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ストーリー
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第16回ヘルシー・ソサエティ賞

現場の声に耳を傾け、地域社会を変えてきた人たち
── 医療・教育における先駆者を讃える「ヘルシー・ソサエティ賞」

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2020年で16回目の開催となった「ヘルシー・ソサエティ賞」。健やかな地域社会の実現と人々の生活の質の向上(Quality of Life)を目指し、献身的に活動する方々を称える目的で、公益社団法人 日本看護協会とジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループによって2004年に創設された。

「ヘルシー・ソサエティ賞」では、ヘルスケア・教育活動の最前線で指導的役割を果たし、地域社会に貢献した人々を表彰する。

例年、受賞者のほか、政府関係者や科学者、有識者など各界から多数の来賓が会場に集い授賞式を行っていたが、コロナ禍の今回は、新型コロナウイルス感染症対策のため、初めてのオンラインでの開催となった。

授賞式は、2020年11月11日に執り行われ、安全対策を実施のもと、受賞者のみ会場に集い、オンラインで中継された。開催時には各受賞者の活動を紹介したドキュメンタリー映像が上映され、同映像は、第16回「ヘルシー・ソサエティ賞」受賞記念サイト内の「バーチャル展示室」で視聴することが可能だ。

コロナ禍において、様々な現場の最前線で活動する人たちに一層注目が集まるいま、今回の「ヘルシー・ソサエティ賞」受賞者の活動とともに、彼らがなぜ活動に取り組むのか、その想いを知ってほしい。

第16回「ヘルシー・ソサエティ賞」授賞式 受賞者ダイジェスト映像

※受賞記念サイト内から「バーチャル展示室」の閲覧が可能

「健やかな地域社会の実現を目指して」指導的役割を果たす先駆者たち

今回も全国から寄せられた推薦候補者の中から、教育部門、ボランティア部門、医師部門、医療・看護・介護従事者部門、パイオニア部門の5部門から、合計7名の受賞者が決定した。

[教育部門]人間の心を癒す医療教育を|磯部光章氏

教育部門では、公益財団法人 日本心臓血圧研究振興会附属 榊原記念病院 院長、 東京医科歯科大学 名誉教授、日本学術会議 会員の磯部光章(いそべ ・みつあき)氏が選出された。

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磯部光章氏

磯部氏は、全国に先駆けて教育現場への模擬患者の導入を始め、社会経験のある学生を模擬患者とするシステムを導入し面接実習を行う新しい教育手法を開発。また多くの公開講座を企画、講演し、精力的に市民教育・啓発活動を行い、患者会での情報共有にも力を注いできた。

受賞式のセッションで、磯部氏は、「医学教育はこの20年で多くの改革がありました。しかし、いざ教育現場でやろうとすると本来の意味を失われてしまうことも多い。結局は個別の現場で工夫をしながら情熱をもつことが大事だと学びました」と、これまでの挑戦を振り返る。

今後の取り組みについて、磯部氏は、次のように語った。

「私はいまも循環器医療の現場で働いていますが、この現場は技術の進歩がめまぐるしい。これは歓迎すべきことですが、若い医者は病気を治すことを中心に考えてしまい、医療のもつ本来の目的である『人間の心を癒すこと』が疎かになりがちです。わたしはそれを今後も臨床の現場で教え続けたいです」

[ボランティア部門(国際)]教育を受けられない6,000万人の子どもたちに学ぶ喜びを|市川斉氏

ボランティア部門(国際)からは、公益社団法人 シャンティ国際ボランティア会 ミャンマー事務所長の市川斉(いちかわ・ひとし)氏が選出された。

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市川斉氏

市川氏は大学時代のボランティア活動から国際協力NGO、シャンティ国際ボランティア会(SVA)に参加。アフガニスタンでは初代所長として事務所設立に携わり、戦禍で荒れ果てた地域での教育復興支援の礎を築いた。

阪神・淡路大震災など国内外の緊急救援活動にも大きく貢献し、NGO・外務省定期協議会の連携推進委員として基盤づくりにも尽力。現在は海外の現場に復帰し、過酷な状況下でミャンマー事務所長として教育協力活動に取り組む。

市川氏はこれまで体験した困難を次のように振り返る。「アフガニスタンで緊急救援をしたとき、命の危険にさらされながら活動できたのも、仲間や地域の方のおかげです。彼らと一緒に活動する中で、さまざまな困難を乗り越えることができました」

市川氏はこれからの活動について「いま世界で6,000万人の子どもたちが教育を受けられない状況です。彼らに学ぶ喜びを知ってほしい。そのためにはこれからの教育支援を地道にやっていきたいと思います」と語った。

[ボランティア部門(国内)]難病を知ってもらうために奔走|河村進氏

ボランティア部門(国内)で選出されたのはNPO法人 骨形成不全症協会 理事長の故 河村進(かわむら・すすむ)氏。河村氏は2020年7月に逝去されたため、授賞式には息子の河村進吾(かわむら・しんご)氏が登壇した。

