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白内障の見え方シミュレーションアプリAR Eyeインタビュー01 alt
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INNOVATION

白内障の患者さんに見え方の「体験」を届けたい シミュレーションアプリ「AR Eye」開発者に聞く

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白内障は加齢に伴い、かかりやすくなる目の病気です。白内障手術は日本では年間約180万件とされており、外科手術の中で最も多く行われている手術※1です。
ただ、白内障の手術を受ける患者さんや家族にとって、手術後の視界の変化をイメージすることは簡単ではありません。
この課題を解決するために、ジョンソン・エンド・ジョンソンの眼科医療機器事業を担当する サージカル ビジョンは、白内障手術の前と後の見え方をシミュレーションできる無料アプリ「AR Eye(エイアール・アイ)」を開発、提供を始めました。
アプリを開発した王 雪媛さんと浅岡 諒さんにアプリの特長について聞きました。(文中敬称略)
王雪媛
王雪媛
ジョンソン・エンド・ジョンソン メドテック サージカル ビジョン
デジタルオペレーションマネージャー コマーシャル オペレーション & ストラテジー
浅岡 諒
浅岡 諒
ジョンソン・エンド・ジョンソン メドテック サージカル ビジョン
マーケティング本部 プロダクトマネジャー

白内障の症状・手術後の見え方を体験できる

医師監修の無料アプリ 「AR Eye」とは?

  

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「AR Eye」は、拡張現実(AR)の技術を用い、白内障の術前・術後の見え方を擬似体験できます。スマートフォンのカメラを通して現実の風景をもとにバーチャルな映像を再現。白内障の方だけでなく、ご家族が白内障の不自由さを体験し理解を深めることにも役立ちます。

「白内障の手術後の見え方を患者さんに体験していただきたい」

  

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手術前に見え方を体験できれば患者さんもご家族も安心して手術に臨める、というアイデアが社内コンテストで最優秀賞に選ばれ、開発がスタート

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白内障は、目の水晶体が濁ることによって、光が通りづらく見えにくくなる病気です。加齢に伴い増加するため高齢者に多く、視界がぼやけたり、かすんで見えたりといった症状があります。
白内障手術は濁った水晶体を取り除き、水晶体の代わりとして眼内レンズを挿入します。眼内レンズの中でも単焦点レンズと多焦点レンズがあり、それぞれにメリット、デメリットがあります。

――「AR Eye」開発のきっかけを教えてください。
「白内障の患者さん向けウェブサイトを制作したことです。手術前と後での見え方は、これまでにも写真で載せていましたが、『写真だけでは、患者さんが実際の生活でどう見えるかをイメージしにくいのでは』と思いました。眼内レンズを入れた後の見え方は手術を受けないと分からず、さらに本人しか分からないという特殊性があります。手術前に見え方を体験できたほうが、患者さんもご家族も安心して手術に臨めると思いました。このアイデアが社内のコンテストで最優秀賞に選ばれ、開発がスタートしました」

――浅岡さんと王さんは白内障手術で使う眼内レンズのマーケティングをしています。眼内レンズの特徴を教えてください。

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浅岡白内障手術で使う眼内レンズは、大きく分けて、単焦点レンズと多焦点レンズの2つです。単焦点レンズは保険が適用されますが、遠方や近方など1カ所にしかピントを合わせることができないので、一般的には眼鏡の併用が必要です。

多焦点レンズは、近距離から遠方まで複数の距離にピントを合わせることができます。ただ、レンズ構造が複雑で、コントラストが低下する場合があります。保険の適用外ですが、メガネをかけたくないという患者さんを中心に選択の幅が広がっています。
現在、白内障手術で使用されているほとんどが単焦点レンズです。多焦点レンズを扱っていない病院も多く、患者さんがそもそも多焦点レンズを知らないこともあります。だからこそ患者さんがライフスタイルに合わせてレンズを選んでほしいという思いもありました」

リアルな白内障の「見え方」に試行錯誤

  

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――社内コンテストで最優秀賞をとり、開発までの道のりはどのようなものだったのでしょうか。

「ヒントになったのが写真加工アプリです。加工する前と後のように、視界の変化を再現できないかと考えました。社内外のテクノロジーの専門家に相談し、利便性の高いアプリで進めようということになり、2年かけて開発しました」

浅岡「見え方の再現性を追求するため、東京歯科大学水道橋病院の名誉教授・特任教授のビッセン宮島弘子先生に監修していただきました。多焦点レンズの白内障手術を多く手掛けている病院で、先生ご自身も多焦点レンズを入れていて見え方をご存知です。
一番難しかったのは『どれだけリアルに再現するか』ということです。見え方が良すぎてしまうと、実際とギャップが生じますし、悪すぎると手にとってもらえないので、バランスが難しかったですね。また、多焦点レンズは夜に街頭などの光を見ると眩しく感じる『グレア』や、光の周りに輪が見える『ハロー』といった現象を感じる場合もあり、この見え方も最後まで調整しました」

計6パターンの白内障の「見え方」体験 医師からも反響

  

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「AR Eye」を先生たちに診察で活用してもらうことで、患者さんが自分に合った眼内レンズを選べ、理解も広がると期待

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――「AR Eye」を実際に使ってみると操作が簡単で、白内障の患者さんの見え方や手術後の見え方がよくわかりますね。アプリの特長を教えてください。
王「アプリを起動して、スマートフォンのカメラで目の前の風景を映すと、バーチャルの視覚情報が加わります。見え方は計6パターンで、手術前の白内障の見え方、単焦点レンズの近方と遠方、多焦点レンズの暗い場所、明るい場所など計6パターンを体験できます。中程度の白内障の患者さんに設定しています」

――完成した「AR Eye」はどんな反響がありましたか。

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浅岡「学会の展示ブースでデモンストレーションすると、医師の方々が予想以上に関心を持ってくださり、あれほど多くの先生が足をとめてくださったのは初めてです。診察で「AR Eye」を活用していただくことで、患者さんが自分に合った眼内レンズを選べ、理解も広がると期待しています」

――今後、アプリ「AR Eye」をどう進化させますか。

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「今後は乱視矯正レンズやコンタクトレンズの見え方も実装したいです。より使いやすい設計も考えていきます」

人生100年時代と言われる今、年齢を重ねてもアクティブに生活する高齢者の方が増えています。白内障患者さんのライフスタイルやニーズが多様化する中で、「AR Eye」は一人ひとりに合ったレンズの選択や、白内障への理解を深める一助となりそうです。

  

※1 厚生労働省「第8回NBDオープンデータ」

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