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INNOVATION

「世界に挑むヘルスケアイノベーションのための強力な支援」若手起業家がクイックファイアーチャレンジ(QFC)

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超高齢社会を迎えた日本。健康上の問題で、日常生活が制限されない「健康寿命」は、平均寿命より約10年も短くなっています。この健康寿命延伸という、社会課題の解決に挑む起業家たちを支援しようと、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループは、クイックファイアーチャレンジ(QFC)と呼ばれるヘルスケアイノベーションピッチコンテストを開催しています。
製品・サービス研究を加速させるために、受賞チームには、ジョンソン・エンド・ジョンソンの限定プログラムへのバーチャル上でのアクセスや、エキスパートによるメンター制度などが提供されます。シンガポール開催のQFCでファイナリストとなったジェリクル株式会社と、日本開催のQFCで受賞したKinexcs社に、QFCで得た知見とビジネスチャンスについて聞きました。

JLABSとは?

JLABSは、イノベーションのためのグローバルなライフサイエンス・ネットワークです。具体的には、ジョンソン・エンド・ジョンソンの海外のインキュベーションラボの専用デスクや、エキスパートによるメンター制度、専門知識、コミュニティ、業界とのつながり、起業家向けプログラムなどのリソースへのアクセスをスタートアップに提供しています。

事業の海外展開加速へ、知名度あるQFCにエントリー

  

ジェリクル株式会社 代表取締役CEO 増井公祐氏
ジェリクル株式会社 代表取締役CEO 増井公祐氏

――バイオベンチャー企業として2018年に創業、テトラゲルを用いた医療製品の開発が事業領域です。ヘルスケア領域でどのような社会課題を解決したいですか。

「ゲルは私たちの生活に身近で、多くがゲルでできています。それにもかかわらず、医療領域で広く利用されているゲルはコンタクトレンズぐらいです。私たちはゲルの物理法則を解明し、止血材、癒着防止材、神経再生材といったさまざまな医療製品の開発を進めています」

  
――QFCにチャレンジした狙いを教えてください。

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「医療ビジネスの上ではグローバル展開は必須だと考え、チーム体制と収益モデルを整えてきました。ですが、スタートアップ単独で世界の市場に飛び込むには限界があります。このため海外大学などのさまざまなアクセラレーションプログラムに挑戦してきました。ジョンソン・エンド・ジョンソンが世界各国で行うQFCは、非常に知名度が高く、入賞すれば海外でのプレゼンスが上がるだけではなく、ジョンソン・エンド・ジョンソンが運営するインキュベーションプログラムである『JLABS』利用や、助成金を獲得できます。以前から挑戦したいと考えていました」


JLABSのメンタリング経て、海外展示会へ 新しい機会に発展

  

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――QFCは健康寿命の延伸に貢献するヘルスケアイノベーションの事業創出支援が狙いですが、どのようなテーマでエントリーしましたか。

「QFCの狙いを踏まえ、焦点を絞って『腱の再生』というテーマでエントリーしました。ファイナリストになりピッチのチャンスを得ました。優勝は逃しましたが、担当者から『テクノロジーはおもしろいから、JLABSのレジデンスを考えてみませんか』と連絡をいただきました」

  
――2024年7月から韓国のJLABSを利用しています。ビジネスにどんな成果が出ていますか。

「バーチャルレジデンスとして、オンラインでメンタリングを受けたり、メールで相談をさせていただいたりしています。大きかったのが、私たちがやりたいビジネスモデルをヒアリングし、新しい機会に結び付きそうな展示会を紹介してくれたこと。シンガポールの医療機器の展示会にJLABSのブースで出展し、新しい機会に結び付きました。

今後は、JLABSを利用する他のベンチャーのCEOとのコミュニケーションや、サミットなどを活用しながらグローバルに近づきたいです。韓国やシンガポールのJLABSに直接訪問もしたいです」


市場とメンタリティ、2つの側面から世界に挑戦を

  

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――QFCにエントリーを考えているスタートアップにメッセージをお願いします。

「医療系のスタートアップはもっと世界を目指すべきです。市場的側面とメンタル的側面の2つがあります。まず市場から見ると、日本市場は世界の中では限定的で、高齢化を考えるとグローバル展開が非常に重要です。もう一つ、メンタル的側面でいうと、日本のベンチャーは開発のシーズは素晴らしく、患者さんを救いたいというマインドも持っています。でも日本市場にローカライズしていると、救える対象が限定的になってしまう。世界の人を救うというビジョンを持ち、QFCというチャンスに積極的に挑戦してほしいと思っています。

もう一つ、言語の壁は大きいと思います。実は私も英語は得意ではありませんが、気後れはしません。私が『気合い担当』で、英語でビジネス交渉ができる人材もいて、チーム一丸でグローバルを目指しています。

アメリカのスタートアップと比べても、アメリカと日本、シーズはほぼ一緒です。でも、何が違うかというとビジネス環境が大きく違います。数字の規模が10倍、100倍違うから差が出てきます。持っている最初の力は同じなのだから、グローバルに出ていくのがいい。そう思っています」

「スマート・ヘルシー・エイジング・イニシアチブ(SHAI)」について

ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループでは、日本における健康寿命の延伸を目指したイノベーションをグローバルレベルで推進するため「スマート・ヘルシー・エイジング・イニシアチブ(SHAI)」を立ち上げました。SHAIは、日本のジョンソン・エンド・ジョンソンのリーダーシップチームが主導し、MedTech(メドテック)とInnovative Medicineの2つのセクターをまたぐ横断的な取り組みです。病院・学術機関・政府・企業・ヘルスケア業界のパートナーと協力することで、高齢者の生活の質を改善し、サービスを拡大することによって、健康的に年を重ねるための総合的なアプローチを提供することを目指しています。またSHAIは、データに基づく総合的なスマートヘルシーエイジングのソリューションのテスト・実証、および構築に貢献します。

