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DE&I

湘南のアーティストが描く突き抜けた1枚 国際障がい者デーに考えるそれぞれの個性

12月3日は国連が定める国際障がい者デーです。かねてよりダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)に取り組むジョンソン・エンド・ジョンソンでは、ADA(Alliance for Diverse Abilities)という有志社員のグループが障がいのある人のアトリエ/福祉施設 嬉々!!CREATIVEに所属する栗田佳子さん、そしてファッション企業のアダストリア社とコラボし、ある一枚のTシャツを作りました。制作のきっかけは、「〝今日の当たり前〟を変えていくために、誰もが快適に、そしてファッションを楽しめるように」というメンバーの想いでした。

迷いのないダイナミックな線 栗田さんが描く鮮やかな世界

東京から電車で約1時間、神奈川県平塚市に栗田さんが通うアトリエ「嬉々‼CREATIVE」はあります。アトリエは障がい者支援施設で、10代から60代までの人が通所しています。

10月下旬、ADAメンバーでTシャツプロジェクトのメンバーの一人である吉田実穂は完成したTシャツを持ってアトリエを訪ねました。

自身がデザインしたトラが大きくプリントされたTシャツをそっと手にとった栗田さん。数回小さくうなずいた後に「うれしい」とつぶやきます。

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嬉々‼CREATIVEの栗田佳子さん

今回Tシャツを制作したジョンソン・エンド・ジョンソンのADAは疾患や障がいの有無に関わらず、個性を認め合いながら仕事ができる環境を目指し、社内外で勉強会やイベントを開いて活動しています。

プロジェクトの始まりは、ADAメンバーの障がい者アーティストを支援したいという気持ちでした。しかしプロジェクトを進めていくにつれて、「障がい者だからではなくアーティストとして唯一無二の独創的な世界観を描く方を応援したい」と気持ちが変化していったと吉田は話します。

「栗田さんの創り出す世界観は、人の心を惹きつけ、わし掴みする魅力があり、とても多彩で素敵な世界でした。障がい者だからではなく、障がいの有無にかかわらず、栗田さんにしか描けない、栗田さんが創り出す独自の世界にいざなう瞬間に立ち会えました。」(吉田)

Tシャツ制作にはもう一つの理由がありました。それは誰もが楽しめる衣服の制作への想いです。障がい者のなかには、衣服の選択肢が少ない方もいる。そんな声を聞いたADAメンバーは『誰でも』ファッションを楽しめるようなインクルーシブな環境づくりに貢献したいと考えました。そして、障がいを持つ当事者のヒアリングを社内で重ね、Tシャツを制作しました。


家族も驚いた栗田さんの意外な才能 創作活動が仕事になった

栗田さんは知的障がいがあり、高校卒業後からこのアトリエに通い始めました。平日の午前10時から午後4時まで絵を描いたり、粘土で造形物をつくったりと創作活動に取り組んでいます。創作活動に限らず、栗田さんはダンスや音楽など幅広いことに関心を持っています。

「とにかくダイナミックです。勢いがあって線に迷いがない。色を載せる線画の段階で非常に迫力があります」。栗田さんの絵の特徴について社長の北澤桃子さんはこう表現します。アトリエには栗田さんが原色を使って描いた作品が飾られています。

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栗田さんがアーティストとして活動を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

高校を卒業する前、栗田さんはどんなことが自分に向いているのか、母親と一緒に複数の社会福祉施設に見学や体験に行ったといいます。見学した施設の中で唯一、栗田さんが「ここがいい」と言ったところが「嬉々‼CREATIVE」の前身となる団体でした。

嬉々‼CREATIVE副社長の中尾大良さんによると、栗田さんの母親は最初、娘が細かい作業に向かないのではないかと心配していたといいます。

「でも実際にものづくりにトライしてみたら、ダイナミックな絵が描けることに気付きました。お母さんは『こんな才能がうちの子にはあったんだ』と初めて気付いたそうです」(中尾さん)

自身が描いた絵が展示会で高く評価されたり、似顔絵を描いてもらった人が喜んだり、こうした反応を見て、栗田さんは少しずつ創作活動が自分の仕事だと認識するようになっていきます。


誰でも楽しめるインクルーシブなTシャツとは?

今回のADAのプロジェクトでは、100を超えるアーティストの作品の中から、社員の投票で栗田さんが描いた「トラ」の作品が選ばれました。栗田さんの強くて可愛いトラを書きたいという気持ちがシンプルにつたわったとADAのメンバーは話します。

Tシャツ制作にあたってコラボレーションしたのがファッション企業のアダストリア社です。アダストリア社は、「Play fashion!」をミッションに掲げています。インクルーシブファッション=「Play fashion! for ALL」と考え、障がいの有無などに関わらず、すべての人が着やすい服づくりと、自由にファッションを楽しんでいただける機会を創出することに力を入れています。ジョンソン・エンド・ジョンソンの医薬品部門ヤンセンファーマも慢性の皮膚疾患である乾癬の認知向上を目指したファクトファッションプロジェクトを行っており、両社には「衣料×医療」で共通点があることも今回のコラボレーションのきっかけでした。

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右から、嬉々‼CREATIVEの社長の北澤桃子さん、アーティストの栗田佳子さん、ヤンセンファーマ(ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループ)吉田実穂、アダストリア社の大谷知加子さん

実はこのTシャツには、アダストリア社ならではのインクルーシブな〝仕掛け〟があります。

今回制作に関わったアダストリア社員の大谷知加子さんは「インクルーシブデザインとして、”着やすい”と”便利”なギミックを入れました。またファスナーは開閉し易い樹脂製のファスナー。引手には、ファスナーと触れた時にカチカチと音が出ない、シリコン製のものを使いました。」と話します。

例えば首元から斜めにつけた2本のファスナー。ファスナーの先端には指を引っ掛けやすいようにリング状のひもがつけられています。

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リング状のひもは身体的な障がいがある人がファスナーを開けやすくする工夫です。ファスナーがあることで、開けることで首がつまらず着やすくなるため、肢体に不自由がある場合でも両面で開くことができます。

また、Tシャツの生地はコットン素材を採用し、肌が敏感な人も着やすいよう配慮しました。加えて、タグがTシャツの中に無いため、皮膚疾患がある人にも配慮したデザインになっています。

デザインのコンセプトについて、Tシャツプロジェクトメンバーの丸山加奈は障がいや疾病がない人にも着やすい「インクルーシブなTシャツ」にしたかったと話します。

「ファスナーをつけることで障がいがある人だけではなく、乳幼児がいる女性が授乳する時や、メガネをかけている人が着替える時などを想定しました。また、サイズをワンサイズにすることで過剰在庫を抱えず環境にも配慮しました」(丸山)

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ADAでこのTシャツプロジェクトに関わる吉田実穂(左)と丸山加奈(右)

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栗田さんの作品

ADAでは今後〝今日の当たり前〟を変えていくというADAの“ビジョンを反映するものとして、このTシャツを活動する際のユニフォームとして使用します。丸山は「部署を超えたメンバーと疾患や障がいについて学ぶことで視野が広がっています。勉強会やイベントを通して社内外の方に取り組みと成果を発信していきたいです」と話しています。

企業や個人、私たち一人一人が起こす小さな行動が大きなうねりとなり、個性を認め合える社会の実現に近付いています。

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