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白内障治療後に生活の質が改善した方のイメージ alt
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WELL-BEING

意外と知らない白内障という病気~高齢者に多い白内障は早期受診が大切~

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白内障は加齢に伴い増加する、高齢者に多い疾患で、白内障手術は日本では年間約180万件とされており、外科手術の中で最も多く行われている手術※1です。50代で約40%、60代で約70%、70代で約90%、80代では100%に近い方が発症する※2とされています。一方で視界がぼやけたり、かすんで見えたりする白内障の症状を「年だからしょうがない」とあきらめ、受診が遅れるケースもあります。また、白内障は20代など若い年代でかかるケースもあるといわれています。生活の質の改善につなげるためにも早期に眼科を受診することが大切です。自分や家族、大切な人の目の健康について考えてみませんか。


白内障とは?~80代以上ではほぼ100%の人が加齢性の白内障に~

白内障とは、目の水晶体の濁りにより、光が通りづらくなり見えにくくなる病気です。水晶体をレンズに、網膜をスクリーンとして考えてみましょう。正常な眼では、水晶体(レンズ)を通った光が網膜(スクリーン)に焦点を結びます。しかし、水晶体が濁ってしまうと、光をうまく通すことができず、スクリーンの役割の網膜に見ているものをきれいに映すことができなくなります。これが白内障です。
 

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典型的な白内障の症状は以下が挙げられ、長い時間をかけて進行していきます。

  • 街灯や車のライトがまぶしく見えたり、ダブって見える
  • 物がかすんで見えたり、視力に変化が現れる

これらの症状は加齢にも関係していて、40代から徐々に白内障に罹患する人が増え始め、80代以上ではほぼ100%の人が加齢性の白内障に罹患しています。40代でも眼科に行き、目の状態を知ることが大切です。
  

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白内障、こんな症状はありませんか?

  • 光がまぶしい
  • 目がかすむ
  • ものが二重、三重に見える
  • メガネが合わなくなった
  • 視力が下がった
  • 一時的に老眼が治った気がする
  • 暗いところで見えにくい

以上の症状は、白内障でよく見られるものです。
症状に当てはまる場合、目の検査を受けることをお勧めします。


高齢者だけの疾患ではない 20代でかかるケースも

一方で、白内障は高齢者だけの疾患ではありません。白内障の手術を行ってきた、宮町眼科クリニック(東京)のスミス朱美医師は「高齢者の疾患というイメージがあるかもしれませんが、糖尿病などの基礎疾患がある場合、20代など若い年代でかかるケースもあります」と説明します。このほか紫外線や喫煙、強度近視、副腎皮質ステロイドや向精神薬といった薬物も白内障を引き起こす原因になると指摘されています。


白内障によるリスクを知ろう

白内障を治療せず放置すると、水晶体がどんどん濁って、しだいにものが見えなくなっていきます。ものがよく見えないと自力での生活が難しくなるだけでなく、日常生活の中で危険に遭遇しやすくなります。

例えば、白内障の人は交通事故に会うリスクが2.5倍高くなることが知られています※3。また、両眼ともに白内障がある人は、転倒のリスクが1.8倍高まるとの報告もあります※3

白内障を放置せず、定期的に眼科を受診して目の状態を把握しておくことが大切です。


白内障の予防や進行を抑えるためにできることとは?

白内障の予防には、「紫外線から目を守る」「生活習慣の改善」「目の外傷を避ける」などが挙げられます。下記のような白内障の予防につながる行動を日常生活の中で心がけ、目の健康を守ることが重要です。

紫外線から目を守る
紫外線の影響で白内障になる可能性があるといわれています。白内障のリスクを高める紫外線を、なるべく浴びないようにすることが大切です。つばの長い帽子や、顔の側面まで覆うタイプのサングラス、紫外線カット付きのコンタクトレンズなどを利用しましょう。また、紫外線対策は夏だけでなく、一年を通して必要であることを知っておきましょう。

生活習慣の改善
乱れた生活習慣や喫煙を続けていると、水晶体のタンパク質を変性させる物質(最終糖化産物や活性酸素など)が体内で作られやすくなると考えられています。バランスの良い食事と適度な運動を心がけるとともに、禁煙も検討してください。