  

JLABS活用で、起業家やステークホルダーと接点

  

Kinexcs Private Limited
Co-founder, CEO
Abhishek Agrawal氏
Kinexcs Private Limited
Co-founder, CEO
Abhishek Agrawal氏

――AI主導の健康プラットフォームとウェアラブルを開発しています。どんな社会課題を解決したいですか。

「私の母はこの4年間、変形性膝関節症という慢性疾患と向き合っており、そのことが日々のウェルビーイングに影響を与えています。また、変形性膝関節症は世界中で3億人以上の人が罹患*しており、母と同じような制約に苦しんでいることも知りました。さらに、この病気は主に閉経後の女性が罹患しているといわれています。

私たちの製品は、人工膝関節置換術を受けた患者さんの回復をサポートし、生活の質を向上させています。世界9カ国以上で使用されており、北米やアジアの大規模な医療機関でも試験が行われています。また、医療従事者が遠隔で予後をモニタリングし、治療が必要な場合には早期に介入できるという利点もあります。
Kinexcsでは、変形性関節症患者のために2つの主要な目標を達成するというビジョンを掲げています:

  1. 人工膝関節置換術を受ける患者さんが、術後の合併症や通院回数を減らし、運動機能を改善し、生活の質を高めて回復できるようにする
  2. 私の母のような慢性の変形性関節症の患者さんに対して、日々の痛みを軽減し、機能を改善し、手術を数年遅らせることを可能にする

Kinexcsはウェアラブルと人工知能技術の特長を活かし、相互作用的な使い方にすることで、患者さんの自宅での回復管理を支援しています」
  
――ジョンソン・エンド・ジョンソンの日本初開催となったQFCを受賞し、JLABSを利用する権利が付与されました。どう活用し、成果は出ましたか。

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「ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループのQFCでの受賞は、Kinexcsにとって大きなマイルストーンとなりました。この成果により、JLABSシンガポールへのアクセスや、ジョンソン・エンド・ジョンソンの専門家のメンター制度を受けることができました。

これらのリソースを活かし、当社の製品であるKIMIA Recoverを改良し、パーソナライズされた在宅リハビリテーションの機能を強化することができました。また、メンター制度により、ヘルスケア市場の貴重なインサイトが得られ、シンガポールの主要な公立病院や整形外科クリニックでの導入に成功しました。

具体的には、ジョンソン・エンド・ジョンソンのエグゼクティブと協力し、インプラント分野での取り組みを進めています。また、フィードバックをもとに、製品の改良に取り組んでいます。

世界的なヘルスケア企業であるジョンソン・エンド・ジョンソンが運営するJLABSへの参加がなければ、医療のエグゼクティブなどのステークホルダーとつながることはできなかったと思います。今回の受賞とJLABSの活用は私たちにとって大きな意味がありました」

  
――次の事業展望を聞かせてください。

「私たちの次のビジネス展望は、筋骨格系ケアソリューションへのニーズが高い日本市場への進出です。日本の人口は約1億2,400万人ですが、私たちのリサーチでは、変形性膝関節症を抱えている患者さんの割合は、人口約3億3600万人の米国と同程度です。毎年10万人以上の高齢者が人工膝関節全置換術を受けており、この数は高齢化とともに急速に増加しています。

残念なことに、これらの何名かの患者、痛みや完全な動作の回復困難などの術後の合併症を経験し、その結果として、何度も病院を訪れ、医療費が増大し、生活の質が低下することが多いといわれています。このような課題を対処するため、私たちは整形外科医と協力し、この分野の重要なステークホルダーである日本の患者さんと関わっていく予定です。このような働きかけは、患者さんのニーズをより理解し、一人ひとりにあわせた効果的なリハビリテーション・サポートを提供するための当社のソリューションの改善に役立つでしょう。日本でのプレゼンスを拡大することは、患者さんの予後を改善し、世界的な医療制度の負担を軽減するという、当社の使命にもつながります」

  
――日本開催のQFCにエントリーを検討する人たちに、ぜひメッセージをお願いします。

「今後、QFCに参加される方々には、高齢化社会の課題解決としてどんな価値を提供できるのかを明確にすることを提案したいと思います。選出にはまだ時間がありますので、じっくり考えてみてください。私たちは、QFC参加経験者にヒアリングし、お客さまへの価値提供が重要とアドバイスをもらったことが大きかったです。ぜひチャレンジしてください。

QFCは、自分のアイデアを実現し、医療に真のインパクトを与えるための素晴らしい機会です。QFCで受賞すれば、JLABSを通じて世界クラスのリソースや指導を受けることができるだけでなく、医療ソリューションの発展に尽力する専門家のグローバルネットワークとつながることができます。

私たちにとって、QFCへの参加は変革的な経験でした。QFCに参加したことで、製品を改良し、ビジョンを広げ、新しい市場に備えることができました。もしあなたが、医療課題の解決に情熱を燃やし、限界を押し広げる準備ができているのなら、このチャンスに挑戦することをお勧めします。挑戦的であると同時にやりがいのあるものですが、有意義な変化を生み出す可能性があるため、本当に価値のあるものになると思います」

人生100年時代の健康寿命延伸に貢献するヘルスケアイノベーションのインキュベーションを目指したビジネスコンテスト「クイックファイアーチャレンジ(QFC)」についての詳細はこちら

* https://www.jstage.jst.go.jp/article/hppt/13/3/13_117/_pdf

 

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