病気や怪我のために手術が避けられなくても、「できるだけ傷あとを残したくない」と考えるのはどんな年齢、性別の患者さんにも通じる願いかもしれません。「傷あとが目立つから」と服装や活動の選択肢が狭まることはQOL(生活の質)の低下につながり、患者さんの心の負担となってしまうこともあります。ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニーは、外科手術の治療成績を上げるとともに、術後QOLの向上を目指して、傷あとを目立たなくする縫合方法の啓発や、皮膚用接着剤の開発に力を入れています。
手術のために切開した皮膚を塞ぐ方法はさまざまです。縫合糸を使った縫合以外に、医療用ホチキスと呼ばれるステイプラー、皮膚用接着剤、皮膚用テープがあり、傷の場所、大きさや深さなどに応じて選択されます。このときの縫合用具の選択が、「傷あとが目立たない手術」を実現するうえで非常に重要なポイントとなります。
現在、傷あとを目立たなくする縫合方法として普及しているのが「真皮縫合」という方法です。皮膚は、表皮・真皮・皮下組織の3層構造になっていますが、表皮の下の真皮を縫い合わせると、縫い目や結び目が皮膚の内側に隠れて目立たなくなります。真皮縫合に使用するのは、時間がたつと身体に吸収されて抜糸が不要な合成吸収性縫合糸です。皮膚用接着剤は皮膚に塗るとしなやかなフィルム状になって傷口を保護し、時間が経てば、自然にはがれ落ちます。当社ではこの真皮縫合の普及にも取り組み、傷あとが目立たない手術で患者さんのQOL向上をサポートしています。
縫合糸は、ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニーにとって歴史の長い製品の一つです。1886年に創業した翌年、当時としては画期的だった消毒済み縫合糸を発売して以降、材質や製法を工夫し、手術部位や患者さんの状態に最適な合成吸収性縫合糸、および合成非吸収性縫合糸を開発してきました。
特に、真皮縫合に用いられる合成吸収性縫合糸は、縫ったあとに発揮される傷口を閉じる力(残留抗張力)や吸収期間などが傷の回復過程に影響を及ぼします。患者さん一人ひとりの創部の状態に応じた縫合糸の選択がきれいな縫合を可能にし、それが傷口からの細菌感染を防ぐことにもつながります。
また縫合糸は、動きの大きい関節などと、動きの小さい顔や首、乳房、胸部や腹部などでは求められる機能が異なり、用途や目的に応じた選択が必要です。当社では、治療成績と患者さんのQOLの向上を目指す医療現場の思いにきめ細かく応えるために、豊富な製品ラインナップを揃えています。
手術で病気を治す、機能を改善することができたにもかかわらず、「傷あとが目立ってしまうことで日常の活動や趣味などに前向きになれない…」、そんな患者さんを一人でも減らし、術後の人生をより豊かなものにして欲しい―。これが長年にわたって縫合糸などの開発をリードし、傷のトータルケアを目指す当社の願いです。