働く世代に多くみられる疾患の一つであるIBD(炎症性腸疾患)患者さんの中にも、このような悩みを抱えていらっしゃる方もいらっしゃいます。
そんなIBD患者さんに寄り添いたいという気持ちから、ジョンソン・エンド・ジョンソンの医薬品部門であるヤンセンファーマでは、「ワークシックバランス」という考え方を提唱し、仕事と病を両立させるヒントを紹介しています。今回はその取り組みについて、ご紹介します。
Q:
ワークシックバランスはどういう取り組みなのでしょうか?
「ワークシックバランス」とは、病を抱えながら働く人が、周囲の理解を促しながら仕事と病との調和をとり、病があっても自分らしい働き方を選択できることを目指す考え方で、2020年に「IBDとはたらくプロジェクト」の一環で提唱しました。
「IBDとはたらくプロジェクト」とは、2019年5月にNPO法人IBDネットワークおよび難病専門の就労移行支援事業を行う株式会社ゼネラルパートナーズの協力のもと、ヤンセンが立ち上げたIBDの疾患啓発活動です。IBD患者さんが難病を抱えながらも「自分らしくはたらく」ことを後押しするとともに、社会への理解促進を通じて「働きやすい就労環境作り」に取り組んでいます。
Q:
IBDとはどのような病気なのでしょうか?
IBDは、主に潰瘍性大腸炎とクローン病を指し、未だ原因が特定されていない国の指定難病です。小腸や大腸の粘膜に慢性の炎症を引き起こし、長期に渡って寛解期(症状のない時期)と再燃期(症状が出ている時期)を繰り返す特徴があります。患者様のなかには、適切な治療で症状を抑えることができれば、病気になる前のような生活を送っていらっしゃる方もいらっしゃいます。
Q:
なぜIBDとワークシックバランスなのでしょうか?
2016年3月時点の国内のIBD患者さんは約29万人(潰瘍性大腸炎約22万 人、クローン病約7万人)(*1)といわれ、潰瘍性大腸炎は20代(*2)、クローン病は10~20代(*3)で発症することが多く、働き盛りの世代に多くみられます。
IBDには「おなかが痛くなりやすい」や「トイレの回数が多い」という、この疾患を抱えていない人にも生じる特徴があり、症状が目に見えないことや、腸の疾患であることから周囲に伝えにくいことなどが、周囲の理解を得にくい要因の一つとなっています。また、難病というと、命に関わる病気、社会生活が営めなくなる病気というイメージがありますが、IBDは、根治療法のない病気ではあっても、ただちに命に関わる病気ではありません。
ヤンセンは2020年10月に全国の就労中の男女1000人を対象に「仕事と病の両立」に関する実態調査(*4)を行いましたが、通院が必要な持病を持ちながら働く人316人の回答から、仕事による治療への影響、持病による仕事内容への影響、周囲への影響が約20~30%の割合で存在することが明らかになりました。またIBDの患者さんは、それぞれの影響が他の持病の患者さん全体と比較して、相対的に割合が高い結果となりました。
一方、持病を抱えて働く人のうち「職場の上司や同僚・人事に持病のことを詳しく伝えている人は、2~3割に留まっています。
- 職場の上司や同僚・人事に持病のサポートを相談しにくい…27%(IBD:45%)
- 職場の上司や同僚・人事に持病のサポートを相談しても意味がなさそう…34%(IBD:43%)
8割以上の方がこの「ワークシックバランス」の重要性に共感してくれている一方で、実際に自身の会社が「ワークシックバランス」の実現を推進していると考える人は約半数にとどまりました。
また、IBD患者さんの同僚にはサポートしたいけれど、具体的どうすればいいのかわからないという人もいます。調査では、「自分の周囲で、誰がどんな持病を抱えているのかわからない」「持病を抱えている人に対して、病気のことを聞いてよいのかわからない」「持病を抱えている人に対して、どうサポートすればいいかわからない」と、一般ワーカーの約7割にとまどいの意識が見えました。
健康管理への配慮を職場で醸成できないために働き続けられなくなったり、病気に対する誤解のために就職に困難をきたしたりする方を減らすためには、患者さんによる職場への適切なコミュニケーションと職場の理解・配慮が大切です。「IBDとはたらくプロジェクト」では職場内でスムーズに仕事をしていくために、両者で共有すべき病気の知識と、有効な配慮事項のヒントをまとめたサポートブックを提供しています。
ヤンセンではこのワークシックバランスの考え方をもっと知っていただくために、「チームワークシックバランス」を立ち上げました。IBD患者さんやIBD専門医をはじめとするチームメンバーの皆さんと一緒に、仕事と病の両立について考えるきっかけを作っています。
<AERAdot.のインタビューはこちら>
Vol.1: 「自分らしい働き方を目指して、仕事と病の両立が当たり前になる社会へ」
Vol.2: 「病を抱えていることも自分らしさ 症状とうまく付き合いながら自分らしく働く」
Vol.3:「病を抱える人が、働き方で自己表現できる社会を目指す」
(*1)平成28年度の報告より。厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 難治性炎症性腸管障害に関する調査研究 総括研究報告書(平成28年度)(2020年4月20日閲覧)
(*2)難病情報センターホームページ:潰瘍性大腸炎(指定難病97)(2020年4月20日閲覧)
(*3)難病情報センターホームページ:クローン病(指定難病96)(2020年4月20日閲覧)
(*4)調査概要
調査方法 :インターネット調査
調査会社 :楽天インサイト
調査対象者 :性別 男女
エリア 全国
年代 29歳~69歳の就労中男女
調査期間 :2020年10月19日~10月23日
(*5)厚生労働省:難病の雇用管理のための調査・研究会: 難病のある人の雇用管理・就業支援ガイドライン(2007年3月) (2020年4月20日閲覧)
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター: 難病のある人の雇用管理マニュアル(2018年3月)(2020年4月20日閲覧)
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