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河村進吾氏

進氏は、自身も骨形成不全症(OI)という先天性の骨の難病を持つ重度身体障がい者で、長年ボランティアとして、難病患者や障がいを持つ方へのサポート活動を行ってきた。1994年にOIの情報発信と患者同士の交流の場として立ち上げた「ネットワークOI」は、2003年にNPO法人骨形成不全症協会に発展。国際的なOIの患者団体や研究者と幅広い交流を実現してきた。

父の遺志を引き継ぎ、現在、同協会の代表を勤める進吾氏はこれまでの進氏の困難を次のように言う。

「骨形成不全症は2万人に1人といわれる病気です。この病気をサポートするために、国や行政を動かすには、仲間を集めないといけません。父は全国から力になってくれる人を募ることに奔走していました。そしてその父を支えてくれたのはみんなの熱意や想いでした」

進吾氏はさらに、「父は年に1回総会を開きface to faceのコミュニケーションを図ってきました。現在は難しい状況ですが、これをチャンスと捉え、オンラインで広くこの病気を知ってもらう活動を続けていきたいです」と抱負を述べた。

[パイオニア部門]世界中の褥瘡をゼロに|真田弘美氏

パイオニア部門では東京大学大学院 医学系研究科附属 グローバルナーシングリサーチセンター 教授・センター長の真田弘美(さなだ・ひろみ)氏が選出された。

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真田弘美氏

真田氏は、1998年、多職種が協働する科学的エビデンスに基づいた褥瘡(じょくそう)のチーム医療を確立するべく、日本褥瘡学会を設立。褥瘡とは、寝たきりなどによって、体重で圧迫されている場所の血流が悪くなったり滞ることだ。

真田氏が開発した画期的な褥瘡治癒過程の評価法「DESIGN-R®」は、現在6カ国語に翻訳され世界の褥瘡対策にも貢献。また、2017年には日本初の異分野融合看護学研究機関である「東京大学グローバルナーシングリサーチセンター」を設立。初代センター長としてケアイノベーション開発研究、看護システム開発研究を推進し、次世代の看護学研究者の育成にも力を入れている。

真田氏は、「30年前に産学連携でエアマットレスをつくりました。褥瘡で苦しむ患者さんが必要なマットレスをつくるために、さまざまな企業を回りましたが当時は相手にされませんでした。それでも諦めずに実現できたのは、担当者に患者さんに会っていただき、その様子を直に見ていただいたからです。現場を見ることで変化していきました」と、当時を語る。

さらに真田氏は、今後のビジョンを2つ掲げる。

「まずは褥瘡をゼロにすること。日本は褥瘡が世界で一番少ない国ですが、世界の褥瘡をゼロにしていきたいです。2つ目は、コロナ禍により、いままでの看護観をガラッと変えていかないといけません。24時間の支援も難しい転換期のなかで、リモートナーシング、AIナースのシステムを作っていきたいと思います」

[パイオニア部門]革新的ながん研究で病態解明を|宮野悟氏

同じくパイオニア部門で選出されたのは、東京医科歯科大学 M&Dデータ科学センター センター長・特任教授、東京大学 名誉教授の宮野悟(みやの・さとる)氏。

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宮野悟氏

宮野氏は数学とスーパーコンピューターをがん研究に融合するという着想で文部科学省新学術領域「システムがん」を創設。「骨髄異形成症候群(MDS)の原因遺伝子の解明」(Nature 2011)など、多数の顕著な成果を挙げてきた。また、東大医科学研究所ヒトゲノム解析センターの計算機リソースを世界最高レベルに整備し、生命科学研究のコミュニティーに提供している。

「もう忘れてしまいました」と、これまでの困難を尋ねられると宮野氏は微笑みながら答えた。「数学出身のぼくは妄想を実現しようと走って行っただけ。恩師である九州大学総長で計算機科学者である有川節夫先生が『できないことを妄想する、ある意味で捨て石になる生き方もある』と仰っていて、その言葉に救われました」

宮野氏は今後について「捨て石は船の進路を決めるときに、石を投げて、どんな困難があるのかを見極めるものです。わたしはそういう捨て石になりたいと思っています」と述べた。

[医療・看護・介護従事者部門]「あなたに会えて良かった」と思える命に|樋口千惠子氏

続いて、医療・看護・介護従事者部門で選出されたのは、NPO法人 たんがく理事長の樋口千惠子(ひぐち・ちえこ)氏だ。

expand 第16回ヘルシー・ソサエティ賞|樋口千惠子氏

樋口千惠子氏 ※リモートでの授賞式参加

樋口氏は、30年にわたり久留米市の保健師として活動。介護保険制度や在宅医療資源がない時代から地域医師会との連携を図りながら終末期ケアを実践してきた。定年前に退職し「NPO法人たんがく」を立ち上げ、久留米市初のホームホスピス「たんがくの家」のちに看護小規模型居宅介護事業「上村座(かんむらざ)」を開所。

