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INNOVATION

佐々木俊尚さんが聞く
イノベーションアイデアコンテスト「QFC」の意義

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日本の平均寿命と健康寿命の差は「10年」*1。健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる「健康寿命」が、実際は平均寿命より10年も短いことが社会課題となっています。そこでジョンソン・エンド・ジョンソンは「失われた10年」を最小限に抑えることを目指すプログラム「スマート・ヘルシー・エイジング・イニシアティブ(SHAI)」に取り組んでいます。 そしてこのたび「スマート・ヘルシー・エイジング」社会の一助となるために、ヘルスケアイノベーションを募るアイデアコンテスト「Japan Smart Healthy Aging QuickFire Challenge(クイックファイアー・チャレンジ、以下QFC)」を立ち上げました。

今回QFCのアンバサダーを務めていただくジャーナリストの佐々木俊尚さんが、QFCに携わるメンバー2人にお話を聞き、社会全体の視点からQFCを実施する意義や価値、QFCを通じたジョンソン・エンド・ジョンソンの目標などについて掘り下げました。

*1厚生労働省「健康寿命の令和元年値について」

参加者

佐々木 俊尚

ジャーナリスト。毎日新聞社の記者や株式会社アスキーの編集者を経て、現在はフリーランスのジャーナリスト・作家として活動している。報道番組などに多数出演。今回のQFCではアンバサダーおよび受賞者選定のジャッジを務める。

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ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニー
ルース・ニコラス
SHAIのコ・リーダーを務めており、日本でのQFCに立ち上げから携わる。

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ヤンセンファーマ
楠 淳
QFCを共催するジョンソン・エンド・ジョンソン・イノベーションのメンバー。

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世界全体のコミュニティに貢献したい

佐々木:まず「SHAI」とはどういうものか、概要を教えてください。

ニコラス:SHAIは、高齢者がより健康で幸せな人生が送れるように、ジョンソン・エンド・ジョンソンとしてできることはないか、と考えたことがきっかけで2020年に始まったプログラムです。私たちは国内の高齢者のアンメットニーズを探る中で、特に健康寿命と平均寿命の間の「10年の差」に着目しました。そのために、社会のさまざまな組織と協力して、アイデアやソリューションを実際にテストして、イノベーションを起こすことを目指します。高齢化は日本だけの問題ではないですから、今回はQFCを通じて「日本発」のソリューションをつくり、さらに他の国の市場へも拡大できるようなスケーラビリティのあるソリューションにすることが目標です。

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佐々木:70歳から80歳までの10年のギャップをどう埋めるか、という問題は国家的な問題にもなってきますね。日本は寿命が長い国ですが、このように70歳ごろから疾患を抱え、80歳ごろに寿命を迎えるという状況は、他の国でも同じなのでしょうか。

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:トレンドとしては世界で同じだと思います。人種などの差はありますが、肺がんなどの疾患にフォーカスしてみると、世界でも同様の問題に苦しんでいる人は多くいます*2。ですから、日本で進めているSHAIの取り組みを世界規模で実装すること、スケールアップすることは非常に意義のあることだと思います。

*2 https://gco.iarc.fr/today/data/factsheets/cancers/15-Lung-fact-sheet.pdf. GLOBOCAN 2020 2SEER 18 2010–2016; SEER Cancer Stat Facts

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佐々木:10年のギャップには医療の問題だけでなく、経済的な困窮、社会的な問題、家族や子どもとの関係における心理的問題など、さまざまな事情が絡み合っています。10年のギャップを医療の問題として捉えるか、社会全体の問題として捉えるのか。ジョンソン・エンド・ジョンソンとしてはどの部分にクローズアップするのでしょうか。

ニコラス:確かに、医療費や経済格差など非常に多様な問題が複雑に絡んでいます。QFCで募るアイデアは、あらゆる問題を包含えきるような可能性を含んだソリューションでないといけないと思います。

:健康寿命を伸ばすことができれば、周りの社会にもインパクトを与えることができると考えています。例えば健康寿命が伸びることで、患者を介護する方や家族、将来の社会にとって、医療費などさまざまな経費を削減できる可能性もあると思います*3。将来を見通して、私たちは私たちにできることをして、日本全体だけでなく、世界全体のコミュニティに貢献していきたいと思っています。

*3 平成26年版厚生労働白書


将来の高齢者のためにできること

佐々木:日本では近年、寿命や健康に関する翻訳書が多数出版されていて、ベストセラーになっています。30〜40代が読んでいるようですが、おそらく将来への不安があるからなのですね。若い世代の中には、自分が高齢者になった時に日本社会がどうなるのかイメージできていない人もいます。70歳、80歳まで働かなければいけないでしょうし、その時まで自分が健康でいられるだろうかと不安に思います。もちろん現在の高齢者をケアすることも大事ですが、将来の高齢者をケアすることにも視野を広げなければいけないと思います。ジョンソン・エンド・ジョンソンには、そういう広い視点で取り組みをしてほしいです。

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:おっしゃる通りです。将来高齢者となる若い世代は、現在の最先端の医療が将来はで受けられる可能性もあります。新しい技術を社会実装するためには、最初は投資が必要ですが、例えば高価な薬は次第にジェネリック医薬品に置き換わり、最先端の技術が標準化されていき、値段が下がるというフェーズになることもあります*4。技術開発は日本国内だけで考えるとコストは高いですが、ジョンソン・エンド・ジョンソンはグローバル企業ですから、世界の広い視点でより良い技術を取捨選択して、グローバルな規模で実装していくことができます。

