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川崎市立多摩病院眼科部長/聖マリアンナ医科大学眼科講師
松澤亜紀子先生
視力が良くても近眼でも老眼になる
老眼とは正式には「老視」といいます。加齢により、目のピントを合わせる力が衰え、近くの細かい字が読みにくくなったり、暗くなると字が見えにくくなったりする状態のことです。
目のピントを調節しているのが水晶体です。水晶体は、カメラのレンズ機能と似ていて、厚くなったり、薄くなったりすることでピントを調節しています。しかし、加齢とともに水晶体は弾力を失って硬くなり、ピントの調節力が低下します。結果として近くのものが見えにくくなるのです。
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松澤先生は「ピントを調節する力は10代をピークに下がっていき、一般的に44歳から45歳ぐらいの間に見えにくさを自覚する方が多いです。老眼は病気ではなく、視力が良い人も近視の人も、誰もがなる可能性があります」と説明します。
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「日常生活の中で、ふとした時に見えにくさを感じて眼科を受診した」という人が多いといいます。松澤先生は「『最近、近くの文字やスマートフォンの画面に表示される文字が見えにくくなった』などと感じているのであれば、受診をお勧めします」と言います。
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老眼は病気ではなく、視力が良い人も近視の人も、誰もがなる可能性があります
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自己判断はNG。眼精疲労、頭痛や肩こりになるケースも
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これまで目が良かった人や近視の人を含め、誰もが老眼になる可能性があります。見えにくい状態をそのままにしておくとどうなるのでしょうか。
松澤先生は「見えにくい状態でものを見ようとすると、眼精疲労から肩こりや頭痛のほか、腰痛の症状が出るケースもあります」と話します。
また、老眼だけではなく、日本人の失明原因1位の緑内障や、白内障 、ドライアイといった疾患が隠れている可能性もあります。「会社の健康診断や人間ドッグの眼底・眼圧検査だけでは、疾患を見つけることが難しい場合があります。早期に対策をとることで快適にすごせる可能性があるので、眼科で検査を受け、診断を受けてください」
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選択肢広がる老眼対策:遠近両用メガネとコンタクトレンズ
では、老眼になった場合はどのような対処の方法があるのでしょうか。
代表的なものは遠近両用メガネとコンタクトレンズです。遠近両用メガネは一枚のレンズの中に、遠くと近くを見やすくする部分がそれぞれあります。
遠近両用のコンタクトレンズも「遠くを見る部分」と「近くを見る部分」がバランスよく配置され、1枚のレンズで見え方が調整できます。どのような仕組みなのでしょうか。遠近両用コンタクトレンズは、同心円状に遠くを見る度数、近くを見る度数が入っています。目に入る視覚情報を私たちの脳が「近くか遠くか」を選別し、視線を移動させなくても場面に合った見え方ができるという構造です。
遠近両用メガネ(左)と遠近両用コンタクトレンズ*(右)のイメージ
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見える仕組み・見え方の違い
・遠近両用メガネ(視標の距離によって、視線の移動が必要(交代視))
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・遠近両用コンタクトレンズ*(遠方から近方まで見える範囲が拡大。視線の移動は不要(同時視))
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*ソフトコンタクトレンズの場合
松澤先生によると、いわゆる“団塊ジュニア世代”は、若い時からコンタクトを使い慣れた世代のため、今後もコンタクトレンズを使い続けたいという方も多くいらっしゃるといいます。「今はコンタクトの種類も豊富で、平日の仕事用と、週末のスポーツ・レジャー用などシチュエーションで使い分ける方もいます」
遠近両用メガネ、コンタクトレンズともに仕事内容やライフスタイルによって選ぶ種類は変わってきます。自分がどんな使い方をしたいのか、眼科医にしっかりと伝えましょう。
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老眼対策は、自分の仕事内容やライフスタイルによって選択する。
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「目のかかりつけ医」を持とう 違和感があれば眼科受診を
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松澤先生に、簡単にできる見え方チェックを聞きました。「自分の手やスマートフォンを近付けて、ピントが合うまでの時間が遅くなっていないか確認してみてください。左右どちらかの目が悪くなっていないか片目を隠して、ものが見えにくくなっていないかチェックすることも大事です」
自分の目の健康を守れるのは、自分自身です。忙しさから「まだ大丈夫」と後回しにせずに、眼科を受診しましょう。「目のかかりつけ医」を持つことで、緑内障、白内障、ドライアイなどの病気を見つけやすくするメリットもあります。
医療技術の進歩で、年齢を重ねてもスポーツや社会貢献などに意欲的に取り組む「アクティブシニア」と呼ばれる人は増えています。人生後半も『視界良好』ですごすために、目の健康を守りましょう。
【出典】
1) 日本眼科学会オフィシャルサイト https://www.nichigan.or.jp/intern/summary/feature/importance.html
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