樋口氏はこれまでを振り返り「いま地域で活動ができているのはとても幸せなことです。私がやっているのは過去の集大成に過ぎません。久留米市で働いていたときも、それ以降も地域で協力する大きな力があります。こういう恵まれた環境でいまの事業が推進できています」と、感謝を述べた。

今後は、「ホームホスピスをご利用のみなさま、職員、地域の方と『あなたに会えてよかった』という存在する意味を、刹那、刹那に重ねていきたい。そうすることで、存在する意味や、持って生まれた命をまっとうできるのではないかと思います」と述べた。

[医師部門]最後まで笑って生きるための在宅医療|小笠原文雄氏

医師部門からは医療法人 聖徳会 小笠原内科・岐阜在宅ケアクリニック 理事長・院長、日本在宅ホスピス協会 会長の小笠原文雄(おがさわら・ぶんゆう)氏が選出された。

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小笠原文雄氏

小笠原氏は、在宅医療の質の向上に多大な貢献をし、住み慣れた地で最期まで健やかに暮らせる地域包括ケアシステムを開発。ケアマネージャー資格を持つ看護師をTHP(トータルヘルスプランナー)と名付け、2008年にTHPケアシステムを構築。開発した情報共有アプリTHPプラス(THP+)は、患者・家族の生活の質の向上に役立っている。またTHPを近隣のかかりつけ医と連携するなどした。

小笠原氏は「在宅医療は、これまで1人暮らしの方が受けるのは難しいものでしたが、THPのシステムを確立することができ、多くの方が在宅で最後まで“笑って”生きることができました」と、活動を振り返る。

今後について、小笠原氏は「在宅医療だと国の医療費が1兆円程度浮くと言われています。これを日本全国に広めるためには、医師、看護師たちが協力して助けあう必要があります。アプリなどを使うことで、みんなのスキルをアップさせて広めていけたら」と話した。

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福井トシ子氏

現場の最前線で活躍し、社会に貢献する先駆者たちを知ってもらうために

国内外において医療・教育の現場において活躍されている7名が表彰された「ヘルシー・ソサエティ賞」。

今後、同賞は社会のなかで、どのような存在や意義をもつものになるのだろうか。授賞式終了後にジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループ コンシューマー・ヘルス・ジャパン 代表 マリオ・スタイン氏と、日本看護協会 会長の福井トシ子(ふくい・としこ)氏に話を伺った。

福井氏に、この賞がもつ社会的な意義を尋ねると、「ヘルシー・ソサエティ賞は、推薦者が広く世界中に目を配り、厳正なる審査をすることで、受賞者を決めています。この賞がなければ、日本人がこのように世界中で活躍していることは、おそらく誰にも知られることはないと思います」と語る。

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マリオ・スタイン氏

スタイン氏は「福井会長の話した通り、世界で素晴らしいアクションを起こしている人を、一般の人に知ってもらうことは大事なこと。そして、彼らの活動をサポートすることが私たちの役割だと思っています。毎年受賞者のストーリーを聞いて感動しますし、自分たちも頑張らなければならないという刺激を受けます」と語った。

福井氏は、「すべての状況に対し、柔軟に対応していきたいと思います」とコロナ禍での姿勢を語り、「今回のオンライン開催においても、オンラインだからこそできた取り組みもありました」と、現状をポジティブに捉えていると話す。

今回の授賞式の中継では、リアルタイムで受賞を祝う数多くのコメントが寄せられた。これまでの対面でスピーチをする形式だった授賞式に比べ、参加者の反応を直で感じることができた。

「医療従事者以外の一般の方に伝えることができるチャンスになったと思います。ピンチをチャンスに変えることができたのではないでしょうか」と、福井氏は今回の授賞式を振り返る。

スタイン氏も同様に同授賞式への期待を寄せた。「コロナ禍となり、ヘルスケアの必要性が高まっています。そういう状況下だからこそ、この賞がさらに重要になってきます。これまでの受賞者は、多くのイノベーションを起こしてきました。今後、この賞が医療従事者を目指す方のモチベーションになってくれたら嬉しいですね」

現在、日本はコロナ禍により看護職に光が当たっている。福井氏が「これからは看護の仕事を広く社会により一層伝えていくことが、人々の健康につながります」と話すように、「ヘルシー・ソサエティ賞」をきっかけに、「医療現場で何が起きているのか」を知る人も多いだろう。若い世代に向けて、発信していくことが、ひいてはそれぞれの健康につながる。医療においても、多くの人に「伝えること」は急務とされているのだ。

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なお、第16回ヘルシー・ソサエティ賞 「バーチャル展示室」はこちらから閲覧が可能となっている。ぜひ、今回受賞された先駆者たちの活躍や取り組みをその目で確かめてほしい。