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ストーリー
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笑顔のそばに

TOMODACHI J&J災害看護研修プログラム
コロナ禍で必要とされる看護現場のリーダーシップ

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新型コロナウイルスという歴史的なパンデミックに日々立ち向かう医療従事者。自然災害が多発する日本の医療現場では、災害が起きればコロナ対策と併せて難しい対応を迫られます。

TOMODACHI J&J災害看護研修プログラムの卒業生で、看護師としてコロナ対応に当たる石巻赤十字病院の佐藤未佳さんと同プログラムのコンサルタントである岩手医科大学看護学部の小松恵特任准教授に、コロナ禍で求められる災害看護について聞きました。

石巻赤十字病院 看護師 佐藤未佳さん

きっかけは東日本大震災の被災体験

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石巻赤十字病院で勤務する佐藤未佳さん

写真提供:佐藤未佳さん

現在、宮城県石巻市の石巻赤十字病院でICU・CCUと呼ばれる集中治療や心疾患治療にあたる部署に勤務する佐藤さんは、看護師になって4年目です。現在は、新型コロナウイルスに感染した患者さんの対応にもあたっています。

「対処療法しか出来ない状態の中で助からない方もいらっしゃいます。面会ができないため、最期の時にも直接触れたり話しかけたりできないなど、感染症だからこそのジレンマを経験するご家族をたくさん見てきました」

佐藤さんが看護師を目指したきっかけは、中学3年生の時に経験した東日本大震災です。当時、宮城県の内陸部に住んでいた佐藤さんには、大きな被害はありませんでした。しかし、テレビで見た医療従事者の姿に心を動かされたといいます。

「頑張っている医療従事者の姿を目の当たりにしたのが、医療の現場で働きたいと思ったきっかけです。様々なライフステージにある患者さんに関わり、身近で支える看護師という職業は素敵だなと思いました」


知識がない中で判断することの戸惑い

看護学部に進学した佐藤さんが参加したのが、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループがスポンサーするTOMODACHI J&J 災害看護研修プログラムです。これは米日カウンシル-ジャパンと在日米国大使館主導の官民パートナーシップ「TOMODACHIイニシアチブ」の取り組みのひとつで、看護学生の災害看護を含めた能力育成とリーダーシップの強化を図ることを目的に2015年からスタートしました。参加者は日米で様々な研修や学習に取り組みます。

「東日本大震災の被災者や、米国の同時多発テロの被害者、ハリケーンの被災者のお話を伺いました。辛かった気持ちを私に話してくれるようになるまで心の葛藤があった方も多かったので、とても印象に残っています。

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トリアージの研修を受ける佐藤さん

米国研修では、トリアージ*1のシミュレーション研修も行われましたが、この経験が佐藤さんの意識に大きく影響したといいます。トリアージ*1とは限られた人的・物的資源の中で、最大多数の傷病者に最善の医療を提供するために、治療優先順位を決定することです。

「チームを組んでシミュレーションを行ったのですが、危篤状態の患者という設定もある中で、判断するだけの知識もなく戸惑いました。また、負傷した患者役の人を見ると「怖い」という気持ちが出てしまって、体が動かなくなることもありました。もっと勉強してプロフェッショナルとしての自信を持ち、難しい状況でも自分で判断ができるようになりたいと思いました」


自分の役割を果たしていくこともリーダーシップの形

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プログラムを通して佐藤さんは、自分の考えや学びを自ら発信し共有することやリーダーシップの重要性を学んだといいます。その学びは、コロナ禍でも生かされているといいます。

「災害やコロナの現場は通常の医療の現場よりも混乱しています。誰かが指揮をとらないと、救える命も救えなくなってしまう場合もある。だから指揮命令系統を確立することは大切です。たとえ自分が指揮命令をする立場でなくとも、自分に求められている役割を考え、主体的に行動することや、必要な情報を自らチームへ発信することなどを通じてリーダーシップは発揮できると思います」

今後DMAT*2と呼ばれる災害派遣医療チームでも経験を積みたいという佐藤さんですが、災害に限らず患者さん一人ひとりに向き合うために「聴く力」を大切にしていきたいと話します。

「災害の時も含めて、生きることを支えるというのが私たちの仕事です。普段から患者さんとその家族が『どのように生きていきたいか』ということに耳を傾け、それを大切にしたいと思っています」


岩手医科大学 看護学部 小松恵特任准教授

自分の意見を持った看護のリーダーを目指して

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TOMODACHI J&J 災害看護研修プログラムでメンターを務め、現在はコンサルタントとしてプログラム卒業生の支援を行う小松特任准教授(以下小松特任准教授)は、これまで日米での大災害を経験してきました。

「米国の同時多発テロでは、外国人として被災現場の混乱を経験しました。東日本大震災では、看護師として、被災しながら家にも帰れずに仕事をしていました。メンタルを保つのが本当に大変。コロナ禍で、医療従事者の皆さんも同じような経験をされていると思います」

災害看護研修プログラムの米国研修では、自己主張する米国文化に戸惑っていた学生も多かったといいます。さらに、看護の現場でも多様性が求められる中、災害看護という難しい現場で人を束ねていくためには、自分の意見は持ちつつ、様々な人の意見を聞く姿勢が重要だといいます。

「人も物資もすべて限定される有事では、指示を待っているのではなく、主体的に自分が行動していくことが求められます。米国研修の最初の1週間は、周りの様子をうかがいながら自分の意見を言わない学生がほとんどでしたし、リーダーシップといってもピンとこなかったようです。しかし、最後にはそれぞれが自分のリーダーシップスタイルを見つけていました」

近年災害の発生頻度が増えている中で、小松准特任教授はコロナ禍の災害看護では、正確な情報を共有することが大切だといいます。

「持病がある人は、具体的に薬や症状を伝えられるようにするなど、できることはたくさんあると思います。また、医療従事者側も、感染症に関する情報が錯綜する中でも、その時点での正確な情報を伝達し、感染症に対する偏見につながらないようにしていくことが重要です」

※掲載内容は取材当時のものです。

*1災害看護関連用語(案) トリアージ(災害)日本災害看護学会のホームページより

*2平成13年度厚生科学特別研究「日本における災害時派遣医療チーム(DMAT)の標準化に関する研究」報告書で「災害急性期に活動できる機動性を持ったトレーニングを受けた医療チーム」と定義されており災害派遣医療チーム Disaster Medical Assistance Team の頭文字をとって略して「DMAT(ディーマット)」と呼ばれています。厚生労働省DMAT事務局のページより