子宮筋腫は子宮肉腫(悪性腫瘍)との区別が難しいこともあるため、子宮内の状態を画像で確認し、子宮肉腫が疑われるかどうかを判断するために行われます。
対症療法:月経痛を軽くする鎮痛剤や貧血を治療する鉄剤を使って症状をやわらげます。
偽閉経療法:排卵を抑制して女性ホルモンの分泌を抑えることによって、月経を止める方法です。 GnRHアナログ(ホルモン剤)には注射薬と点鼻薬(GnRHアゴニスト)、経口薬(GnRHアンタゴニスト)がありますが、副作用があるため長期間使用することはできません。手術前に貧血の治療が必要な場合や、筋腫を小さくして切除しやすくするために一時的に使用することもあります。
子宮筋腫核出術:子宮筋腫だけを取り除く手術で子宮を温存します。筋腫の種類、大きさ、位置などによって、子宮を温存できるかどうか判断します。手術の方法には「開腹手術」「腹腔鏡手術」「子宮鏡手術」があります。
子宮全摘術:子宮をすべて取り除く手術です。卵巣が働いている場合はホルモンを分泌する卵巣は残し、子宮のみを摘出します。しかし、卵巣に異常が見つかった時は卵巣も取り除くことがあります。子宮を摘出するので、筋腫が再発することはありません。手術の方法には「開腹手術」「腹腔鏡手術」「腟式手術」があります。
腹部を8〜10cm切開し、子宮筋腫あるいは子宮を取り除きます。
腹部に小さな穴を数ヶ所開け、ひとつの穴からは腹腔鏡(内視鏡の一種)を挿入し、中の様子をモニター画面に大きく映し出しながら、別の穴から挿入した器具で子宮筋腫または子宮を取り除きます。傷が小さく、痛みの少ない手術で、回復までの時間や入院期間が短くすみます。
子宮筋腫核出術で、子宮内に子宮鏡という器具を入れて、電気メスで筋腫を削り取る手術です。粘膜下筋腫の多くは、子宮下に切除することができます(大きさや発生位置よっては子宮鏡手術が難しいこともあります)。
子宮筋腫核出術:粘膜下筋腫が子宮口から腟へ飛び出す筋腫分娩がある場合は腟式手術で切除することがあります。
子宮全摘術:腟から手術器具を入れ、お腹を切らずに子宮を取り除きます。
※1 日本産科婦人科学会:子宮筋腫
https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=8