*4 1NEW患者が安心してジェネリック医薬品を使用するために.indd (tokyo.lg.jp)

ニコラスアイフレイル*5については40歳前後から機能が低下すると言われています。*6 疾患の早期発見のために、目の疾患を予測できるツールをつくることや啓発のキャンペーンなど、将来高齢者となる人たちに向けて何かできることはないかと模索しています。

*5 ※加齢に伴って眼が衰えてきたうえに、様々な外的ストレスが加わることによって目の機能が低下した状態、また、そのリスクが高い状態(日本眼科啓発会議 アイフレイル啓発公式サイト より)

*6 https://www.eye-frail.jp/

佐々木:次に、テクノロジーとSHAIの関係についてお伺いします。日本の地方では過疎化が進んでいます。人口が少ない地域でも、無人運転の車があれば高齢者の行動範囲が広がって、健康維持が進むと見込まれています。例えば私はスマートウォッチを何年も使っていて、足を滑らせた時に緊急通報するような仕組みになっています。このような端末が血中酸素濃度とか心拍数とかのデータを常に収集して、クラウドに集めてAIが解析すると、この人は次にこの疾患が起きる可能性が高い、とAIによる傾向抽出ができて疾患を予防できる。こういう事例がIT企業から出てきています。こういった情報通信の進化に対して、ジョンソン・エンド・ジョンソンとしてどう向き合うのかを教えてほしいです。

:デジタルヘルスの重要性は、会社全体で認識して投資をしています。データをどのように活用するのかなど、社内のそれぞれのセクターが意識を持ちデジタルヘルスに大きく投資をしています。QFCの研究公募事業はグローバルにアイデアを募っており、デジタルヘルスを含めて何が私たちにとって一番良いのか、を取捨選択しながら進めているのが現状です。

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スタートアップの技術力を社会に届ける

佐々木:ヘルスケア産業は、現在は医療だけでなく、デジタルテクノロジーなど多様な分野の産業が融合していくと思います。私は将来、さまざまな産業のチームが協力する「ドリームチーム」のようなイメージを持っていますね。QFCを実際に始めてみて、日本国内のテック関連のスタートアップからの反応や、感想はいかがですか。

ニコラス:これまでに100以上のエントリーが進行中で、日本をはじめとした世界各国のイノベーターからエントリーいただいています。*7以前の他国のQFCに比べても、エントリー率が高く、皆さんの関心が高いと感じます。

*7 取材当時。締め切りは2022年12月2日(金)

:QFCは初めてですが、その他にも研究公募事業は過去に2回やっています。2020年には武田薬品さんと協業で研究公募事業をしました。その時の公募のテーマは老化、ヘルシーベイビー、近視、肺がんの4つでした。弊社に51件の申し込みがあり、一番多かったのは高齢化関係でした。高齢化に対する市場の関心の高さを感じましたし、多様な提案があって面白かったです。今回も既に40以上のエントリーが集まっており*8、反響の大きさに私自身も驚いています。

*8 取材当時。締め切りは2022年12月2日(金)

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佐々木:日本では、2000年ごろからスタートアップの文化が広まり、2010年ごろから状況が変わり、一気にさまざまな分野のスタートアップ企業が出てきました。優秀な日系の技術者がスタートアップに流れて人材が豊富になり、現在はスタートアップの「花盛り」のような状況です。そこで今後はスタートアップの「入口」をつくることが大事で、QFCがその入口を用意できればもっと人が集まるはずですから、大変期待できる活動だと感じます。集まったアイデアや技術をどうイノベーションに結びつけるか、どう実装するかが今後の課題ですね。どう社会に根付かせるか、というビジョンはいかがですか。

ニコラス:現在のスタートアップなどでは、クリエイティブなアイデアが出たり、革新的な技術が開発されたりしても、それらを「商用化」する部分にまだ課題を抱えていると思います。ジョンソン・エンド・ジョンソンにはその部分でこそスタートアップを支援できる力があると思います。スタートアップはテクノロジーの能力は非常に高いですが、彼らの能力を社会に生かし、届かせるために、私たちがQFCを通じてその技術を商用化することや、他と差別化する価値提案の手助けをしたいです。今回のQFCでは、できれば2、3年以内に商用化できるようなアイデアを期待しています。QFCの応募サイトは英語ですが、応募は日英両方の言語で記入いただけますので、たくさんの方に応募していただきたいです。

佐々木:ジョンソン・エンド・ジョンソンのような外資系の大企業が先頭を走って、スタートアップを支援してくれることは、日本社会にとって大きなインパクトだと思います。ジョンソン・エンド・ジョンソンの持つ力が日本社会に生きて、活用されていくのはありがたいことです。これからのQFCの取り組みに期待しています。

QFCについてはこちらから:https://www.jnj.co.jp/story-innovation/quickfire-challenge-2022/

応募はこちらから: https://jlabs.secure-platform.com/a/solicitations/67/home

私たちが目指す「スマート・ヘルシー・エイジング」社会の実現の一助として、ヘルスケアイノベーション・アイデアコンテスト「クイックファイアー・チャレンジ」の参加を募集しています。日本語・英語両方で応募いただけます。(英語推奨)

 

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