目の外傷を避ける
目の打撲やケガがきっかけで白内障になってしまうこともあるため、スポーツや力仕事を行う際には、十分気をつけましょう。


暗い場所で見えにくい、光がまぶしく感じる… 眼科受診のサイン

  

どんなタイミングで眼科を受診したらよいのでしょうか。白内障は時間をかけて徐々に進行することが多く、自覚のないまま生活している人もいます。

スミス医師は、光にまぶしさを感じたり、メガネの度数が変わったり、暗いところで物が見えにくいといった症状があれば、眼科を受診することを勧めます。このような症状があっても「年をとってきたからしょうがない」と、眼科を受診しない人もいるため、注意が必要です。

スミス医師は「早い時期から定期的に眼科を受診することで、治療方法を調べたり、色々な専門家の意見を聞いたりして情報収集することができます。生活の質の改善のためには、定期的に眼科検診を受けることはとても大切です」と説明します。

白内障の検査方法には、以下が挙げられます。

・屈折検査:
網膜上にピントが合っているかどうか調べる検査です。近視、遠視、乱視といった屈折異常の有無や程度を確認します。
 
・視力検査:
屈折検査の結果をもとに視力矯正を行った状態で、視力を測定します。
 
・細隙灯顕微鏡検査:
水晶体がどの程度濁っているか調べるための検査です。同時に、白内障以外にも目の病気がないか確認します。
 
・眼圧検査:
眼球内の圧力(眼圧)を調べるための検査です。眼圧が正常値より高い場合、白内障以外の目の病気も考えられます。
 
・眼底検査:
目の奥側(眼底)にある視神経や網膜などの状態を観察する検査です。白内障以外の病気がないか調べます。


治療法は?選択肢広がる眼内レンズ

現在、白内障の治療法は点眼薬による治療か、手術の選択肢がありますが、日常生活に支障が出ている場合は白内障手術を受けることが一般的です。白内障手術は濁った水晶体を取り除き、水晶体の代わりとして眼内レンズを挿入します。

眼内レンズの中でも単焦点レンズと多焦点レンズがあり、それぞれにメリット、デメリットがあります。

単焦点レンズは保険診療が適用されますが、遠方や近方など1カ所にしかピントを合わせることができないため、一般的には眼鏡が必要です。一方、多焦点レンズは遠方も近距離も複数の距離にピントを合わせることができます。さまざまな種類が開発されていて、患者さんが希望する見え方に合わせて選択の幅が広がっています。また、多焦点レンズは、単焦点レンズに比べて高額ですが、2020年から厚生労働省が定める選定療養の対象になり、以前より費用が抑えられ、選択しやすくなりました。


見え方の改善だけではなく、社会的つながりの回復も期待

  

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人生100年時代、目の不調を「年のせい」で片づけずに、早い時期の眼科受診、そして適切な治療で生活の質を改善していくことが重要

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白内障を治療することは、視覚が改善するだけではありません。社会的なつながりの回復、情緒の落ち着き、運動能力低下の抑止となることが期待されます。

スミス医師は、過去に白内障の手術を受けた患者さんから贈られた、あるものを大切に持っています。その患者さんは、絵を描くことが大好きな90代の女性でした。でも、白内障の症状が進むにつれて描くことが難しくなっていました。手術を受け、再び絵を描くことができるようになったお礼にと、美しい花をペイントした手鏡をスミス医師にプレゼントしてくれたのです。

他の患者さんからも「景色がこれほど明るいとは思いませんでした」などと生活の質(QOL)が改善したという声が寄せられています。

白内障は、本人だけではなく、家族や周囲が白内障を正しく理解することで、早期受診につなげることができます。人生100年時代、目の不調を「年のせい」で片づけずに、適切な治療を受けて健康な生活を送りましょう。

  

※1 厚生労働省「第8回NBDオープンデータ」
※2 Minds 白内障診療ガイドラインの策定に関する研究(H13-21EBM-012)
※3 日本白内障学会

  

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